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未来観測

一口に未来予知といっても、幾つかの種類がある。予言。予知夢。未来視。占いだって広義の未来予知になるものもあるだろう。オカルト、統計学、綿密な計算、まあ色々だ。インチキも多いが、本物もある。偶然の一致やバーナム効果ではない、本当に未来をあらかじめ知ってしまっているものが。

ちなみに、俺が物語内の時間軸が行ったり来たりしている時に情報を知る順番がズレるのもある意味でそうかもしれない。観測された事象は確定する。箱の中の猫が死んでいると知ってから箱を開ければ、当然箱の中の猫は死んでいる。だからある意味、正確性がある程度以上に高い未来予知に存在意義はない。変えられない未来を知る事にどれだけの意味があるだろう。

最も精度の高い未来予知は、未来を観測してしまう事だ。観測されてしまえば、そうなる事は決まってしまうのだから、外れるわけがない。その時点で可能性が集束してしまっているのだから。

だが、未来を確定させる事に何の意味があるだろう。望まぬ未来であっても変えられないのに。望まぬ未来であれば変えたいと思うからこそ、人は未来を知りたがるんじゃないのか?で、ある以上、未来予知は外れる可能性もなければならないのである。

ところで、未来予知が外れない場合、大きく分けて二種類の可能性がある。一つは、確定された未来はどうやっても変えられない、という場合。もう一つは、未来を知ったものの動きが既に予知に組み込まれている場合である。どちらの方が絶望的かは意見の分かれる所だろうが、どちらにしても同じだとも言える。どちらにしても未来を変える為には予知をしてはいけないということだ。

予知をしながらも未来を確定させないためには、どのような方法があるだろうか。まず思い付くのは、精度を下げることである。しっかり観測しない。観測を一瞬、一つの場面のみに絞る。予知によって手に入る情報に不確実さを与える。抽象的な形で予知をする。成程、曖昧な予知は未来を確定しないかもしれない。だが、不確実だ。それに、"未来を知って変えようと動く"ことも"その結果未来が変わること"も最初から決まっていたのかもしれない。

次に思い付くのは、予知に前提条件をつけることだ。選択肢を提示し、それを選んだ場合の未来を問うのである。これならば、未来が本当に確定するのは選択肢を選んでからのことになるはずだ。まあ、能動的に見る事が出来なければ出来ない事だが。

予知が能動的に使えるものでなければ、変えるも何もない。だが、えてして精度の高い予知はそんなものである。予知できるからするというよりは、予知をしてしまう。己の意思に関わらず見てしまう。勝手に見えてしまう。

予知は必要のない力だ。

まあ、未来を観測していない予知であれば、信頼度は下がっても他に直接の影響はないかもしれないが。それにしたって知る事でどう影響が出るのか、という問題はあるだろう。そういう場合、やはり知ったものがどう行動するかまで計算に入れなければ意味はない気がする。

未来とは、可能性だ。実際にその時になって事象が観測されるまで、現実として確定はしない。現実、現在として確定した事象に可能性の予知はない。0か1か。起こらなかった事象は最早関係がない。

否、そもそも未来とは本当に不確定のものだろうか。俺たちが知覚していないだけで、全ては定められた予定調和。最初から全て決まっている物だという事は、ありはしないのだろうか。俺がこうして観測者となったことも、最初から決まっていた、所謂運命と言うもので、最初から最後まで、全てが彼女の手の平の上で、俺たちは筋書き通りに動いているだけで、俺たちの意思に何の意味もなくて…いや、これ以上はやめよう。行き過ぎた運命論は絶望しか生まない。

運命は可変であるからこそ、希望がある。定められた運命はよいものとは限らない。どうしようもなく破滅するさだめを与えられたものもいるだろう。未来を知る/変えるなど欺瞞だ。勝つ者がいれば負ける者もいる。椅子取りゲームかババ抜きみたいなものだ。幸不幸は本人の捉え方次第とは言っても客観的に見て誰も損を被らないハッピーエンドなど存在しない。




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