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苦手なものって、みんなある

「―――じゃあ、次の文章を英訳して。[窓を開けても構いませんか?]」


ちなみに解答例…{Do you mind me opening the window?}




・霧谷君の解答…「Window,Are You OK?」

訳:(お前は大丈夫か?窓よ…)




「――霧谷君、私、急用を思い出したからこれで…」


「待って!真面目にやってる!マジで真面目にやってるから!」




立ち上がってその場を去ろうとする私の足にすがりつく霧谷君。

…彼は本当に義務教育の過程を終えたのかしら?




「頼む!お前しか頼れるやつがいな…って、うおっ!」



彼が目線を上げた瞬間、何故か突然私から目をそらした。


……あぁ、なるほど。

たしかにその角度からなら…。




「見えたのね?スカートの中…」


「め、滅相もない…」


「嘘ね」


「嘘じゃねぇ!」


「見たでしょ」


「見てねぇ!」


「白の」


「ウサギ柄!……はっ、しまっ…!!」



どうやら彼はつくづく嘘をつけない性格らしい。




「じゃあその記憶も真っ白に消し飛ばしてしまいましょうか…」


「いや、観月さん…?マジで目が怖いんだけどげふぅっ!!!」




とりあえず制裁として彼の顔面を蹴り飛ばす。何かゴキッといい音がしたけど、気にしないでおく。



「あら霧谷君、鼻血が出てるわよ?…そんなに興奮したの?」


「たった今のお前の行動を思い返してみろっ!!」


「まぁいいわ。鼻血が止まるまで休憩にしましょう」


「くそっ…、悪気はないのに…!」






――しばらくすると、鼻にティッシュを詰めた霧谷君が話しかけてきた。




「なぁ、そういえば俺、観月のアドレス知らないよな?」


「え…?」


「いや、離れても連絡とれるように、メールアドレスくらい知っておいた方がいいよなーって」




なるほど。たしかに、これから離ればなれになるのだから、メールでやりとりしたいのも当然だと思う。


だけど…、




「……ないわ」


「は?」


「……私、携帯持ってないから」


「そ、そうなのか?じゃあ、パソコンでも…」


「……私、パソコンも使えないから」




………沈黙。二人ともしばらく固まった。


そして霧谷君が私を指さし、



「――っなんで今のご時世、携帯やパソコンの一つも使えないんだよ!ありえねぇだろ!!」


「仕方ないでしょ!あんなボタン一つで全てが決まってしまう代物なんて、危なっかしくて使えるわけないじゃない!!」



パソコンなんて電源つけるだけで精一杯よ!!

全く、どうして人類というのは何でもかんでも機械に依存してしまうのかしら―――



「もしかしなくても、観月って機械音痴なのか…?」



うっ、人が気にしていることをストレートに言うなんて……



「そ、そんなことないわよ!絶対!!」


「じゃあ、どんな電化製品なら使えるんだよ?」


「……ま、魔法瓶とか」


「それは断じて電化製品とは言わん!!」


「あー、もう、うるさいうるさい!!勉強再開するわよ!!」




自分に不利な話題は強制終了。今は勉強の方が大事なんだからっ!!






―――そして三時間ほどが経過。




「あら、もうこんな時間…。今日はここまでね」


「本当だ。あー、久しぶりに勉強して疲れたー…」


「続きは明日にしましょう」


「う…、明日もか…」


「あなたが頼んできたことでしょ?嫌なら教えてあげないわよ」


「ごめんなさいお願いします」



まぁ、頼まれなくても教えるけど…。

だって、その方が……長い時間、一緒に居られるから……。




「どうした観月?急にボーッとして」


「な、何でもないわよ……この変態」


「なっ…!だから、スカートの件は悪気はなかったって言ってるだろ!」


「……あのいかがわしい本については?」


「そ、それは…」


「変態っ」




まるでおしどり夫婦のように仲良く会話をしながら玄関まで来ると、妹さんが見送りに来てくれた。




「あっ、よかったらまたいらして下さい。その時は、ちゃんとおもてなしするのでっ」


「えぇ、ぜひそうさせてもらうわ」




本当によくできた妹さんだな、と感心していると、



「あーあ、私もこんなしっかりしたお姉ちゃん欲しかったなー」



ふふっ、嬉しいことを言ってくれるわね。私もこんな素直な妹なら大歓迎……



「楓、安心しろ!そのうちこいつはお義姉さんになってるからな!」


「なっ…!!」



この人はどうしてこんな恥ずかしいことを臆面もなく言えるの…!?



「え?どういうこと?」


「つまりだな、そのうち俺がこいつを…」


グシャッ!!


「っいぃ痛たたたたぁ!!!観月、足踏んでるって!!」




これ以上余計なことを言わないように、彼の足を踏み抜いて黙らせる。

本当にこの馬鹿は…!!




「それじゃ、お邪魔しました」


「あ、はいっ!ほらお兄ちゃん、送ってあげなよ!」


「そうしたいのはやまやまだが、足が…。み、観月、待てって!!」


「うるさい、馬鹿!!」




片足を引きずりながら霧谷君が追いついてきたので、仕方なく歩くペースを合わせてあげることにした。



次に余計なことを口走ったら、必ず仕留める。


そう、心に誓って。

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