肖像画
勝者・アリス~。じゃなくて。
「ルイナス、大丈夫?」
「は、はい……大丈夫です?」
自分が何をされたかイマイチ分かっていないのか疑問系のルイナスだった。
そんなルイナスの前でアリスが腕を組んで仁王立ちする。
「ふっ、その程度の実力で、お姉様の弟を名乗ろうとは片腹痛いですわ」
アリスってこんなキャラだったっけ? あと、私の弟になるにはアリスにプロレスで勝たなきゃいけないの?
うーん、ツッコミが、ツッコミ役が足りない……。
「あたしの気持ち、分かってくださったっすか?」
『みゃ』
なぜか視線をこちらに向けてくるフィナさんとミャーだった。まるで私が普段からボケボケみたいじゃありません?
ま、フィナさんとミャーがボケているのはいつものこととして。
「ルイナスのスキルは、周りの生き物から魔力を吸い取っちゃうことで確定だね」
前世的に言えばエナジードレインみたいな?
「そんなスキルは聞いたこともないですが……」
「そうなの? まぁ、私の鑑定眼が間違っている可能性も――」
「――ないですね。お姉様が間違うことなどあり得ません。ボクとしたことがお姉様を疑うなど――」
「お、おう?」
なんだ? 姉弟愛が重いぞ? いやでも今まで人と交流ができなかったからね。こんなものなのかな?
『みゃー……』
あーあ、せっかく疑問に思ったのに……もうだめだこりゃ……、みたいな声を上げるミャーだった。どういうこと?
ま、ミャーが意味深な物言いをするのはいつものことか。
「えーっと、スキルだからたぶん使えば使うほどレベルが上がるんだよね」
「はぁ、そんな話は聞いたことも――いえ、お姉様がおっしゃるのですから、そうなのでしょうね」
「うん。で、多分だけど、レベルが上がればその分だけ使いこなせるようになると思うんだ」
私の場合、鑑定眼のレベルが上がれば上がるだけ鑑定できるものが増えたし。飛翔も最初はすこーししか浮かべなかったのがだいぶ浮かべるようになったもの。あと、天井ぶら下がりが天井歩きになった結果、洞窟の壁や天井を走ることができたし。
まぁ、つまり。
結論に至った私はルイナスに向けて腕を広げた。
「エナジードレインすればするほどレベルも上がって、スキルを使いこなせるようになると思うんだよね。というわけで……おいでールイナスー」
「はいっ!」
元気いっぱいなルイナスが抱きついてこようとして――
「――許しません!」
いつの間にか動いたアリスが、ルイナスに足払いした。ずこーっとずっこけるルイナス。やだ、うちの妹、容赦ない……。いやまぁ公爵家の絨毯ってめっちゃふかふかだからケガはないだろうけど……。
「あ、アリス? 何を……?」
「お姉様! いけません! あのような野獣を抱きしめるなど!」
「野獣って」
まぁアリスってまだ婚約者もいないし、男の子のことはそう見えちゃうお年頃なのかな?
「それに! 結論を急ぎすぎですわ! スキルレベルとやらが上がった結果、制御できずに魔力の吸収量が上昇してしまう可能性も考えませんと!」
「あー……」
その可能性もあるのか。え? というか6歳なのにそこまで考えたの? 私みたいに前世の記憶持ちじゃないのに。うちの妹、天才過ぎない?
「くっ、せっかくの好機を邪魔して……」
ぐぎぎと歯を食いしばるルイナスだった。うん、まぁいきなり足払いされればねぇ。怒って当然かな?
『みゃー……』
そうじゃねぇよぉ、みたいな声を上げるミャーだった。
◇
なんやかんやで昼食時間となり。
私とアリスは迎えに来てくれたお父様と一緒に食堂へと向かっていた。ちなみに普段はメイドさんが呼びに来るものなので今日が特別ということらしい。そもそもお父様はお爺さま(宰相)の補佐で日中は城に出仕しているみたいだし。
食堂に向かう道中。
「……ん?」
ふと気になった私は階段の踊り場で足を止めてしまった。
「リーナ? どうしたんだい?」
「いえ、この壁、四角く日焼けしているので」
大きさとしては縦横1メートルくらい? 縦の方が少し長いかもしれない。いやこの世界に『メートル』があるとは限らないけどね。
「あぁ……。そこには家族の肖像画が飾られていたんだ」
「家族の?」
「うん、何か特別なことがあったときに家族揃っての肖像画を描いて貰うものなんだ。たとえば子供が産まれたり、成人したときなどに」
「へー」
前世でも貴族とかの家族が集まった肖像画を見たことがあるので、あんな感じなのかな?
「昔は両親と私、そしてお姉様の描かれた肖像画が飾られていたのだけど……お姉様が家出したあとに父が外してしまってね。そのまま飾られなくなってしまったんだ。ルイナスが産まれたときに新しく描いてはいるんだけど、ね。結局は倉庫にしまわれたままさ」
お姉様が家出。
つまり、私の母親が駆け落ち同然に伯爵と結婚したときのことかな? うん、それは外しちゃってもしょうがないかなー、なんて。可愛がっていた娘がねぇ。アレではねぇ。可愛さ余って憎さ百倍、みたいな?
「……そういえば、リーナはお姉様――母親の顔を知っているのかな?」
「知らないですね」
私を産んですぐ亡くなったそうだし。軟禁状態だったので肖像画があるのかどうかすら知らない。そもそもアレが私の母親の描かれた肖像画を飾るかなぁ?
「……あとで肖像画を探させよう。しばらく放っておいたのでどこにあるか分からないが、捨ててはいないはずだからね」
「あ、はい。ありがとうございます」
あまり興味はなかったけど、ご厚意は無下にしない私だった。




