ここどこ?
とう! とか言って穴に飛んで入る樹さん。俺も引きずられて入る、というか落ちる。
暗い、真っ暗の空間を落ちる俺。横に樹さんがいるようだが暗くて見えない。
突然光が発生。
隣で樹さんの体が光っている。裸だ……。
いや、光の帯みたいなものが彼女の体に巻き付いていく。あ、服が変わった。フリル多め、ミニスカ、露出高め。
魔法少女の服か?
「そろそろ底だから」と樹さん、俺にウインクする。
ウインクされても……、底ってどうすればいいのだ?
と思っていたら、いきなり衝撃。壁的な何かに激突した。
底についたらしい。
かなりの高さ落ちてきたようだが、追突死、というのはなかった。しかし、結構痛い。首が折れたかと思った。
樹さんはスタッと着地していた。
慣れているんだな?
樹さん、ぼんやりと発光している。
樹さんが指先をくるりと回すと、周囲が急に明るくなる。光る玉が浮遊している。
周囲は、なんて言うのか、炭鉱? 地下都市? カタコンベ? 直径50メートルくらいの井戸の底にいるような状態の俺たち。横穴がたくさん開いている。
壁は土ではないようだ。まだらの幾何学模様のようなものが描かれている。
そして、すごく硬い感じがする。鋼鉄でできているみたいだ。激突してよく死ななかったな。異空間だからか? あっけにとられていると、隣に何かが落ちてくる。
麗だった。樹さんと同じく、スタッと軽く着地。
そして、やはり服が先ほどとは異なりミニスカメイド服っぽいものになっている。
かわいいのだろうが、周囲の異常さにあんまり見ていられない。
「あの……、ここは?」と俺、異界っぽいのはなんとなくわかるのだが、異様過ぎて状況が掴めない。
「ここ? 堀場」と樹さん。
いや、その内容を教えてくださいよ……。困惑した表情の俺。
「異世界への通路とか、アイテムなんかを掘り出せるところよ。私はここへ通じる穴をだせるの」と麗。
はあ。言っている意味はわかるけど、それと俺が何の関係があるんだろ。
「掘るには特殊な能力が必要になるのよ。もしくは特殊な道具」
背後で声、振り向くと茜さんがいた。
服がフリフリ多めのメイド服……じゃなくて魔法少女の服。20歳だから少女とも言えないような感じがするけど……。
とにかく、スタイルが良いのでとても似合う。
茜さん、小さい男の子を連れている。
よく見ると、頭に角が生えている……。両側頭部に……。目がうつろである。耳が少し尖っている。青白い顔。
人間じゃない?
「縁は?」と樹さん、茜さんに聞く。
「興味ないし忙しいって」と答える茜さん。
興味ないって、俺に興味ないってことなのだろうか?
「ま、いっか。今日はお試しだから」と樹さん。
お試し? 首を傾げる俺。
「リュウキ、やってみて」と茜さん。
あ、この子がリュウキなのか。茜さんの子供?
リュウキと呼ばれた少年、茜さんから離れると発光。
……。
ドラゴンになった……。
高さ3メートルくらい……。
どう反応していいんだよ……。
すごいファンタジーの世界……。
ドラゴンリュウキ、鋭い爪で壁をひっかく。
大きくえぐれる壁。えぐりとられた部分は細かい砂状になって消えていく。
にしても大胆な掘り方……。
「グギャウガオゥーー!」突然、雄叫びをあげるドラゴンリュウキ。炎も吐く。
うわ! 吠えた! 怖! 熱!
「リュウキ、もういいわよ」と茜さん。
ドラゴンリュウキ、またもや発光。そして、元の状態に。
「こんな感じで掘り進めると、なんかでてくる」樹さん、俺に向かって言う。
なんかって……何がでてくるんだよ。
「期待してないから、気楽に」と麗。
え? 俺もやんの?
「ドラゴンなんかに変身できないですよ」と俺。
いや、もしかして変身できるのか?
「変身とかしなくていいから、ちょっと掘ってみ」と樹さん、俺の手を取り壁へと向かう。
掘るって素手かよ! この鉄板みたいに硬い壁を?
「ど、道具とかないんですか?」と俺。
壁、リュウキみたいな爪を持っていれば別だけど、とても人間の手が刺さるとは思えない。
「ここ、物質的な空間じゃないから。掘るイメージだけあれば大丈夫だから」と樹さん。
どういうことかよくわからないけど、樹さん、俺の手を取り壁へと向ける。
この人、強引な性格だな……。
樹さん、俺の手を壁に突き刺そうとする。
なんとなく抵抗してしまう俺。
「ちょっと、抵抗しないでよ」樹さん。
「でも」と躊躇する俺。
「いいから、手を振る!」
怒った。怖い……。
しかたない、指先だけめりこませてみるか。
俺、壁に指先をあてる。
ん? なんてことなく壁にめりこむ俺の指先。
なんだ、生クリームみたいに柔らかいじゃないか。
こんなんなら、掘り進めること簡単なんじゃないか?
よっという感じにめり込ませてから手を振る俺。
……。