表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

駆け出し

最初は少し暗い人なイメージだった。

目は髪の毛で隠れているし、声も少し小さめ、黒髪ロングで落ち着いた・・・というより少し病んでいる様な雰囲気だった。

鈴森が

「なぁ、こいつやばそうじゃね」

と耳打ちしてくるが

「そんな事ないよ、挨拶してくれたんだもん」

そう笑って言い返す。

何を話しているのか分からない濃綺は、少しばかりキョトンとしていた。だが、自分の立場上アイドルやってるのを気づかれたと思い内心ヒヤヒヤする。

(え、もう気づかれた!?やばいやばいやばい・・・)

頭の中で色々考えているのが、表に出ていたため、傍から見るとその姿なだけあって挙動不審な人に見えた。

「濃綺さん」

「ひゃい!?」

「よろしくね」

「・・・はい!」

突然名前を呼ばれたため、少しばかりおかしな返事をしてしまったが、相手はにこやかに笑いながら握手をしようと手を差し伸べてきた。

そして、返事と共に卯付の手を両手で掴む。


「やっぱいい人じゃん」

振り返り鈴森へまた笑いかける。

「どーだかな。下克上なんてあるしな」

「まあ、それもまた楽しみだよ。ゲームの」

「あ、あの!私はそんな事しません!!!」

鈴森という人は、少し苦手だけども、卯付という人とは何とかやっていけそうだ。

そう思う濃綺だった。


夜10時、濃綺がログアウトしたのを見送り、卯付と鈴森は城下町を抜け、平原へと向かう。

野良の足軽がいると濃綺から聞いたため、レベリングをしようと言う事になった。

バトルするにあたって、スキルも全部ステータスへ振っていく。

卯付は、短剣のため俊敏と技力。そして運を多めに、あとは平均的に振っていく。

何かあったらいいなと、一番運がステータスの中で高めであった。


鈴森は攻撃を筆頭に、技力、収納力を上げ、後は適当に振る。

「輪刀は楽しみだぜぇ!!かぁーっ使ってみてーはやく!」

と1人で叫んでいるが、それを聞いた卯付は「俺だってそれが良かったのになぁ」と小さく呟く。


平原につくと、そこには野良の足軽がスポーンされていて、グループでいることはなかなかなかった。

「とりあえず、あそこの足軽から倒そうか」

「おっけー」

卯付の提案に、鈴森が飲む。

まずは鈴森が全力で相手へ走り、輪刀で切りつけようとした。

だが予想以上に扱いが難しかったのか、距離が届かなかったり全く違う所でからぶったりした。

「なにこれ、めちゃくちゃ難しい・・・。」

鈴森は1人で呟いていた。

輪刀は、丸い円の武器で外側には刃があり一部だけ柄だけの部分もある。持ち歩いたり、振り回すためだろう、柄は内側に付いている。なので、一連の動作に慣れないと相当扱いは難しい。

苦戦している鈴森を見て、とあるゲームのキャラを思い出し駆け寄る。

「少し貸してみてよ」

「いいけど、メチャクチャむずいよ」

「まあ、だろうね。見ててわかるよ、でもこんな感じでやればいんじゃない?」

そう言いながら、敵の前へ行き回転しながら流れに任せて輪刀が円の軌道を描いていく。

するとしっかり足軽へ攻撃が当たり、倒すことに成功した。

「俺は攻撃にそんな振ってないけど、鈴森だったらもっと速く倒せると思うよ」

笑いながら話しかける

「お前すげえよ、よく流れるように斬りつけれるな。昔ダンスとかやってた?」

「いや、全くだなぁ。ただこういう武器はこんな感じに動いた方がいいかなって」

とあるゲームのキャラの真似をしてたなんて言えない。

だが、それなりには自分でも動けていたと思う。

「さて、俺もやるか」

そう言い、他の足軽へダッシュをし短剣を突きつける。

このゲームは、アタックスキルなどが無いため、攻撃モーションは全て自分次第なのだ。だから完全PSゲーム、PVPだと相当難しいだろうと卯付は思った。

どうせなら素早さを活かしたいと、まずは駆け回る。

そして、地面の砂を蹴りあげ、相手の顔面へ飛ばす。

コンピュータだからと言って容赦はしない、そこへ全力ダッシュで目を瞑った瞬間に喉元へ、短剣が喰らいつく。

すると、足軽の体力ゲージが0になりやがて雲散霧消した。

ドロップはどうやら倒した直後に、目の前に表記されるらしい。

今回は鉄一個と60円だった。

お金はわかりやすいよう日本円表示なので、計算でこんがらがることは無い。

「ふぅ。なるほど・・・」

血は付いていないが、気分で振り払う。

「かっこよく決めちゃってー」

「かっこいいだろ?」

「本体がなぁ」

「やめろ」

もうちょっと褒めろよなー、と呟くが鈴森には聞こえていなかった。


お互いに30分ほど、別々に戦闘スタイルの調整を行う。

レベルも少しは上がり、所持金もちょっとだけ潤ったので気持ちが弾む。

「でも実際短剣ってつかえるのかな。忍びのイメージしかないんだけど」

「その点、輪刀はカッコイイよな・・・嘘嘘、ごめんて。そんな睨むな睨むな。イイじゃんか忍び。カッコイイしお前得意だろ?」

「は?1回もそういうのやったことないんだけど」

「影薄いじゃん」

「喉元後ろから掻っ切るぞ」

ほんとに酷い言われようだ。ったく、まあ、忍びも悪くは無いかな・・・。手裏剣とかクナイもあった気がするし、本格的に始めるか?

そう思った矢先、鈴森が

「でも手裏剣とクナイって消費だろうな。コスパめちゃくちゃ悪そう、てか金かかるだろ」

と話しかけてきたので、忍びは絶対にやめようと決意した。


今度は二人合わせて、戦ってみる。

俺が前で注意を引いて、鈴森が叩き込む戦法だ。

まずは全力で駆け込み、相手の視野内へ侵入する。そこからタゲを引っ張り、鈴森の方へと向かう。

そして完全に鈴森のいる位置へ姿を被せ、タゲを移さないように調整する。

あと数10センチでぶつかる!となった所で鈴森の上を飛んでいき、鈴森の目の前に現れた足軽へ、輪刀を左回転でぶち込む。

卯付は、着地した瞬間に回転方向とは逆の方から走って背後へ回り、輪刀を喰らって怯んだ足軽の後ろから短剣を突き刺す。

すると、また足軽は雲散霧消していった。


「まあ、こんな感じでいいでしょ」

と鈴森が言うが

「完全これ、俺ばっか動いてない?」

と卯付が問いかける

「ソンナコトナイヨー。そうだもうこんな時間か」

「話そらすなよ・・・うわ、もう11時半か。」

「ログアウトするか」

「そうだね、じゃあまた明日」

「おう、また明日なー」

お互いに手を振り合いログアウトする。

VWを外すと、そこには卯付(うつけ) 唯智華(いちか)・・・妹が顔を覗いていた。


「あ、おにぃ起きたんだ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ