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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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小僧、俺との婚約を破棄し、国外追放するだと!?

作者: よっちゃん
掲載日:2026/02/07

 大理石の広間に、ざわめきが満ちていた。

 貴族たちが息を呑み、視線を集める中心で、王太子が得意げに宣言する。


「公爵令嬢エレクシア!

 貴様との婚約は、ここに破棄する!」


 王太子の声が、王立学園の大講堂に高らかに響いた。

 ざわり、と空気が揺れる。

 貴族の子女たちの(ささや)き、嘲笑、安堵、期待――そのすべてが、刃となってエレクシアへ向けられた。


「そして私は、真に清らかで心優しき女性――

 男爵令嬢リリアーナと結ばれる!」


 王太子の腕にしがみつき、その豊満な胸をこれでもかと押し付けている、男爵令嬢。

 潤んだ瞳、か弱い微笑み、男好きのする顔。


 観衆は「まあ……」「なんて可憐な」と(ささや)き合う。



 エレクシアの胸の奥で、何かが小さく(きし)んだ。

 これまでにも、幾度となく感じてきた違和感。

 この世界、この身体、この立場。

 公爵令嬢としての振る舞いを、完璧に演じてきたはずなのに、どこか噛み合わない感覚が常にあった。



 ――その時だった。


「ほお……小僧、

 婚約を破棄するなどとは、抜かしおったな」


 エレクシアの口から、自身でさえ信じられぬような、場にそぐわぬ低い声が漏れた。


 次の瞬間、エレクシアの頭の奥で何かが砕けた。

 視界が反転する。


 雪原。血。咆哮(ほうこう)

 幾千の拳、幾万の断末魔。強敵(とも)との死闘。


 天を()く闘気、屍の上を往く覇道。


 ――覇王。

 己はかつて、そう呼ばれていた。

 ただ「強さ」だけで世界を席巻した(おとこ)


(俺は……公爵令嬢エレクシア。そして……)


 エレクシアは、ゆっくりと瞬きをした。


(ふむ……全て思い出したわ)


 胸の奥で、眠っていた炎が目を覚ます。

 背筋を貫く、暴力的なまでの確信。


 ――俺は、力で全てをねじ伏せて来た。

 ――力とは、己の、公爵令嬢としての生き様。


 エレクシアは、王太子を見た。

 いや、見下ろした。


 (この程度の、毛も生え揃わぬ餓鬼が……

 この俺に向かって(さえず)るとは。ふふふ、面白い)


 口元が、自然と歪む。

 それは貴族令嬢の微笑ではない。

 かつて覇王と呼ばれた者だけが浮かべる、強者(つわもの)の笑みだった。


「……」


 静かな沈黙が、講堂を支配する。


「それで……話は終わりか、小童(こわっぱ)よ」


 その声は、女のものだった。

 だが、内包する圧は――漢だけが発する気配。


「こ、こわっぱ?

 いや、まだ話は終わっていないぞ!貴様を、この俺の王国から……追放する!」


 次の瞬間。


「フハハハハハハ、羽虫(はむし)ごときが、この俺を追放とはな!なかなか(さえず)るではないか!」


 胸を揺らしてエレクシアが(わら)う。


「きさま!殿下に向かってその無礼な態度は何だ!」


 王太子の取り巻きの一人、次期騎士団長と言われる側近が、エレクシアを力で組みしだこうと走り寄ってくる。


 剣を抜き、獣のような笑みを浮かべて踏み込んだ、その瞬間だった。


(わめ)くな雑兵(ぞうひょう)!」


 エレクシアのスカートの(すそ)が揺れた。


 細く、白く、よく鍛えられた脚。

 学園一の美女、公爵令嬢の美しい足が(あらわ)になる。



陰嚢(いんのう)粉砕脚(ふんさいきゃく)



 その名に似合わぬほど、動きは優雅だった。

 舞踏の一歩のように滑らかで、無駄がない。

 だが――


 グシャッ


 嫌な音がし、次期騎士団長のオトコは、世にもおぞましい断末魔をあげ、崩れ落ちた。


 主人を失った剣は床に転がり、もはや手に取る者もない。


 学園の大広間に、重い沈黙が落ちる。


 エレクシアは、花がほころぶような可愛らしい笑顔を浮かべ、

 小首をかしげて言った。


「愚か者め!漢たるもの、()()()()()()()()

 我が師が相手であったならば、俺の脚が砕け散っていたわ!」


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 床に転がる無胤(むいん)の騎士の断末魔が、ようやく静まった頃。

 王太子は顔面を引きつらせ、喉を鳴らしながら一歩後ずさった。


「……エ、エレクシア――きさま、いったい……」


 エレクシアの視線が、氷のように鋭く突き刺さる。


「――青二才(あおにさい)よ」


 低く、しかしよく通る声。


「婚約は、先ほどうぬが一方的に破棄したはずだ」


 にこり、と上品な笑みを浮かべたまま、続ける。


「エルドレイン公爵令嬢と呼ばぬか、この阿呆めが」


 一歩、王太子へ近づき、完璧な姿勢で言い放つ。


 王太子が、顔を真っ赤にして口を開いた。


「……エレクシア、こんな事をして、ただで済む――」


 ――パァンッ!


「ぶふぇええ」


 乾いた音と無様な声が大講堂に響き渡った。

 白く美しい手のひらが、王太子の頬を正確に打ち抜いたのだ。


 勢いよくよろめいた拍子に、彼の懐から――

 ひらり。


 レース付きの、女性物の下着が床に舞い落ちた。


 一瞬の静寂。


 次いで、会場中の視線が、その一点に吸い寄せられる。

 エレクシアはそれを見下ろし、

 誰もが見惚れるような、妖精のような笑顔で小首をかしげた。


「うぬは……まだおなごの肌着に執着しておったか。

 メイドの、香りの残る腰布など集めおって」

「ふむ……確かめねばならぬ」



「スキル――

 《夢魔幻視ナイトメア・ビジョン》」


 王太子の背後、虚空に巨大な幻影のスクリーンが浮かび上がった。


「な、何だこれは――!?」


 映し出されたのは、


 ――女性の下着の数々。


 ショーツ。

 レース。

 フリル。

 それらを並べて眺め、匂いを嗅ぎ、(よだれ)を垂らして恍惚(こうこつ)とする王太子の秘め事。


 広間が、凍りついた。


「……この助平(すけべえ)が、俺はそれとなく、止めるように注意したはずだが?」


 エレクシアは腕を組み、泰然(たいぜん)と告げる。


「や、やめろおおおお!!」


 王太子は頭を抱え、やめろやめろと駄々をこねる。


「えええ、ハロルド様、そんな趣味が……け、汚らわしい」


 男爵令嬢リリアーナが、引き気味に(つぶや)いた。


「ほう?小娘よ、この矮小(わいしょう)な王太子が汚らわしいだと?

 では……次は貴様の番だ」


 視線が、男爵令嬢リリアーナへ移る。


「貴様は“純潔”を誇っておるようだが……」


 幻影が切り替わる。

 夜の街、仮面、甘い言葉。そして怪しげな館の一室。

 複数の男と、尻を出し、振り乱しながら快楽にふけるリリアーナの姿。


「純潔は守っているようだが、その貴様の不浄の穴は、欲望に(まみ)れているようだな」


「ち、違う! 

 これは、違――!

 て、てめえ!ち、ちくしょう、やめろお!」


「笑わせるな!阿婆擦(あばず)れが」


 エレクシアは、襲いかかってきたリリアーナの、無駄に豊満な片乳(かたちち)を手で鷲掴(わしづか)みにすると、そのまま腕で抱え、尻を露出させる。


 バシーン!


「この愚か者め!」

「ぎゃああああ」


 バシーン!!


「自分を安売りしおって!」

「ひぎいいい」


 エレクシアはその美しい手で、リリアーナの美尻を容赦なく何度も打ち据える。


「しかし、手段は()(かく)、天を掴まんと、なりふり構わず(むさぼ)り尽くすその姿は、この俺も感じ入ったぞ」

「ふふふ、男爵令嬢リリアーナ、なかなかの剛の者よ」


 王太子はリリアーナの裏切りを目の当たりにし、頭を抱えてブツブツと(うめ)いている。


「情けない凡愚(ぼんぐ)だ。

 おなごは元来自由な生き物よ。

 (おとこ)が真に愛した女なら、

 誰を愛そうが、

 どんなに汚れていようが、

 最後に己の横におれば良いのだ」

「リリアーナと言ったな。雌狐(めぎつね)よ、貴様が気に入ったぞ。この変質者など捨てて俺と共に来い」


 エレクシアは、すべてに背を向けた。


 そして――

 卒業会場の出口、その前で立ち止まる。


 ゆっくりと振り返り、

 完璧なカーテシーを決めた。


 静かに、しかし確かに響く声で



「我が三年間の学園生活に――

 一片の悔いなし。


 我が覇道、付いて来たくば来るが良い。

 では者共、さらばだ!」


 ドレスの裾が(ひるがえ)る。

 覇姫(はき)は振り返らない。


 その背を、誰も止められなかった。



 ――完



 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 陰嚢粉砕脚いんのう・ふんさいきゃく


 ――覇姫(はき)流体術・秘奥義

 人の肉体には、鍛錬によって鋼と化す部位と、いかなる達人であろうとも守り切れぬ“死角”が存在する。


 陰嚢粉砕脚とは、相手の重心移動・呼吸・踏み込みの刹那を見極め、下半身の急所にのみ存在する一瞬の空白へ、 必殺の一撃を放つ技である。


 ・脚に闘気を(まと)

 ・舞踏の一歩の如く踏み出し

 ・敵が“女が相手だ”と油断した瞬間に放たれる


 ゆえに、防御不能。

 記録によれば、これを受けなお立ち上がった者はいない。


 時の皇帝の勅命(ちょくめい)により、男同士の戦いでは禁じられ、肉体的に不利とされた女のみが行使を許された――対男専用の必殺の一撃である


 余談だが、エレクシアが履く尖踵(ハイヒール)

 後世においては「装飾靴」「社交用履物」として知られるそれは、

 本来、靴ですらなかった。

 一説に、糞尿(ふんにょう)を避けるために(かかと)を高くした、などと語られるが、

 それは平和な時代に作られた、あまりにも浅薄(せんぱく)な俗説である。


 真の起源は、

 古代において用いられた、対男専用の戦装束(いくさしょうぞく)

 男の重装甲が最も脆弱となる“股間(こかん)装甲の死角”。

 そこへ正確無比に打ち込むため、

 踵は刃の如く削がれ、

 体重・踏み込み・回旋力のすべてを一点に集束させる構造となった。


 特に、宮廷・宴席・舞踏会といった

「武装を解いた男が油断する場」において、

 その威力は絶大であったという。


 現代に残るハイヒールとは、

 その戦闘性を削ぎ落とし、

 無害化された“残骸”に過ぎぬ。


 成楼(なろう)書房『古代宴席武装史概論』より



  挿絵(By みてみん)




二つ連載中ですが、この短編と似たような雰囲気の話は

ときめきTS女神転生

https://ncode.syosetu.com/n6478lq/

このURLか、作者ページから行けます


読んでいただき、ありがとうございます。 もし少しでも面白いと感じていただけたら、 ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです^^

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― 新着の感想 ―
追加の文章が凄すぎる!覇妃様に相応しい語りです!それと、ハイヒールはホントに凶器ですよ。体重を乗せた蹴りはベニヤ板に刺さるんだから……コレ、ホントだよ(・・;) この技に震える軟弱な者にこの修行方法…
……お、恐ろしい。アレこそ究極の技! 「陰嚢粉砕脚」 完全に男を殺す技よ。貴女を敵に回さなくて良かった。 と、サンダーさんみたいに言ってみました。後は黒いお馬さんが必要ですね。
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