人さわがせサンタ
俺たちは帰ることにした。
ソリに揺られていた俺は、とあることに気づいた。
「カイとトナって、付き合ってんの?」
「なっ、なんやねん!いきなり……」
挙動不振のカイ。
「私たちは仕事上のパートナーなだけです」
動揺もせず、あっさりと言うトナ。
「せっ……せや……。パートナーや」
少し寂しそうなカイ。
……ったく……。バレバレだよ。なんだかほっとけないなぁ……。
そんな事を思っていると、家に着いてしまった。俺はベランダに降り立つ。
コツコツ……とガラス窓を叩く。
……反応が無い。
まさか、熟睡中とかじゃないだろうな……!
ガラス窓を右に引いてみる。
ガチャッ
おいおい、開いたよ……。戸締まりしとけって言ったのに……。
俺は中へ入る。
明かりはつけっぱなし。じいさんは案の定熟睡中。
……人が寒いなかオマエの仕事してきたのに……。
ぶん殴りたかったが、お年よりに優しい町づくりを推進している俺は思いとどまる。
ふとテーブルを見た。
薬のビンと水の入ったコップ。
薬、分かったんだ……と思い、片づけようと持ち上げたら……
「ゲッ、これ、睡眠薬じゃねぇか!」
一時期不眠症だった俺が随分前に買った薬だ。
……だから寝てんのかよ……。っていうか、これは別の戸棚の奥底に入れといたから簡単に分からないハズだけど……。
やっぱり叩き起こしたかったが、弱きものに優しく……がモットーの俺には出来るわけもなく、今にも飛び出しそうなゲンコツを必死で抑えた。
子どもみたいにスヤスヤ寝ているおじいさん。
……お前……、覚えてろよ……あと3年したら無期限で酒代タダにしてもらうからなっ!
「雅耶〜?じいさん、どうやぁ?」
「……寝てる」
「はぁ〜?叩き起こしたれ!」
「でも、お年よりだし」
「あかんなぁ、甘やかしは本人の為にならへん。ま、見ててみ!」
そう言いながら、カイはズケズケと中へやって来たと思ったら、いきなり角でじいさんをはたいた。
「ええ加減にせんかい、ワレェ!いつまで寝とんねんっ!」
コワイッ!声だけなら借金の取り立てみたいだ……。
するとおじいさんはベットの柵に顔面をぶつけ、
「痛いじゃないか!ワシ、病人なのに……」
「ずっと寝とったんかいっ?」
「だって、ワシ、病人じゃし」
ケロッと言うじいさん。
「薬、違ってたよ?睡眠薬飲んだだろ」
俺は怒りを通り越し、呆れて言った。
「うん?そうか?良くなったがのう」
ガッツポーズして見せるじいさん。
ま、良いよ。よくなったらさ。俺は元気なお年よりを心から応援してますから。
俺は無邪気な子どもを見守るような穏やかな気持ちで、無邪気なじいさんを見守っていた。