に
青年は、草を抜こうとしていた事も忘れ少女に尋ねる。
「この辺りに、町はあるか?」
少女は、日光のせいなのか頬が真っ赤で、目も焼けているようだった。
「まずは手をひっこめてあげて。恐がってる」
少女は青年をきつく見つめながら言った。青年が素直に従い、おどおどと手を戻すと、少女はその『恐がってる』植物に歩み寄り、撫でながら「大丈夫だからね」と語りかけた。
それから、少女は青年を一瞥し「町へなら、そこの道から行けるから」と、僅かに草の薄くなっている所を指さした。
ただ、視線に込める感情だけは変えずに。
青年の礼も聞こえない内に、少女は森の奥へと消えていった。少女の表れた場所をよく見ると、獣道とも言いがたい、かなり狭い草と草の『穴』が続いており、奥に白い足が少しだけ見えた。
足元で、笑わなくなった草が風に音をたてた。青年は最寄りの木の下に穴を掘り、せめてものたむけにとそれを植えた。爪に入った土は、自分への罰だと甘んじて受け入れる。
立ち上がり、少し額に手をあて、少女が差した『道』を辿っていった。
どうやら嘘だけはつかれなかったようで、次に目標にしていた町、ヴァルトへと到着した。