あなたからMerry Christmas!!
ふと、時計を見ると日付はかわり0時半を過ぎていた。
「どれ……」
じいさんは立ち上がった。
「行くのか?」
俺はじいさんに聞く。
「駐留とはいえ一応サンタクロースだからな。トナとカイの面倒は最後までみてやらんとな。あの子たちがフィンランドへ旅立つのを見届けて、やっと今年のワシの役目は終るんじゃよ」
じいさんは誇らしそうに答えた。
「……そうか。最後に聞いて良いか?」
「うん?」
「トナとカイって名前つけたの、アンタ?」
「もちろん」
「それってやっぱり……」
「トナカイだからじゃ」
自信満々なじいさん。
「……そうかい」
なんか、もうどうでも良いや。
外に出ると、トナとカイの様子が変だった。そわそわしている。
「どうしたの?」
トナに聞いてみる。
「……。」
そっぽを向いて教えてくれない。
「カイ?」
「もう、どうでもええやろ!」
照れくさそうなカイ。
「来年は子どもも連れてくるのかのう?」
後ろからじいさんの声。
すると、2頭のそわそわはさっきよりも大きくなった。
……ん……?それってまさか……?
「さっ、さてはお前ら、俺がじいさんと話してる間にイチャイチャ&ラブラブしてたのか?」
「……まあな」
ボソッと言うカイ。
……おい……。これだとホントに恋人たちのクリスマスだよ……。
「でも、仕事上のパートナーって……」
トナに詰め寄る俺。
「……カイに……さっき……」
恥ずかしいのか、話し方にいつものキレが無い。
「告ったのか?!カイ!」
「……おう」
遠い目のカイ。
マジかよ。まさかトナカイに先越されるとは思ってなかったよ。
「……結局、俺の収穫は何にも無かったのか……」
がっくりと肩を落とし、うなだれる俺。
「いや、そんなことあらへんよ」
カイが明るく言う。
「えっ?何?なんかくれんの?」
パッと顔が明るくなる俺。
「雅ちゃんにはこれをあげよう」
じいさんが横から何かを差し出した。
それには"駐留サンタ公認カード"とあった。
「何?コレ?」
「読んで字のごとく。来年から正式に頼むぞ」
満面の笑みのじいさん。
「はっ?」
ちょっと待て、話が違うよ!嫌な予感がするよ!
「おめでとう、雅ちゃん!君もワシらの仲間じゃ!」
お――――い!!
「嘘だろ……?冗談だろ……?」
「雅ちゃん、手を組んだ時点でもう逃げられないよ」
怪しい笑みのじいさん。
にんまり笑うカイとトナ。
「でも、各都道府県にサンタは1人だろ?」
「そんなんで成り立つわけあらへんやろ。安心せぇ、サンタの助手ってカタチでならざっと30人はいるさかい、雅耶もその仲間やな」
俺は、気が遠くなった。
……つまり、来年も今日みたく無償でプレゼントをばらまけと?
「ま、詳しい話はまた来年の今の時期さ。また会おう、達者でなぁ!」
じいさんはそう言うと、家まで送ってもらうためにトナとカイのソリに乗り、空高く飛んでいった。
今の心境を説明するなら、詐欺にあったけどナゼかワクワクするカンジ。騙された!と思いつつ、来年のクリスマスが待ち遠しい俺がいた……。
そして一年後……
「本当にあってんのかい、雅耶!」
カイより一回りちかく小さめなオスのトナカイが聞いてくる。
「知らねぇよ!っていうか、お前らソリ引いてるなら調べとけよっ!」
「オレもクリスもはじめてなんや!そんな事まで気が回るかい!」
威勢のいい反論。
「ったく、そんなんでトナカイって言えるのかよ!マス!」
俺も負けじと反論。
「あの〜……」
か細い声で隣のメスのトナカイが話しかける。
こちらもトナよりひとまわり程小さかった。
「何?クリス?」
「あの……道、間違ってますよ……多分500メートル程行き過ぎです……」
「え゛っ……」
一時停止。
しばらく沈黙。
「マズイんじゃない?」
「マズイな!」
「マズイと思います……」
「よしっ、回れ右で引き返そう!マス、クリス、ヨロシク!」
「分かっとるわ!クリス、行くでっ!」
「ハイ……」
一年後、カイとトナの子供・双子のマスとクリスが俺のパートナーになり、俺はサンタの助手としてプレゼントを配っていた。ま、なんだかんだ言っても楽しいから良いけど。
マスとクリスの名前の由来?
そりゃあモチロン、『クリスマス』だから!
どうも、快丈です。遂に終わりました。ラストはなんとなく定番です(苦笑)
初めてコメディーを書きましたが、いい経験になりました。次はもっと勉強して今回以上に面白い話が書きたいです。
それでは皆様、またお会い出来る日を楽しみにしてます。ここまで読んで下さって本当にありがとうございました。