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その武器の名前は

作者: 反逆の猫
掲載日:2026/07/04



 俺は騎士だ。


 騎士として国と民を守らなければならない。


 だから、人々を襲うモンスターや犯罪集団などと剣をまじえる日常を送っている。


 騎士として必要なことは多い。


 己の肉体を高めるために修行をこなし、剣や盾の手入れをかかさず。


 健康であるために、食事や睡眠にも気を使う。


 それに、騎士というものは、なるためには狭き門を通らなければならないため、相応のふるまいも求められる。


 礼儀作法や喋り方には気を付けなければならない。





 そんな俺は騎士として生き、騎士として死ぬのだとずっと思っていた。


 友人は鍛冶師になり、その道を一途に進むと豪語していたから、その影響だろう。


 今も騎士として生きたいと、そう思っているが、一時期気持ちが揺らいだ事がある。


 それは騎士になって数か月経過した時のこと。


 初めて大きな任務を任された時。


 俺は仲間たちと共に夜盗の巣窟に赴き、囚われていた女性達を救い出した。


 その後、その女性のうちの一人と親しくなり、互いに想いを寄せあうようになった。


 彼女はどうだったか知らないが、初めての恋だったから、舞い上がっていた。


 春は一緒に花を愛で、秋は共に月を見上げ、冬は静かに雪が降る中を過ごした。


 夏だけは、大規模任務で一緒にいられなかったが。


 あの頃は、感情に振り回されるばかりで、ずいぶんとみっともない振舞をしてしまった。


 過去のことを思い出して恥の感情を抱かない時は少ない。





 恋に夢中になった俺は、彼女と生きるために騎士をやめようかと考えたことがあった。


 剣を振るばかりの毎日を送っていては、彼女と共に過ごすことはできない。


 そう思って、いつ辞表を書こうかと頭を悩ませていた。


 けれどそんな悩みを彼女に察知されたのだろう。


 彼女は別れようと言い出した。


 彼女が好きになったのは、騎士として生きる俺であって、そうでない俺ではないのだと。


 そうはっきりと言われた。


 俺はショックだった。


 失恋した痛みを抱えて、三日も騎士の仕事を休んでしまったくらいだ。


 あれでよく解雇にならなかったものだと思う。





 俺は失意のどん底に突き落とされたが、彼女への愛は消えなかった。


 だから、共に生きられないとしても、これからも騎士でいようと思ったのだ。


 彼女に誇れる自分で。


 そんな俺のために鍛冶師の友人が新しい武器を作ってくれた。


 俺が大切なことを忘れないようにと、花の意匠のある、月のような淡い光を放つ、雪のように白い剣だ。


 雪月花と名付けたそれは、俺が俺が愚かだった証を一心にその身を宿した武器。


 これからの騎士としての人生を歩んでいくのには、これ以上ないほどふさわしい武器だ。



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