出会いと
「わぁ・・・!」
そこは広い平原の世界だった。
濃美もVWは初めてだったが、自分のキャラクター像はある程度決めていたため、スムーズに設定できた。
いつもはピンクの髪にツインテールで、ゆるふわキャラだったため、落ち着いた雰囲気で大人の色気を醸し出すもう1人の自分になってみたかった。
髪型を変えるだけで大分違うんだなあ、と実感する。
いつもと違い、前髪は真ん中だけ鼻辺りまで伸ばし、髪色はピンクから艶のある黒へ。そしてツーサイドアップだった髪型は、ストレートロングへ。
今思えば、ただ根暗な女性にしか見えなかったかもしれない。だけど、初見だ。めちゃくちゃそれは大人の女性に見えた。
「ふっふーん。これで私もモテモテねっ」
そう言いながら、回転したり、スカートを翻したりしてポーズをとる。
「おっぱいって大きく出来ないのかしら・・・。むぅ」
そこだけが不満であった。
気づいたら目の前には、城選択画面が出てきていた。
「小田原城よね!やっぱり!!」
そう思い、小田原城をタップしようとする。
しかし、あと数ミリの所で指が止まった。
「人多いよね・・・やっぱり。バレたりしないかなあ。」
そう思ったら、好きな城も押せなくなってくる。
髪型もガラッと変えてるし、大丈夫だとは思うが不安なものは不安になる。
そうして悩みに悩んで眺めていると、とある県が目に付いた。
「青森ねぇ・・・青森なら人も少ないんじゃないかしら。」
完全に偏見であるが、わざわざ青森の城を選ぶ人はなかなかいないというのが事実だ。
まあ、どこでもいいや!と
「えいっ!」
目を瞑りながら、青森の城のどこかをタップする。すると目の前には
「弘前城に決定しました、あなたは家臣です。」
と表示されていた。
「流石に家臣かぁ・・・、今って人いるのかな。」
そう思い、大広間だろう召喚された場所をぐるっと見渡す。
お城ってこんな感じなんだ、と色々見て周り外を見る。
町の方には、鍛冶屋や薬屋など様々なお店があり、まだ兵力が少ないせいか民家は殆どなかった。
おそらく、発展させていくんだと思う。また、ステータスがオール1の場合はリアルと全く変わらない運動能力で、例えばスキルポイントを俊敏に100を振っても、目に見えなくなるほど足は早くならない。
「難しそうだし、やってけるかな」
なんて呟いてしまう。
「あ、そういえば城主いるかな」
挨拶しようと思い、城下町へと出向く。とりあえず鍛冶屋を見てみたいとなんとなく思ったので、さっきあった場所へ向かうと、男2人が話す声が聞こえてきたような気がした。
「やめろ、俺もそんな気がしてきただろ」
何話してるんだろ、そう思いながらもひょいと物陰から顔を出すと、丁度ログアウトして行った。
「あっ、タイミング悪いなぁ。」
伸ばした腕は空を切る。
はぁ、と溜めた息を吐きながらダラっと項垂れた。
とりあえず、城からでて野原へ出た。すると、一般的にでるモンスターはいないが、野良足軽兵などがさ迷っていた。
鍛冶屋に行った時、武器は種子島を選んでいたので、試しうちをしてみる。
火縄に着火させ、狙いを定め放つ。やって見ると、初期型という事もあり狙ったところになかなか行かないのが現状だった。
それに初めてだったため、反動で大きく逸れたり、おでこに銃をぶつけたりもした。
当れば強いだろうが、狙いは全然なため練習が必要だろうなあと思う濃美。回転効率も悪いため、1人じゃ確かにきつい。だが、練習しないと使えないため、ひたすらに銃と向き合う。
2時間が経過した。
「うん、レベルもだいぶ上がったしとりあえず終わりでいいか」
とつぶやく。
ゲームの仕様で、火縄はオート補充され、切れることはない。だが、弾は無くなるため注意が必要だ。しかし初期型の弾は、足軽兵がドロップするのでなんとかなった。
ドロップ品は弾の他には、薬草、鉄、1人あたり100円前後、革製の鎧などだ。
余った鎧などは、雑貨屋へ売りにいき、弾や薬草はストレージに確保したままで、鉄などは鍛冶屋で武器を強化する時に使う為、一旦弘前城へ戻り、大広間にあった収納箱に入れて道具を整理した。
説明書にも書いていたが、収納箱は個人のストレージ共有で、二つ目を買ってどこかに設置しても、元から入っている道具は共有しているらしい。
つまり、家を買ったとしてそこに収納箱を設置しても、お城にあるヤツとは別々じゃなく同じなため、近い方へ置きに行ってもいいらしい。
ちなみにお城にある収納箱は、同じものを使っても個人で違うらしく、他人に道具を盗られるなどという心配はない。
整理し終わってそろそろ寝ようとした所、また男の人達の声がした。
「戻ってきてたんだ」
今度こそ挨拶しに、男の人達の方へで向かう。
見た目からして、少しおちゃらけてそうな人と、少しばかりよく笑う人がいた。
するとチャラそうな方が
「なあ、卯付。俺らもしかしてずっと2人なんかな」
と問いかけた。すると
「まあ、それでもいいんじゃない?楽しめれば」
と楽しそに笑う。
最初は何がそんなに面白いんだろう、と思っていたがその言葉と笑顔は少し惹かれるものがあった。
「よし」
一言自分へ呟き、2人の方へ向かう。
「貴方が城主かしら・・・?よ、よろしく・・・。濃綺です。」