その武器の名前は
俺は騎士だ。
騎士として国と民を守らなければならない。
だから、人々を襲うモンスターや犯罪集団などと剣をまじえる日常を送っている。
騎士として必要なことは多い。
己の肉体を高めるために修行をこなし、剣や盾の手入れをかかさず。
健康であるために、食事や睡眠にも気を使う。
それに、騎士というものは、なるためには狭き門を通らなければならないため、相応のふるまいも求められる。
礼儀作法や喋り方には気を付けなければならない。
そんな俺は騎士として生き、騎士として死ぬのだとずっと思っていた。
友人は鍛冶師になり、その道を一途に進むと豪語していたから、その影響だろう。
今も騎士として生きたいと、そう思っているが、一時期気持ちが揺らいだ事がある。
それは騎士になって数か月経過した時のこと。
初めて大きな任務を任された時。
俺は仲間たちと共に夜盗の巣窟に赴き、囚われていた女性達を救い出した。
その後、その女性のうちの一人と親しくなり、互いに想いを寄せあうようになった。
彼女はどうだったか知らないが、初めての恋だったから、舞い上がっていた。
春は一緒に花を愛で、秋は共に月を見上げ、冬は静かに雪が降る中を過ごした。
夏だけは、大規模任務で一緒にいられなかったが。
あの頃は、感情に振り回されるばかりで、ずいぶんとみっともない振舞をしてしまった。
過去のことを思い出して恥の感情を抱かない時は少ない。
恋に夢中になった俺は、彼女と生きるために騎士をやめようかと考えたことがあった。
剣を振るばかりの毎日を送っていては、彼女と共に過ごすことはできない。
そう思って、いつ辞表を書こうかと頭を悩ませていた。
けれどそんな悩みを彼女に察知されたのだろう。
彼女は別れようと言い出した。
彼女が好きになったのは、騎士として生きる俺であって、そうでない俺ではないのだと。
そうはっきりと言われた。
俺はショックだった。
失恋した痛みを抱えて、三日も騎士の仕事を休んでしまったくらいだ。
あれでよく解雇にならなかったものだと思う。
俺は失意のどん底に突き落とされたが、彼女への愛は消えなかった。
だから、共に生きられないとしても、これからも騎士でいようと思ったのだ。
彼女に誇れる自分で。
そんな俺のために鍛冶師の友人が新しい武器を作ってくれた。
俺が大切なことを忘れないようにと、花の意匠のある、月のような淡い光を放つ、雪のように白い剣だ。
雪月花と名付けたそれは、俺が俺が愚かだった証を一心にその身を宿した武器。
これからの騎士としての人生を歩んでいくのには、これ以上ないほどふさわしい武器だ。




