目的を達成するべしっ!!
「おぉっと!沈んでるヒマはあらへんで!雅耶、トナ、仕事はじめよか!」
しばらく感傷的になっていた俺たちにカイが呼びかける。
「……そうですね。あと3時間切りましたし……」
納得するトナ。
ふと、俺は不思議に思った。
「あのさ、あと3時間って25日の2時になるんだけど……今日中じゃなくても良い訳?」
「あ、そこは心配なく。プレゼントは2時までに配るんや」
軽く言うカイ。
「…なんで2時なの?」
「そんなん決まっとるやろ。草木も眠る牛みつどきまでに配るんや。草や木まで寝てるのに、わてらが寝られへんのはしゃくやからのぉ」
カイの真面目な声。
……結局は寝たいだけ?……っていうかそれは物の例えじゃない?間に受けるなよ……。
「それだけの理由だけでなく、サンタのプレゼント配布に関する法律の第11条にも、サンタはいかなる理由が有ろうともプレゼントは25日の午前2時までに配り終えること。…と定められています」
相変わらずの冷静な声で言うトナ。
いや、法律とか知らないけどね。そもそも何条あるんだよ…。っていうかマジでサンタは何者?
…なんだかついツッコミたくなる…。思えば、こいつらと関わってからつっこんでばっかだよ…ヤバイかも…。
…と冷静に分析する俺。
「とにかく、残りはまだ沢山あるんや。後ろの袋の中見てみぃ、雅耶」
見てみると確かに、後ろの荷物置き場の袋はかなり膨れている。あの様子だと簡単に終りそうにない。
すると、そんな俺の気持を察してか、トナが言った。
「見た目は沢山ありますけど、配るにはあまり時間はかかりませんからご心配なく、雅耶さん」
「…そうなんだ…でもどうやって配るの?」
思えばまだ詳しい説明を受けていなかった。
それを聞いてカイは思い出したように言った。
「あ、せやなぁ。説明せんとあかんな。よし、まず袋から緑色の包みが入ったプレゼントを出して」
言われて中を見ると、大きな袋の中のプレゼントはさらに色ごとで分けてあった。
俺はその中から緑のプレゼントが4個入った袋を取り出した。
「取ったよ、カイ」
「じゃあ、それを持ったまんまで手すりにつかまっといて」
「……まさか……また無茶苦茶な運転するんじゃないよなぁ……」
「もうせんわ。ええから、はよつかまり」
「はーい……」
俺は言われるまま、手すりにつかまる。
すると、さっきよりゆったりとしたペースでソリが動きだした。
やがてソリは俺の町の中心部へ居た。町の真ん中の役場が見える。
するとソリは停止し、今度は少しずつ上へと登っていった。
「ねぇ、何する訳?」
「もう少し待って下さい。後で言いますので」
「……分かった」
俺は大人しく従う。
すると、ソリはかなり高い場所で止まった。高所恐怖症の人なら絶対に耐えられないだろうな……というぐらいの高さだ。さすがの俺も気が遠くなる。
「あのさ……そろそろ何するか教えてよ」
「せっかちやなぁ。歯がガタガタ鳴っとるで」
「鳴ってないっ!!」
「でも、足はガタガタ震えてますね。振動が伝ってきます」
トナがトドメの一言。
…はい、言い返せません。
横のカイは大爆笑。
「……あのさ……」
「分かった分かった。せやから話を聞かんかい」
「分かった。それで?どうやって配るのさ?」
「簡単や。プレゼントをばらまくんや」
……ばらまく?
俺は改めて、自分が安請けあいだったと実感した。