【ニホンマチ】にいらっしゃい
どこかの街の寂れた路地裏に…
森の奥の小さな洞穴に…
城の中の地下牢の中にまで…
その場所はひっそりと存在するらしい。
どんな場所なのか、聞こえてくるのはおとぎ話のような話ばかり。
暖かくて、いい香りが漂ってて、ずっと満腹でいられる、楽園のような場所。
誰だって行ってみたいとは思うけれど、
行き方を誰も知らない場所。
そう、その場所の名は【ニホンマチ】。
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「お前なんてさっさと魔獣にでも食われてしまえ!!」
国と国との間の広い森。
どこかの国の兵士が馬車からみすぼらしい少女を放り投げ去っていく。
「…ッイタ…」
私の名前はミレイ。
少し前まで教会でシスターの1人として働いていたんだけど、気づいたら国外追放。
「…はぁ、もうここで死ぬのね。まだ、死にたくなかったなぁ。おかあさん、おとうさん、元気かな…」
国外追放とはいってもほぼ生きることは不可能なノマの森に追放されたということは、
そういうこと。
…もっと楽しいことしたかったな。
『グググゥ』
ヒィッ!ベアドンだ!
そりゃ、いるよねノマの森だもの。
私、あれに喰われるのね…
せめて、イタクないよいにひっ
『パンっ!』
とおももいにたべ…え?なに?
『………ばふん。』
ベアドンが倒れた…?
「お嬢ちゃん、大丈夫?」
「え、貴女が、あれを?」
「まぁ、そんなところよ。
…あれ?お嬢ちゃんどっかでみたことある顔ね?」
「あ、いや、気のせいでは…?
…えっ!紙!!」
罪人だとしれたら困ると思い誤魔化そうとしたところ、
ベアドンを倒したおば様が紙の束を取り出した。
紙だ!
あの厳重に使用が管理されている高級の!!
「あ~、お嬢ちゃんミレイちゃんか!」
私が心底驚いていることなんて、気にしていないかのように紙を私に見せつけてくる。
え?これ、私の似顔絵ですか?
上手すぎませんかね?
しかも、秒で身元がバレてしまいましたね?
「まぁ、なんてかわいそうに。こんなにボロボロになって、あげくにこんな場所に捨てられて。あー、いくとこないなら、うちにきなさい。冤罪なんてヒドイもんだね。」
え、冤罪なんですか私?
というか貴女はどなた?
とにかく私を保護して下さると思って良いですか?
はい、ついていかせて頂きます。
「ほら、ここが私の住む【ニホンマチ ノマの森】よ。」
森の中を少し歩くと小さな集落が見えてきた。
どこにでもありそうな街だけれど、
ここってノマの森ですよね?
こんなところに集落があったんですね。
…え、今、【ニホンマチ】っていいました。
あの!?
「あぁ、知っているのかい?【ニホンマチ ノマの森】だよ。あぁ、あそこが役所で、あそこがコンビニ。向こうの方にキレイなコウエンもあって学校もあるんだ、あとで案内してあげるよ。」
おば様は私に街の説明をしながら歩いていく。
え?コン…ビニ?コウエ…ン?
なんですかそれ?
「で、ここが私の家だよ。おあがり。」
おば様が指したのは、小さくてかわいらしいお家だった。
お、おじゃまします…。
「そうだね、とりあえずシャワー入浴びといで。その間に何か美味しいもの作っておくから。」
え…?
「あ、ごめんね。とまどわせたかい?
押しが強すぎるから気を付けた方がいいって友達にも言われるんだよ。」
いえ、大丈夫です。
むしろ、ありがとうございます。
「そういってもらえて、嬉しいよ。シャワーはつきあたりだよ。使い方は分かるかい?あったまるんだよ。」
はい、大丈夫です。
ありがとうございます。
あの人はいったい何者なんだろう…?
しかも【ニホンマチ】ってあの??
………あ、そうか、私、生きてるんだぁ。
うっ…ウッ、、よかったぁッ…
…お湯、あったかいよ。
シャワーからあがると新しい服が置かれていた。
ありがとう、おば様…。
ん…?
いい匂い。
「あら、いい顔になったじゃない。
さぁ、すわって。」
おば様の声が優しい。
机に並べてくれてあった真っ白いご飯を食べる。
おいしい。あったかい。いきかえる。
「ミレイちゃんはご飯が好きかな?
お味噌汁とかも好きかな?
んー、じゃぁ、お魚も焼こうか?」
いえ、大丈夫です。
たぶんそんなに食べられません!
でも、おば様のお料理、全部美味しそうです。
ほんとうに、全部。
「ミレイちゃん、あなた、行くとこないならここにいてもいいのよ。」
え?
「実はね、おばさんも昔、ここで暮らしていた人に助けられたの。
だから、もし、あなたが困っているならって。」
おかあさんとおとうさん…
「それも分かるわ。でも、今は、おすすめしないわ、おばさん。」
うん、分かってる。
いつか会いに行ける。
うん、絶対。
よろしくお願いします。
「うん、よかった。こちらこそよろしくね。
じゃぁ、今日はもう休みましょう。
この街はちょっと変わってるところも多いからきっと楽しいわよ。」
次の日。
おば様、『楽しいわよ』どころの話ではありません!
『テッポウ』ってなんですか?
『シンブン』って紙をこんなに使って大丈夫なんですか?
おば様、もう、笑いすぎです!
「ハハハハッ!
はぁ。ミレイちゃんといるのは楽しいね。
じゃぁそろそろ、役所にいって手続きしようか。
なに、難しいことないさ。」
手続き?
「あ、トウル君、この子うちに来ることになったミレイちゃんなんだけどさ、ジュウミンヒョウつくりたくて。」
おば様が、役所の窓口にいた男性に声をかける。
かっこいい…
「あ、承知しました。では、ミレイさんこちらへ。
分かる範囲で結構ですのでこの紙に名前や前の住所をご記入ください。
あ、文字は書けますでしょうか?」
え、私ですか…!
はい、一応は書けます。
『…カリカリ』
「…綺麗な字ですね…、あ、いや、申し訳ありません。
なんでもないです。」
いえ、そんな、
…大丈夫です。…ありがとうございます。
おば様、その含みのある笑みはなんでしょうか?
「これで手続きは完了です。
ミブンショウメイショができ次第お知らせしますので、また、こちらにお越し下さい。
ようこそ、【ニホンマチ】へ。」
「…ミレイちゃん、さっきの男の子のことかっこいいって思ったでしょ。
あの子はハルちゃんちの息子さんなのよね、私のおともだちの。もし、よかったら、おばさん!」
おば様、そちらに関しては何もしないで下さいましね!!?
キラキラしているところ、申し訳ないですが!
ただ、かっこいいと思っただけですわ~
ホホホ!
「あら、そう?」
あら、そう!でございます!




