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家に入れた

身分がわかったようで、ようやく縄をほどかれた俺。ひとまず麗の部屋に入れられる。

茜さんと麗の会話から、どうやらおじは長女の茜さんと次女の樹さんには俺が来ることを伝えてあったらしい。

叔父は、茜さん達から麗に連絡が行くと思ったようである。

しかし、茜さんと樹さんは「叔父が麗に連絡する」と思ったようで、結局、誰も麗に俺が来ることを伝えていなかったのである。

俺が風雨をしのげるかどうかの分かれ目なので、連絡はしっかりして欲しい……。

ところで、麗は三女なのだが、もう一人縁えにしという妹がいる。

こういうことである。

長女=茜(あかね・20歳)大学生

次女=樹(いつき・18歳)大学生

三女=麗(うらら・16歳)高校生

四女=縁(えにし・14歳)中学生

あいうえお順らしい。「あ」かね、「い」つき、「う」らら、「え」にし。五人目が生まれたら「お」から始まるのか。「お」から始まる漢字一文字で読みが三文字……、「おわり」?

縁……。記憶がない。俺が6歳くらいの時に会っているはずだから、向こうは4歳くらいか。向こうも覚えていないだろうな。

このアパートは4部屋あるのだが、今は4姉妹がそれぞれの部屋に住んでいる。

少し前までは麗と縁が一緒に住んでいたのだが、縁も自分の部屋が欲しい、ということで、麗が部屋を移ったとのことである。……、タイミングが悪い……。

肩身の狭い俺。しかし、他に行く宛なしである。

貯金、財産、たいしてない。俺の父親の病気治療で失ったのだ。

「困ったな」と麗、腕を組む。

部屋には俺と麗と茜さん。

和室にフローリングという変な組み合わせの部屋。小さいテーブルを囲んで座る俺達。

「私が縁のところに戻るか」と麗、渋い顔をして言う。

俺をどこに住まわせるのか思案しているらしい。

「他に、部屋、ないですか?」と俺、訊ねる。

おじさんは不動産持ちのはずである。他に部屋を持っているはずなのだ。

「だめよ。他は事業用だから、家賃とられるわよ」と茜さん。

「しかも、高級マンションだから家賃、高いわよ」と麗。

事業用は高級なのに、家族はぼろアパートなのか……。

「うちの父親はケチだから。ここ以外には住まわせてくれないと思うわ」と茜さん。

バイトして安アパート探すか。しかし、金が貯まるまでは住まわせてもらいたい。

「いいじゃない。ここに住めば」と茜さん。

「私が縁のところに戻るってこと?」と麗、あからさまに嫌そうな顔。

「いや、一緒に住めばいいじゃない。あなた達」茜さん、言うとキッチンへ。

「え!? だってそれは……」と麗。

俺としても、それは困る。なんか、困る。

「一緒にお風呂入っていた仲なんだから、いいでしょ」とポットに水を入れながら言う茜さん。

それ、子供の頃の話でしょう……。

茜さん、ティーポットとカップを三つ、トレーに乗せて持ってくる。

ん? お湯を沸かした感じがなかったのだが。元から沸いていたのか?

「だって、私の部屋はリュウキがいるから駄目でしょ」と茜さん。

リュウキって誰だろ? 彼氏か? 

「樹の部屋だと虎君の身が危ないし……」

危ないって、どう危ないんだ……。

「縁の部屋だと、あの子が許さないだろうから駄目で」

俺も、中学生の女の子と一緒の部屋はやだ。なんか、やだ。

「消去法でこの部屋になる。めでたしめでたし」にこやかな茜さん。

めでたしか?

「めでたくな~~い!」立ち上がって叫ぶ麗。

わかっているけど、どうしたらいいんだよ……。困り顔の俺。

「着替えとか見られたらどうするのよ!」と麗。

すでに見ているが……。思わず先ほどの下着姿の麗を思い出してしまう。

「ついでに付き合えばいいじゃない」と茜さん。

茜さん……。付き合うのが「ついで」かよ。

麗、赤くなる。なんだろ、脈ありなのか? もしかして、

このまま付き合って藤村家の財産を受け継げば安泰か?

快適に生活することが今の悲願である俺。手段は問わない気持ちになっている。

「もっと、男らしい人がいい……」とつぶやく麗。

撃沈された……。期待はしてなかったが、なんかショックだな。

「とにかく、お茶でも飲んでゆっくり考えましょう」と苦笑いの茜さん。

ゆっくりしている場合なのか? それにしても、ポットの中は、やはりただの水らしい。湯沸かし機能がついているようにも思えない。

横にティーバックがあるので、それを後で入れるみたいだ。

アイスティー? でも、あれって、一度お湯だったのを冷ますのではないのか?

茜さん、ティーバックをポットの中に入れた。

水で抽出? あんまり味、濃くならなくないか?

茜さん、ポットに向かって指をくるりと回しながら何やらつぶやく。

ポットの口から湯気? 中の水がお湯になった。

俺、思わず後ずさってしまった。何? 何が起きたんだ?

「なんで驚いているの? 虎君」と茜さん、きょとんとしている。

「いや、いきなり水がお湯になったから」と俺。

「お湯にする魔法なんて初歩じゃない」と茜さん。

「魔法?」と俺、首を傾げる。

「だって、私たち魔法使いだもの。え? 知らなかったの!?」と驚いた顔の麗。

魔法使い? って何のこと?

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