No.4 魔法-magic-
「ただいまより、天童峰学園の入学式を開始致します」
いきなり開いていた席に俺が現れたから周りの奴らは驚いていたがいちいち謝るなんて面倒なことはしない。
「学校の歴史についてはあらかじめチュートリアルで説明いたしましたので、今からは学校内での生活及び、魔法について学園長より説明していただきます」
それもチュートリアルで説明すればよかったんじゃ...
いや、今更どうでもいいか、なにせもうほとんど知ってるからな。
「まずは改めて入学おめでとう。これからはこの国の発展と何より己のために鍛錬を怠らぬよう日々精進したまえ」
ここまではどこでも聞くような定型文だな。ここにいる新入生が聞きたいことは、この次...
「とまぁ、長々と挨拶をするのもお主たちにとっては退屈じゃろう。さて、ではお待ちかねの魔法について説明しよう」
ワァアアアアーーー!!!!
途端に割れんばかりの歓声が会場を埋め尽くした。
「ふむ、マインドコード・『静かなること林の如く』」
シン...
「忘れておったが、ワシの名前は舞島 煎という、以後よしなに」
あのジジイ、もういい歳のくせしてなんつー規模の魔法を使ってんだよ。
「魔法というのはまず性質を現す基本コードと形質を現すコマンドの二つによって構成されておる。基本コードというのは、火、氷、風、土、雷、光、闇、無。それとその他の系統外の九つが存在しての、系統外については種類がありすぎる上に使える者が限られているため一つにまとめられたのじゃ。次にコマンドについてじゃが、これはどんな形で顕現させるか、という命令のようなモノだと思ってくれれば良い」
ちなみにさっき学園長が使ったのは『マインドコード』つまり、系統外にあてはまる。
コマンドは『林にある木の一本一本を人に当て嵌め、木々の静けさを対象である人の精神に上書きする』ってとこか。
まぁ、こんな複雑なコマンド組めるのは世界に数えるぐらいしかいないがな...
「では、みなが初めからある程度発動できる魔法を見せてやるかのう…ファイアコード・ボール、アイスコード・ウォール、ウィンドコード・カッター、グランドコード・シールド、エレキコード・ランス、ホワイトコード・アロー、ブラックコード・ソード、クリアコード・バレット...アクセスコード・『強制終了』」
魔法が次々と発動していく。
火の球が飛び
氷の壁がそれを防ぎ
風の刃が壁を切り裂く
土の楯が刃を防ぎ
雷の大槍がまるで実体を得たように盾を貫く
光の矢が槍を迎撃し
闇のように黒い剣がそのすべてを叩き落とす
無色で様々な光を反射する弾丸が剣を弾き飛ばし
そしてすべてが掻き消えた。
「ワシ程になればこの程度の魔法は何発撃っても苦にはならん。最後に使った魔法はワシにしか使えん系統外魔法じゃから、マネしようなどと思ってはならぬぞ」
あまりの迫力に会場にいる生徒は唖然としている。そんな中...
パチ、パチ、パチ...
どこからか小さいけれどもしっかりとした拍手が聞こえてきた。それに影響されて音はどんどん大きくなり、最後には初めの歓声以上の音量が会場内に響き渡った。
「...まぁこのくらいは大目に見てやるわい。言い忘れておったが、一人が使える魔法の数は限られとるぞ。鍛錬を行えば数は増えるが根本的に使える属性は決められておる。それは己で確かめるんじゃな」
この使えるというのは自動精製されたアバターの『色』に依存する。
赤なら火、青なら氷、緑なら風、茶なら土、紫なら雷、白なら光、黒なら闇、といった具合だ。ほとんどのアバターはこのように色分けされるが、中には変わった色を持つアバターもいる。
そしてここからが重要だが、厳密に同じ色のアバターは存在しない。同じ顔形の人間が存在しないように、アバターにも個性が表れる。同じように見えても微妙な彩度や明度の違い、中には二つ以上の色を持つアバターも確認されている。ただし、『キャスト』においては単純な色にも金属的な光沢が混ざっているためバリエーションは無数と言っても過言ではないだろう。
使える属性が限られている、とジジイは言っていたがそれは正しい言い方ではない。正しくは「自分に適合した属性の魔法が扱いやすくなる」であり、決して「使えない」というわけではない。どのくらい使いやすくなるかは人によって様々だが、分かりやすく説明するなら苦手な属性は1時間練習を重ねてようやく使えるようになる。それに対し得意な属性は、魔法のコードとコマンドが分かれば数回の練習で自分のモノに出来る、そのくらいの差がある。そこまでの差があるのなら敢えて苦手な魔法を習得するより得意な魔法のバリエーションを増やす方が手っ取り早い。そういった理由から皆自分の得意な魔法を中心に使うため「自分の色の魔法しか使えない」といった語弊を招いているのだ。
さて、ここで一つ疑問が発生する。舞島烈の『色』は水晶のように透き通った『無色』。ここから導き出せる結論は...
「俺は無属性極振りかよ...」
そう、無色とは字のまま「色が無い」つまり無属性しか扱うことが出来ないという可能性を孕んでいる。これは戦闘において役に立つとは言い難い。
何故かというと、属性にはそれぞれ特徴があり、その特徴が戦闘に不向きであるからだ。
火属性は『燃焼』
氷属性は『氷結』
風属性は『不可視』
土属性は『形状変化』
雷属性は『感電』
光属性は『速度』
闇属性は『浸食』
無属性は『共鳴』
火属性、氷属性に関しては説明は不要だろう。風属性については、扱うのが空気であるため視認が難しい。土属性は造形を変化させることに富んでいる。分かり難いようであれば粘土を思い浮かべれば概ね正解だ。雷属性は、そのまま電気としての性質と同等である。さらに扱いの幅が広く汎用的であるため大変便利な属性だ。光属性の特性は何といってもその速さにある。発動したとほぼ同時に的に命中するのだから避けようがない。そのため発動の挙動と詠唱を察知するしかないのだ。闇属性の『浸食』についてだが、これについては諸説あり、ブラックホールのように吸い込んでいるだの、腐食による消滅だの未だに議論が絶えない。ただ、原理はどうあれ「消滅」させているという結果だけ見れば攻守共に応用の効く属性である。最後に無属性だが、『共鳴』だけでは解りづらいのではないだろうか。この属性についての話は少し長くなる。まぁ他の属性の説明で十分長かったとは思うがもう少し付き合ってほしい。無属性とは無色、つまり「色が無い」と先ほど説明したが、この無色には別の捉え方がある。察しのいい理系の人は気づいたであろうが、光のように「すべての色を内包する」という捉え方である。光は無色ではなく様々な色が混ざり合うことで透明に見えているのはプリズムを使えば容易に観察することが出来る。つまり、無属性の極地は『すべての属性を使いこなせる』ということではないだろうか。この捉え方については闇属性と同じく議論が続いている。では、なぜ明確な解答が出ていないのに属性の特徴では『共鳴』と表されているのか。
それは無属性で放たれた魔法は周囲に展開していたり衝突した魔法の色に染められることが確認されている。つまり「色が無い故にすべての色に染まることが出来る」ということになる。ここから導き出せる結論は、他の魔法に影響され色が変わる。つまり、無属性の定義は『色が無い』ということになる。これが確定的となり、正式に無属性の特徴は『共鳴』となっている。
ここまで説明すれば分かるであろう、無属性の特徴である『共鳴』は攻撃にも防御にも適さない。せいぜいが属性共鳴による相殺程度だ。
しかし、先程のジジイが最後に掻き消す前に放った無色の弾丸は、他の魔法が発動していたとはいえ破壊されほぼ消えているといっても過言ではない状態にも関わらず様々な色を発していたのではなかったか?...
アクセス数が思ったより増えててびっくりしました(笑)
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