No.3 八家-gap-
「『風間』?」
これは驚いた、かの八家の風間家ではないか。
「風間っていっても俺は末っ子ッスよ、であんたの名前はなんていうんスか?」
「…舞島 烈」
「マイジマッスか?なんか聞いたことがあるような気が…」
「気のせいだろ?さぁ、早く行こうぜ、シェイプチェンジ、モード:ヒューマ」
こういう反応をされるからこの名前は嫌いなんだ。
「ちょっと待って下さいッスよ!シェイプチェンジ、モード:ヒューマ」
そこに立っていたのは翡翠色の制服に身を包み、熊の耳を生やした…
「耳!?」
なにこのチョイス!?似合い過ぎにも程がある。ん?じゃあ俺は…
「烈は…尻尾ッスか?」
なん…だと?
「綺麗ッスねー、触ってもいいッスか?」
言い終わったと同時に伸ばされる手…!?
ギュッ
「ッ!?」
なんか、なんかぞくっときた!!!
「やっぱ手触りは鱗ッスね、すべすべしてるッス」
スリスリ
「い…」
「ん?どうしたッスか?」
「いい加減離しやがれー!!!」
素早い動作で魔手から逃れた俺はそのまま達也の耳に手を伸ばした。
「ちょっ!?なにするんスか!?」
「……………」
モフモフモフモフ…
「なんかすっごいくすぐったいッス!!や、やめて下さいッスー!!!あと、無言でヤられると無茶苦茶怖いんスけど⁉︎」
《その頃彼らのすぐ後にログインしたある生徒の反応》
じー…
「…ッ⁉︎(キマシタワァー!!!これでネタには困らずに済むわ!!!)」
当然それだけガン見していれば彼らも気付かない訳がなく…
「なんか変な視線を感じるんだけど…」
「…奇遇ッスね、実は俺も感じてるッス、なんか…粘りつくような」
まったくもって奇遇だな、まさかそんな妄想がシンクロするなんて…
「そこの猫の女子、なにかようッスか?」
妄想じゃない…だと?
達也の視線をたどると紅色の毛皮をまとった猫耳尻尾付きの女の子がこちらをじーっと見ていた。
「ひゃわっ!?」
なんと向こうは気づかれないものと思っていたらしく、視線を向けられてオロオロとした挙句・・・
「わ、私のことは気にしないでそのまま続けて下さい!!!」
とんでもない爆弾を投下したのであった。
「あの二人ってもしかしてソッチ系?」ヒソヒソ・・・
「うわ、あの二人ホモだってよ(笑)」クスクス
「男同士だなんて・・・」ポッ・・・
「「最後の人効果音おかしいよね!?」」
ここはやはり考えることは同じのようだ。
ただし周囲の人間からすれば
「「「ツッコミどころはそこなんだ・・・」」」
まさにその通りである。
「ゴホン、まぁそれはおいといて」
思わず脊髄反射級のスピードでツッコんでしまったが問題はそこではない。
「最初の質問に戻るッスけど、君は誰なんスか?」
「わ、私は焔 美琴といいます。よろしくお願いします」
ここにきて二人目の「八家」か…
「焔家の人ッスか、俺は風間 達也っていうッス。よろしくッスよ」
「…舞島 烈」
「舞島!?まさか、「あの」舞島家の方ですか?」
バレた…
おさっしの通り俺こと舞島烈は「八家」に連なる人間だ。ただし...
「たしか舞島って私たちの祖父の時代を最後に衰退していった家じゃなかったかしら?」
たしかに、八家といってもすでに落ちぶれた没落貴族のようなモノだ。
「そりゃ聞き覚えがあるはずッスよ、烈も八家だったんスね」
「まぁ、一応な」
「それにしても、よく舞島家の人間がこの学園の試験をパス出来たわね」
俺がこの名前を嫌いな一番の理由は、この一部の八家からの同情及び見下しだ。
「そういう言い方はよくないッスよ。烈だって努力したから合格したんスから」
たしかに俺が入学できたのは毎日地獄のような勉強及び訓練を重ねてきたからだが...
「そう...ね、ごめんなさい。あなたを侮辱するようなことを言って」
やけにあっさり認めたな。
「別にいい、そういうのには慣れてる」
幼い時から言われ続けてるんだからそりゃあ慣れるだろう。
「でさ、話は変わるんだけど...」
なんか、イヤな予感...
「君たちってやっぱり「そういう」関係なの...?」
「「んなわけあるか(ないッス)!!!」」
自分で言うのもなんだが、シリアスな空気が完全にぶっ壊れたな...
「で、でも素質はあると思うよ!!」
「そんな素質いらないッスよ..」
「同意だな、そんな趣味を持った覚えはない」
俺たちは光もかくやというスピードで即答した。
「いつか、いつか必ず目覚めさせてあげます!!」
まったく、傍迷惑な奴だ...
ピーピー<<ケイコク>><<ケイコク>>
「入学式10秒前トナリマシタノデ、現在空イテイル席ニ強制転送シマス」
「もうそんな時間ッスか!?」
「い、急いでいかなきゃ!!」
「もう遅いだろ...」
「アクセスコード・瞬間移動ヲ発動シマス」
シュンッ
もう少し前に警告してくれればいいのに、とは思わなくもなかった。