スキル
なんかアリスから黒い瘴気みたいなのが漏れ出しているような? 気のせい?
「……あ、そうか」
きゅぴーんっときた私はルイナスから離れ、アリスに向けて両手を広げた。
「ほーら、アリス! お姉ちゃんですよー!」
「お姉様ーっ!」
タックルするような勢いで抱きついてくるアリスだった。おうっふ、アリスの頭が鳩尾に……。アリスは味方判定だから自動防御も発動しなかったか……。
しかし! お姉ちゃんは負けないのである!
アリスを抱きしめ返し、頭をなでなでする私! お姉ちゃん! ジャスティス! いい香り! 合法!
「……ふっ」
なにやら勝ち誇ったように笑うアリスだった。どうしたの?
「ぐぐぐ……」
ん? なにやら地獄の底から響いてくるような声(?)が。私の背後から?
今私の後ろにいるのなんて……フィナさんとミャー? でも二人のものとは違うような?
あとはもしかしたらルイナスもいるかもしれないけど――気のせいだよね。マイ天使があんな声を出すはずがないもの。
何だろうなーっと私が首をかしげていると、
「……ミャーさん、お嬢様がどっちから刺されるか賭けしません?」
『みゃ!』
なんか賭け事に誘うフィナさんと、同意するミャーだった。さされるって、どういうこと?
『――みゃ!』
突然ミャーが飛び上がり、私の背中に飛び乗った。おっとっと、バランスを崩しそうになったのでアリスを離し、一歩二歩と下がる。
『みゃ、みゃ、みゃ』
なんか楽しそうに私の背中から肩に移動し、バランスを取るミャーだった。アトラクション感覚ですか?
『みゃ!』
なんか首を後ろに向けながらドヤ顔ならぬドヤ声を出すミャーだった。
「ぎぎぎ……」
「ぐぐぐ……」
んー? 私の後ろから奇妙奇っ怪な声が?
ミャーを落とさないようゆっくりと振り返ると――にこやかな笑顔を浮かべるアリスとルイナスの姿が。天使×2。
そしてさっきの奇妙奇っ怪な声は空耳だったらしい。だって後ろにはマイ天使たちしかいないのだから。
「なるほどっす……二人から刺されるという大穴狙い……さすがミャーさんっすね……」
なにやら『ごくり』と喉を鳴らすフィナさんだった。なんか、みんな反応が変じゃない? まともなのは私だけか?
◇
「おっと、そうだ。ルイナス、鑑定してみてもいい?」
「鑑定ですか?」
「うん、鑑定眼ならルイナスの病気も分かるかもしれないし」
「お、お姉様は鑑定までできるのですか……神……?」
キラキラとした目を向けてくるルイナスだった。照れるぜ。
さて同意も得たっぽいので早速鑑定。きゅぴーん、びびーん、ぴこぴこっとな。
「……ほうほう?」
鑑定結果。
――スキル・魔力喰らい。
ステータス画面に詳細が表示されたので、確認してみる。……ふーん、周囲の魔力を吸収して、自分の魔力として使用できる感じかぁ。
私とアリスの持っている魔石喰らいと名前は似ているけど、中身は完全に別物だ。
魔法使いは基本的に自分の体内にある魔力を使って魔法を起動する。そして熟練者となると大気中の魔力を用いて大規模な術式を起動するのだけど、そんなことをできるのは限られているらしい。と、魔法の教本に書いてあった。
ルイナスのスキルも周囲の魔力を吸収するものなのだけど――問題は、人間の魔力まで吸い取ってしまうことだ。
たぶんルイナスの周りにいる人間も、ルイナスに魔力を吸い取られて体調不良になってしまったのだと思う。この世界の人間って魔力欠乏症になると死んでしまうこともあるらしいし。
で。
なぜ私がルイナスに抱きついても平気だったかというと――たぶん、自動魔力回復のスキルを持っているからだ。ルイナスに吸い取られる量より回復量が多いから問題なし、みたいな?
この推測が正しいかどうか確かめるのは簡単だ。ルイナスを抱きしめて、私の魔力(MP)が減るか確認すればいいのだから。
じゃあ、早速試してみようかな?
「ルイナ~ス」
私が腕を広げると、ルイナスは『わーい』とばかりに抱きついてきた。ひゃっほう、ふわふわー。合法ー。
『みゃ』
ミャーから冷たい目を向けられてしまったので真面目にやる。私のMPを確認してみると……おや? 微動だにしてないぞぅ? なんでだ……? 鑑定眼が間違っているとか……?
…………。
……あぁ、私の自動魔力回復のスキルレベルが高すぎて、瞬時に回復しちゃっている系? しまったその可能性があったか。
うーん、でもなぁ。自動魔力回復を持ってない人に確かめてもらうと、ほんとに体調不良(魔力欠乏症)になっちゃうしなぁ。いや回復魔法で回復すればいいのだけど、それはちょっと鬼畜過ぎるでしょう。
あとは……。
……あ、そうだ。アリスも自動魔力回復のスキルを持っているんだよね? 邪竜を倒したときに血を浴びたせいで。つまりアリスの抱きしめてもらえばいいと。
それを言うならフィナさんも獲得しているはずだけど……いやほら、成人女性が少年に抱きつくのって割と事案じゃない?
『みゃーーーーーー……』
お前だって前世は、みたいなツッコミをするミャーだった。いや私は前世の記憶があるだけだから。記憶だけで実感はないから。精神年齢は7歳のままですので。合法、合法です。
『みゃーーーーーーーーーーーーーーーー…………』
メッチャ白い目を向けられてしまった。なぜだ……合法なのに……。
ミャーの白い目から逃れるためにも、私はアリスとルイナスに視線を移した。
「えーっと、じゃあアリス、ちょっとルイナスに抱きついてくれない?」
「えー」
「えー」
めっちゃ眉間に皺を寄せるアリスとルイナスだった。すごい、天使ってこんな『くしゃ』っとした顔でも可愛いんだ……。
とはいえ、これは私が説明不足すぎたね。というわけで説明。かくかく。しかじか。
「えー」
「えー」
めっちゃ眉間に以下略。他人事のアリスはとにかく、ルイナスまで嫌そうな顔をするのはなぜ?
「……いえ、しかしお姉様が望まれるのでしたら! このアリス、見事に抱きしめてみせましょう!」
姉弟(義理)が抱きつくのってこんなに気合い入れなきゃいけないイベントだったっけ?
あれ? そもそもアリスとルイナスってどっちが年上なんだっけ? えーっと、6歳同士だから誕生日が……。
「ふぅん!」
まるで立ち上がったクマのように両手を掲げるアリス。抱きしめるってベアーハグ?
「ぬぅん!」
対抗するかのように両手をアリスに向けるルイナス。そのまま二人はお互いの手と手を絡めるように組み合った。よくプロレスの序盤で選手が力比べをする感じに。名前的にはロックアップと呼ばれるヤツ。
いや抱きしめてって言ったじゃーん。なんでプロレスが始まるのさー。
「まっ、アリスお嬢様は6歳とはいえ乙女ですからね。いきなり男子に抱きつけという方が無茶じゃないっすか?」
アリスのフォローに回るフィナさんだった。それでプロレス技になっちゃうのは何か間違ってません?
ま、まぁ、ルイナスと接触しているから魔力喰らいは発動しているかな? というわけで鑑定眼でアリスのMPを確認。……うん、徐々に減っているね。
自動魔力回復のおかげで即座に魔力欠乏症になることはなさそうだけど、このまま放置していたらアリスも具合が悪くなっちゃうかもしれない。スキルレベルが上がれば平気になるだろうけど。
というわけで。私はアリスとルイナスを離れさせようとしたのだけど。
「むーーーーん!」
なぜか、ルイナスを首投げするアリスだった。やだ、この子意外とアグレッシブ……?
「リーナお嬢様の妹ですからね」
なんでやねん。
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