雅ちゃん……?
「それで、全部配り終ったんじゃな?」
じいさんはコタツに入り、ミカンを剥きながら聞く。
「うん。実質30分で終ったんだけど……」
俺もミカンを口に運ぶ。
カイとトナは外で居るそうだ。カイがやけに緊張してたのは気のせいか?
それにしても………。おかしな光景だ。
サンタの格好した高校生とじいさんがコタツに入り、ミカンを食べている。
俺は目の前に居るじいさんを見る。
この人、これでも子どもに夢と希望を与えてるんだよなぁ。
普段は酒屋のじいさん……でも、その実態はサンタクロース!……だなんて、分かったら夢もなにも無いかもな……。
そんな事を思っていると、ふいにじいさんが話しかけてきた。
「大きくなったな、雅ちゃん」
はいっ?
「じいさん?」
「ワシが雅ちゃんにプレゼントあげ始めたのはいつからかな……。確か10年前からだから……7歳か」
「じいさん、俺のこと知ってるの?」
「勿論。この道10年じゃからな。色々知ってるわい」
……年数的には微妙だな……。
「でも、プレゼントってばらまくんだろ?いちいち分かるのか?」
「ばらまかんかったよ。10年前は」
「なんで?」
「方法はな、4年ごとに変わるんじゃよ。ちなみに、ワールドカップと同じ年にな」
あ、オリンピックじゃないんだ。
「その時はナゼか1件1件手作業じゃった」
「魔法が使えなかったのか?」
「本部の厳正な協議により、あみだくじで決めたんじゃ」
「いや……厳正な結果があみだって……」
「ワシは全自動配達が良かったのう……。全部コンピュータがやってくれるから4年間休めたんじゃが……あと1本右に線があったらのう……」
知らないよ。子どもの夢も何もあったもんじゃねぇな。
「ま、その時雅ちゃんが最後の子どもだったんじゃ」
「そうなんだ」
「大きくなったのう。あれから方法が変わっても、必ず雅ちゃんの家には直接行ったもんじゃ」
「……じいさん」
「サンタさんと呼びなさい」
「サンタのじいさん……」
「……」
ヤバイ、俺としたことが、涙が出そうになったぜ…。じいさん、チョット誤解してたよ。ありがとうな。
「でもさ、一応今日が初対面なんだし……雅ちゃんはチョット……」
「雅ちゃんが初対面でもワシは10年前から知っているぞ」
「あっそ……」
この際どうでも良いか。
じいさん、ありがとう。
「雅ちゃんは毎年お菓子を置いてくれたじゃろ?毎年楽しみだったんじゃ。5年前に終わったのが寂しいのう」
「……チョット待ってくれ、俺の家に直接来た理由は……」
「疲れた後のお菓子は格別じゃったなぁ」
……あっそ……。こーゆーオチかい……。
じいさんはやっぱりこういう人だったと実感した。
皆様こんにちは、快丈凪です。
突然ですが、次で最終回です!そして更新は明日の予定です。…クリスマスにこだわってみます(苦笑)。
ではまた次回!(*^−^)ノ