再開と言う名の違和感
<日時:2011/4/7午前>
<場所:私立援軽学院大学正門前(正門から学生会館まで100m以上の桜並木)>
「広すぎるだろ・・・・・」
視野のすべてを洒落た赤レンガの建物が占領している。
北海道のただっぴろい大地を、有効利用しようというもくろみがあるのかもしれないが、建物同士の間隔が広いため、学生からすれば迷惑なものである。
移動手段は自転車なので、休み時間はさながら発展途上国のような光景が広がる。
「いい加減慣れたら?そのリアクションもう3回目よ。」
背後から落ち着いた優しい声が聞こえる。
「3日連続で言いたくなるほどでかいんだよ、この大学が。」「国立大学は敷地狭いもんね。とくに綾人がいた大学は。」
裕香とは幼馴染みで小中高と同じ学校だったが、俺が関西の大学へ進学したことで2年間連絡すらろくに取っていなかった。
距離が遠かったっていうのは言い訳で、俺は電話やメールってやつがどうも苦手なのである。
久しぶりに会ったからだろうか、3日前の編入初日に真っ先に声をかけてくれた幼馴染みは、2年前とは少し感じが違った。
そりゃ、2年もあれば見た目が多少変わるのは当然だが、そういうことではない。
何というか、こう
「無理をしているような・・・・・」
「無理?そんなに1限の授業難しかったっけ?」不思議そうにこっちを見上げる裕香。
「あ・・・・・いや、な、なんだと・・・・・俺の幼馴染みが少し会わないうちに人の心を読める特殊能力を身に付けていたとは・・・・・」
「ん?何言ってるの?今"無理"がなんとかって口走ってたよ。」
こんな見事なボケをかましても、真面目な返答が返ってくる、または華麗にスルーってのがいつものパターンだ。
この感じは2年前と変わらない。
俺の思い過ごしなのだろうか・・・・・。
とりあえず"幼馴染みに対する違和感"は胸の片隅にでも置いていくことにしよう。
「早くしたいと1限遅刻しちゃうよ!」
桜並木の間を走っていく幼馴染みがとても懐かしく感じる。
・・・・・1限の授業は何だっただろう。