表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

新たな風

彼女に、この前の一緒の人は?と聞かれるが、予定が合わなくてね・・・と答える。

すると彼女は

「ふーん」

と言い、少しだけ経ってから

「じゃ、じゃあ。一緒に出かけない?」

と誘ってきた。


卯付自信、女性と関わるのは妹くらいなため少しばかり緊張する。

「どこいくの?デート?」

なんて、恥ずかしながら冗談を言った。

すると濃綺は満面の笑みで

「ふふっ。ひと狩り行こうぜ!」

と卯付の手を引っ張った。

髪の毛が長いため、少しばかり笑いが不気味だったのは言うまでもない。


ちょっとだけ鍛冶屋に寄り道しつつも、この前の平原へと向かう。

「濃綺さんは、何の武器を使うの?」

「濃綺でいいよ?忠実な家臣なのですから・・・!」

胸に右手を当てて、ちょっとふんぞり返る濃姫に、アハハ・・・と笑ったが、妹以外にに呼び捨てで名前を呼んだ経験などなく、少しばかり勇気が必要だった。

まあ、ゲームだし大丈夫だよね・・・。本人もいいって言ってるし。

と心の中で呟き、バレないように深呼吸をしてから、また話しかける。


「んで、濃綺は結局何の武器使ってるの?」

「とりあえず種子島かな、私近距離怖くて・・・」

「え、嘘・・・。てっきり日本刀で殺ってると思ってた・・・あっ」

「ちょっと、それどういうこと!?ねえ!か弱い女何ですよ!?」

そう言いながら卯付のほっぺたを引っ張る

「いてててて!ごめんて!」

「ふんっ」

「でも、種子島なんて凄いよ。まだ使ったことないけど、射的とか凄い苦手でさ」

「私も苦手だよ、でも近距離でやるよりは幾らかマシだと思ったから。それにこのゲーム以外とリアルでさー、しっかり銃の反動あるんだよね。一番最初、反動で顔にぶつけちゃったよー」

本当かどうかは分からないが、思い出すようにおでこを擦って言うため、思わずそれを想像して笑ってしまう。

「ぷっ・・・ふふ」

「あ、ちょっと笑ったなー!」

「やべ・・・逃げよ」

「待てーー!!!」

またほっぺを引っ張られると思い、走って平原の方へ逃げる。

すると濃姫も両腕を上げながら追いかけてきた。


そうこうしているうちに、平原に着くと2人とも膝に手を当て、息切れを整えていた。

こんな対等に話されたことも、冗談言い合った事も、馬鹿にされたことも今までなかった・・・と濃綺は心の中で呟く。

「ちょっと楽しいかも・・・」

「ん?」

「あ、ううん。なんでもない」

(やばい、声に出てたっ・・・!)

何もかもが新鮮で、ちょっとした事で胸が躍る。


「じゃあ行こっか」

「うん!」

卯付が濃綺に話しかける。

それに待ってましたと言わんばかりに、濃綺は頷いた。

とりあえず最初は個々で慣らそうという話になったので、2人は一旦別れる。


卯付は短剣を構え、向こうにいる少し遠めの野良兵へとダッシュで向かう。

それから3体倒して、ふと思った。

「俺足遅いから向いてないじゃん」

一人でそう呟くが、銃の発砲音でかき消された。


・・・よく良く考えたら、鈴森って陸上部にスカウトされるほど足速いんだからあいつが使えよ!次一緒にプレイした時意地でもトレードしてやる。山の如くこの意志は動かせないぞ・・・!

すると、肩慣らしが終わったのか、小走りでこちらへ向かってくる。

「卯付さんって、短刀・・・でもこれどう見ても短剣だよね。短剣の扱い上手いね、憧れるなあ」

正面に来ると、人懐っこい笑顔を向けて話しかけてきた。

「見た目じゃ短剣っぽいけど、時代的に短刀ってジャンルにしてるんじゃないかな・・・。それと短剣は俺、足遅いし反応速度も良くないから向いてないかもね・・・」

「そうかな・・・でも怖がらないで、あんなに懐に入っていくなんて凄いよ・・・うん!私も見習わないと・・・。」

「そ、そうかな・・・はは」

褒められて素直に嬉しく、照れ隠しに少し笑う。

よし、俺は短剣だけで生きていくぞ!!!

心の中でそう叫んだ。


「じゃあ、合わせてみようか」

俺がそう言うと、濃綺はちょっと緊張気味に

「うん・・・」

と震えながら返事をした。

「大丈夫だよ、気楽に行こう」

「後ろから撃ち抜きそうで・・・」

「そ、その時はその時だよ」

改めて言われると、流石に恐怖が湧いてくる。


刹那的に、何もかもが聴こえなくなったような気がした。

風が止み、足音も鎧の擦れる音も、動物の鳴き声も。

つい先程まで聞こえてた雑音が全て無くなる。

緊張なのか、集中なのかはわからない。ただ、2人の生唾を飲む音が重なった時、全てが元に戻る。

「行くぞ!」

真後ろから銃声が聞こえた刹那、進行方向を右上45度変える。

弾が野良兵へ直撃したのを確認すると、右足に思いっきり力を入れ、摩擦力で減速させた瞬間にそのまま地面を思いっきり自分が左に流れるように蹴る。

そしてそのまま右手の担当を野良兵の胴体に切りつけ、そのまま空中で体をひねり右足にまた力を入れて、減速させる。

するとまた銃声が鳴り、野良兵のゲージが1割になった。野良兵も反撃しようと、竹槍を卯付へ突き刺すが、その時間銃声がなって1秒半。地面に左手を付けて、体全体を右斜め前へ投げ捨てる。

間一髪竹槍を交わし、縮んだ膝を思いっきり野良兵目掛けて解放する。卯付から解き放たれた突きは、見事に相手の喉元へと的中。

ゲージは0になり、敵は雲散霧消した。


すると濃綺が右手を上げながら、小走りで来たのですかさず俺も右手を上げハイタッチする。

────パンッ

お互いに笑い、卯付は鼻をこすり、濃綺は後ろへ両手を回し、体を少し左へ傾けまた笑う。

「予想以上に上手くいったな!」

「そうだねー、謀反にならなくて良かったよ」

「あのさあ、そういう事は怖くなるから言うのやめようね?」


その後も同じ様な流れで、30分ほどレベル上げをしていた。

ドロップ品に目新しいものはなく、とりあえず雑貨屋でお金に変えて、銃弾は濃綺へとあげる。

武器も新しく作れる素材はないため、そろそろ別のフィールドに行こうかと考えた。


「今日は楽しかった、ありがとうね。私はもう時間だからログアウトするかな」

「そっか、もうこんな時間か。」

「また明日ね」

「おう、出来たらまた明日」


濃綺はにへら笑い、消えた。

「さて、俺もログアウトすっかなー」

そう1人で呟き、目の前が真っ暗になる。

段々と体の感覚が戻っていき、気だるさか、体が重いのを感じて現実世界(リアル)に戻ってきたと実感する。


「まーたゲームやって!構ってよー!」

体が重かったのは唯智華のせいだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ