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じゅうご
少女の笑顔に満たされた青年は、帰る事を提案し帰途についた。帰りもそれなりに険しい道だったが、湖の水を飲んだおかげか疲れは感じ無かった。
二人がいつもの場所に着いた時には、日は地平線に沈んでいた。
「ありがとう。君には本当にお世話になった」
青年はそう言ったものの、それだけでは足りない気がした。もっと感謝を伝えたかった。
「うん」
少女はただ笑った。くったくの無い笑みだった。太陽のように眩しかった。
「じゃあ」
と。青年は町へ向かって歩き出した__ところが青年がいくら歩いても町が無い。延々と同じところを歩かされているような感覚がして、青年は試しに近くの木に落ちていた石で傷をつけ進んだ。すると進んだ先に傷をつけた木が立っていた。投げ捨てた石さえ見つかった。
青年を激しい感情が襲った。焦り、恐怖、憤り、嘆き、それらの全てがいり混じって混沌と化し、何度か吐きそうになりもした。
ひとまず、道を遡りいつもの場所へと青年は向かった。
少女はもう、いつもの小さい穴の向こうに行ってしまったようで、そこには誰もいなかった。