サルサル
「……お嬢様ー、攻撃魔法を使うときはー、もっと周りを見てからにしましょうねー?」
メッチャ引きつった笑顔で注意されてしまった。たぶん公爵令嬢じゃなかったらゲンコツされていたと思う。マジすみませんでした。
「で、どんな感じでした?」
「そうっすねー。やっぱりステータスってやつが強くなっているんでしょうね。キラー・バットをこうも簡単に倒せるとは……」
キラー・バットってあのコウモリの魔物のことだっけ? なぁんか『キラー』って感じがしないんだよね。攻撃されてもちょっと痛いだけだし。
「いやいやお嬢様、舐めすぎっす。キラー・バットは初心者殺しと言われてまして、駆け出しの冒険者がいっぱい殺されているんですから」
「えー、そうなんですか?」
「そうなんですよ。まず表皮が硬いですし。視界の外から奇襲してきますし。何より基本群れていますからね。強敵なんですよ? まぁドラゴンを倒せるお嬢様からしたら雑魚でしょうけど」
「へー」
まぁ確かに。攻撃魔法で範囲殲滅しているから瞬殺できるけど、これが剣で一匹一匹倒すとなれば大変かもしれないね。相手も避けたりフェイントしたりするだろうし。
「ふふふ、つまり私は超強いスーパー幼女ということですね?」
「はいはい、すごいですねー」
やる気ない反応をされてしまった。くっ、やはりミャーがいないと突っ込みが足りないぜよ。
◇
キラー・バットは易々殲滅し。水晶を使って第二階層に移動したのだけど……。
「あれー?」
なんか、様子が違うような? 第二階層は草原だったはずなのに、目の前に広がるのは鬱蒼とした森だ。間違えたかな?
「ダンジョンの階層ってランダムだったりするんですか?」
この中で唯一ダンジョンに詳しいフィナさんに質問する私。
「いやぁ、聞いたことないっすねぇ。そんなのだったら先人たちの攻略法がまるで役に立たないですし」
「ふーん?」
でも実際に今までと違うしなぁ?
「あとは、このダンジョンの持ち主はお嬢様なんですよね? なら、その時に色々と変わっちゃったとか?」
「持ち主というかダンジョンマスター――まぁ持ち主ですか。そんなものなんですか?」
「分からないっすよ。そもそも人間でダンジョンマスターになった人なんているのかって話ですし」
「いないんです?」
「いたとしたら『魔王』とか呼ばれているんじゃないっすかね? んで、危険視されて討伐されると」
「……え? 私も魔王って呼ばれちゃう系ですか?」
「まぁ、お嬢様の実力をそのまま表に出したら、討伐しようって勢力が出てきても不思議じゃないっすよねぇ」
「マジっすかー」
これは偽装も完璧にしないと。改めて決意する私だった。
◇
『――ウッキー!』
「お?」
なんかいかにもサルっぽい魔物が? 木の上に?
サル。
見た目はサル。
なのだけど、なんだろう? ものすごーくこちらをバカにしたような顔をしている。
『ウッキー!』
そんなサルは、投げてきた。こちらに。ウ〇コ――じゃなくて、排泄物を。
「うっぎゃああああぁああああ!?」
「ぎゃあぁあああああああああ!?」
「ひぃやぁあああぁあああああ!?」
涙目になる私、フィナさん、アリス。なんだこいつ見た目サルのくせにゴリラかな!?
もちろん、自動展開の結界によって排泄物は防御された。
「やだー! ばっちぃ!?」
一旦結界を消し、もう一度展開する私。よーし綺麗になった――
『ウッキー!』
再び例のブツを投げてくるサル。なんだこいつ無限ウ〇コ製造器かな!?
「――死ねぇええええい!」
たぶん今までで一番殺意の込められた一撃。サルは瞬時に消し炭となったのだった。第一部完。
そして、
『『『『『ウッキー!』』』』』
「増えたぁ!?」
仲間を呼んだ!? 仲間がやられて怒った!? 十数匹のサルが一斉に――ぎゃあぁあああああああ!?




