表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

寒空のホワイトクリスマス


日本人は不思議だ。


正月に初詣に行く。


盆がある。


そして何より…クリスマスがある。


一体どこまで脳天気なのか…。まぁ、俺もそれにあやかってる訳だけど。


今年はホワイトクリスマスだ。ちらちら雪が舞う。

心に余裕があれば喜べるかもしれないが、今の俺には無理だ。

昼過ぎからずっと立ちっぱなし。しかも路上でケーキを売ってる。今はただただ雪がうっとおしい。


「クリスマスケーキはいかがですか〜?特製のスペシャルケーキですよ!限定30個があと3個です!」


っていうか、早く買えよ。売らねえと俺が帰れないんだよ。



「あと3個ですよ〜」

俺が寒いだろ。早く買えよ。買う気ねぇならこっち見て笑うな。こっちは好きでサンタの格好してんじゃねぇんだよ。


そうしていると、サラリーマン風のオジさんがやって来た。

「ケーキ下さい」



この時間帯…ということは、残業かい?クリスマスなのにお互いご苦労だね。


「いらっしゃいませ、チョコクリームが2個でホイップクリームが1個ありますが?」

俺はとびきりの営業スマイル。

「えっ…参ったな…恵美(めぐみ)はどっちが良いだろう…」

そう言って考え込むオジさん。



おいおい、めちゃくちゃでっかく2種類って書いてるだろ!どっちでも良いから!

「えーっと…」

オジさんは2種類のケーキを見比べる。よく見ると、右手に大きな包み。…良いねぇ。待ってくれてる人が居るんだ。

かなり悩むオジさん。そして3分後、家に電話して結局チョコクリームのケーキを買って行った。

…最初からそうしてくれよ。


そのあと、感じの良いおばあさんがケーキを買って行った。孫がチョコクリームが好きなんだって。

…できればもっと早く買いに来ててほしかったよ。


「さて…」


あと一つ。

もう9時。…誰か買うかなぁ…。いっそのこと俺が買うか?…でもそれだとバイトの意味が…


そんな自問自答をしていると、急に話しかけられた。


「サンタさん、下さいな」

顔を上げると…

義昭(よしあき)…」

ニヤニヤした悪友の顔があった。

…なんでお前が…。



(かおる)とバイトしてるんだろ?さっき会った」

「…薫は?売れてた?」

「いや、あと6個ぐらいあったよ。なによりあっちはトナカイだもんな」

笑う義昭。

…笑えん…6個って…帰れるのかよ?

「そ…そぉ?…なんで俺の所で買うの?」

…6個もあったならそっちで買ってやれよ…。

「それがさ、薫と別れた後にオフクロから電話あってさ、急にケーキ買って来いって!引き返すのもめんどかったから雅耶(まさや)んとこで買うことにしたんだ!無かったらどうしようかと思ったよ」

明るく笑う義昭。

「ははは…そっか…」

引きつった笑いの俺。



薫…クリスマスまで不幸な男め…。

そんな事を考えながら俺は義昭にケーキを渡した。義昭は代金を俺に渡した。

「じゃーなー!また新学期になー」

笑いながら手を振る義昭。

…言うなよ。俺がこんな格好でクリスマスにケーキ売ってただなんて!

俺は急いで店じまいをして薫の元に向かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ