エピローグ 興味
「――へぇ?」
手を取り合ったルクトベルク公とリーナ嬢。その光景を目にした王太子フリードは面白そうな声を上げた。
無論、フリード本人が伯爵家に赴き、その目で見学していたわけではない。彼は王城の私室にいたまま伯爵家の様子を見ていたのだ。
――支配者たる者。
闇魔法の『精神支配』によく似ているが、異なる魔法。
いわゆる、稟質魔法と呼ばれるもの。適性さえあれば誰もが学べる共通魔法ではなく、その個人でしか使えないとされる個人魔法だ。
その効果は対象の精神支配、視界の共有、相手の情報を認知できるなど多岐にわたる。
そして現在。フリードは支配者たる者を使って伯爵家へと小鳥を飛ばし、ルクトベルク公たちのやり取りを盗み見――いや、観察していたのだった。
「面白い姉妹だね」
国王すら震え上がらせるルクトベルク公の威圧に、真っ正面から対抗して見せた妹。
そんな妹を助けるために、ルクトベルク公の前に躍り出た姉。
特に、姉が面白い。
雷魔法自体はルクトベルク家の血であると納得できるが……転移魔法や身体強化とはまた違った移動方法。そして何より、ドラゴンの骨から削り出されたという魔杖を破壊してみせた謎の魔法。
あんな攻撃魔法は文献にも残されていないはずだ。
おそらくは、稟質魔法。
「優秀な魔術師の証とされる銀髪と、わずか7歳で雷魔法や稟質魔法を操ってみせる才覚」
そして。これは完全なる勘であるが……あの少女はまだまだ隠し事をしている。そんな気がしてならないフリードだった。
「ルクトベルク公の孫ならそのうち紹介されるかな?」
暢気なことを考えるフリードだが、すぐに自らその甘さを否定する。
――他にも、彼女の『面白さ』に気づく人がいるかもしれないな。
「ルクトベルク公に頼んでみるか」
そう決めるフリードであった。
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とりあえず一章完結となります。
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