やるじゃないか
俺、離れた場所にいる麗を見る。
ゴーレムも麗を見ている。麗、明らかにおびえている。やはり、攻撃系の魔法、使えないんだな。
ゴーレム、麗に向かって走り出す。思わず俺も走る。
しかし、走ってどうする。あ、そうだ、掘れば爆風が起こせるのだから攻撃になるのかも。
……。
もっと敵が増えたらどうしよう……。
しかし、考えている暇なしである。ゴーレム、ずんぐりむっくりの為か走るのは早くない。
俺、ゴーレムと麗の間に滑り込むと地面に腕をつっこむ。
やはり、生クリームにつっこんだような感触。そのまま地面を掴んで持ち上げる。
爆風。起こった。俺もゴーレムも吹っ飛んだ。
地面にクレーターのような穴が開く。
なんか、箱とか扉とかがその穴に埋まっているのが見える。あれが埋められてるアイテムってやつなのか?
俺、麗の前に落下。
「痛ててて。今のうちに逃げよう」と俺、立ち上がりながら麗に言う。
「だめ。縁を助け出さないと!」麗、首を振る。
そんなこと言われても……。
と、そばでドスッという重い落下音。とたんに地面に影が描かれる。
顔を上げるとゴーレム。
飛んできたのか。復活早いから……。
ゴーレム、拳を振りあげる。
俺、麗を守るように覆い被さる。と言っても、俺の貧弱な体では守れないような気がするのだが……。
パンチ、来る! と思った。
ものすごい衝撃。つぶされなかったけど息が止まった。さらにゴーレムの拳、尖っているので服、破れた。ティーシャツがちぎれて脱げた。ものすごく痛い。
くっそー、もう怒ったぞ。一発ぐらい殴ってやる。
立ち上がる俺。麗に背を向ける。
「え!?」背後で麗の声。
なんだ? ああ、俺の背中の傷、見て驚いたのか。
かつて、麗を猛犬から守った時にできたひどい傷が背中にあるのだ。そういえば、あの時と似ているな今の状態。とはいえ、今回は守りきれなさそうだけど。
ふと、俺、自分の体を見る。
ん? 俺の体、変じゃない?
なんか毛が生えているし、しかも模様が入っている。
なんていうか……、虎柄?
う、ズボンきつい、と思ったら裂けた。
俺の体、膨張している。
……。
俺、大きな虎に変身した……。ゴーレムよりも大きい。なんか、全身に力がみなぎってくる。全長15メートルくらいありそう。
誰かが魔法かけたのか?
なんだか、わからないけど、いいや、このまま戦ってやる。
ゴーレム、俺を殴ってくる。しまった、避けれなかった……。あれ? たいして痛くない。ボコボコ殴ってくるゴーレムだけれど、俺に傷をつけることできず。
なんだこいつ、弱いじゃないか。
俺、ゴーレムの頭にかみつく。そのまま首を引きちぎる。頭、食べちゃった……。
……、美味い。なんで石なのにこんなに美味いんだ。珍味だ。
あ、縁ごと食べたんじゃないよな。あいつ、体の中心にいたから……。俺、するどい爪で倒れたゴーレムの腹を裂く。いた、ぐったりしている縁。
縁をそっとくわえて取り出すと麗の前につれていく。
ん? なんかおびえているな麗。俺の姿におびえているのか?
いや、そんなことよりも珍味、珍味、とゴーレムへと戻る俺。その後も、大虎の姿でゴーレムを黙々と食べ続けた。
気がつくと茜さんや樹さん、リュウキも戻ってきて少しあっけにとられた顔で俺を見ていた。縁も回復呪文施されたようであきれた顔で俺を見ていた。
なんだよ。助けたんだからいいじゃないか……。
麗、眉根寄せてる……。
俺、ゴーレムを食べ終わるとみんなのところへのっしのっしと移動。
元の姿に戻りたいな、と思ったら、戻れた。
「あ、どういうわけか変身して、あれ食べたらなんか美味しくて……」と言い訳する俺。
茜さん、苦笑い。樹さん、にやにやしている。縁、なんか不快な顔。リュウキ、無表情。麗、顔を伏せている。麗、なんか顔が赤い。
……。
俺、全裸だった……。