学校
結局、麗の部屋に泊まる事ができた俺、目覚める。清々しい五月の朝。
初めて寝袋で寝たが、結構安眠できた。寝袋からはいでて頭をかきながらトイレへと向かう。扉を開ける。
……。
間違えた。
この部屋、トイレとお風呂は別々になっていて、扉が二つ並ぶ構造になっている。
で、俺、トイレと間違えて風呂場の扉開けた。
……。
麗、風呂からあがったとこだった……。今度は全裸……。ひきつる顔の麗。
悲鳴。そして、なんか飛んできた。
ドライヤーだった……。
・
たんこぶのできた頭を冷やしながら朝食。トーストと牛乳と目玉焼きとサラダ。
一応、麗が作ってくれた。ぶつぶつ文句言いながら……。
「今日の予定は?」と麗。
「転入した高校に行く」と俺。今日は月曜日なのだ。
「高校? どこ?」
「大富士高校」
「私と同じ高校じゃない!」驚く麗、迷惑そうな顔。
そんなこと言われても、同じ高校って知らなかったし……。
「一緒には行かないから」と麗。
「別にいいけど、なんで?」
「え? だって、付き合ってると思われたら嫌じゃない?」
嫌なのか……。俺は嫌じゃないけど。中身は別として、見た目、麗は美少女なので、男としてはなんか嬉しい。まあ、もっとも実際つきあっているわけでもないのだが。
「一緒に住んでいることも話しちゃだめだから」と念を押すように言う麗。
「わ、わかったよ」
なんで、そんなに秘密にしたいんだ?
「帰りは、私が帰ってきてから、戻ってきて」
なんだよそれ~。
「だって、私のもの、触られたくないし」
そんなことしないし……。しかし、追い出されると困る俺、うなずくしかない……。心休まる場所が欲しい。
お気に入りの公園でも見つけるかな。なんか、リストラされたことを妻に黙っている元サラリーマンみたいだな……。
そんなこんなで、俺と麗、時間差で学校へ。先生に連れられて教室へ向かう俺。
教室、麗と同じだった……。
・
うわ! 麗、あからさまに不機嫌そうだし……。俺の方見ないで外見ているし。
「虎之助君は藤村さんの従兄弟ですので、仲良くしてあげてください」と先生。
先生、いらないこと言うし。クラス、ざわめく。麗、顔が赤い。きょろきょろして挙動不審……。
「よ、よろしくお願いします」と挨拶する俺。
「じゃあ、席は藤村さんの隣がいいわよね」と先生。麗の隣席の子を移動。俺をそこに座らせる。
ああ、先生……。たぶん、親切なんだろうが、なんか裏目にでてますから……。
「なんで学校に来てまで、あんたと一緒なのよ」嘆息まじりに言う麗。
「俺のせいじゃないし。あと、名前で呼べよ」
「……。やだ。仲良いと思われるじゃない」
ああそうですか。触らぬ神にたたりなしだな。
「わかっていると思うけど、私が魔法少女というのは内緒だからね」ささやく麗。
「もちろん、わかっているよ」と答える俺。わざわざ、誰に話すんだよ。