ファンタジックなプレゼント配り
「あの……ばらまくとは?」
「言ったとおり。下に放り投げるんや」
「……届かないんじゃないの?むしろ下が道路なら、罪になるのでは?」
「じゃあ、試しに一つ落としてみぃ」
「……俺が?」
「あんさんがサンタやろ!」
……臨時のね……。っていうかこれで車が事故ったら俺のせいかなぁ……。でも、これってなかば強制的だし……ちょっとは罪、軽くならないかなぁ……。
「雅耶!うじうじしとらんで早よう覚悟決めんかいっ!」
「あー、もう、分かったよ!そのかわり俺が捕まったらお前もあのじいさんも共犯で捕まるからなっ!」
ヤケになった俺は、少し大きめのプレゼントをぶん投げた。
―……あれ?
プレゼントは落ちなかった。
落ちずに目の前から消えた。
「あの……一体……?」
「せやから、始めに言ったやろ。大丈夫やて」
「状況が全く理解出来ないんだけど……」
「見たやろ?あの通りや」
いや、見て分からないから聞いたんだけど?っていうかこれじゃあコメディーじゃなくでファンタジーだよ!ファンタジック過ぎるよ!
「カイでは上手く説明出来ないので、私がご説明します」
見かねたトナが言う。
「なぜプレゼントが落ちずに消えたかといいますと、簡単にいえば魔法だからです」
ストレートだなぁ!っていうか、その時点でコメディーじゃないよ!
「簡単な様で余計ややこしいんだけど……」
「皆さん、サンタが配るおもちゃとお店で買うおもちゃは同じだと誤解されてますが実は違います。サンタの作るおもちゃには科学的に言い表せない、魂の様なものがあるんです」
「魂?」
「そうです。そしてプレゼントとなり、我々の手元を離れると自分の新しい持ち主の元へワープ出来ます」
おいおい……何でもアリだな……。
「でも、それなら圧倒的にその辺のおもちゃと違うからみんな分かるんじゃないの?」
「実は、持ち主の元へ行くと魔法がとけるんです。なので関係者以外は気づかないんです」
「へぇ……。疑問点は一杯あるけど、無理矢理分かったよ」
「分かって頂けて幸いです」
「さっすがはトナやなぁ!ワシは細々した説明が苦手でなぁ!習うより慣れろ精神なんや」
「その大雑把な性格、いつか改めないと足元をすくわれますよ」
クールなトナ。
……やっぱりカイみたいなのにはこういう役が必要だな……。
2匹のトナカイの様子を見ながら、俺はそんなことを思った。