このあと
なんだか腑に落ちないままだけど、一眠りすることにした。ルクトベルク公が『朝』に来るとはいっても何時になるか分からないしね。
テキパキとシーツを整えたフィナさんがぽんぽんとベッドを叩いた。
「じゃあ、子守歌でも歌いましょうか?」
「いいですよぉ、子供じゃないんですから」
「いや子供っすよ? お嬢様は子供っすよ? そりゃあ境遇のせいで大人びちゃってはいますけど、それでもあたしからして見ればまだまだ子供で、妹みたいに可愛い存在なんですから」
「でも……」
「それに、お嬢様が公爵家に行っちゃうと、もう子守歌も歌えないですからね。あたしのためにも、ここは一つ」
「……フィナさんは公爵家に行かないんですか?」
「たぶん無理じゃないっすかね? 公爵家にはメイドもたくさんいるでしょうし。だから他の家に再就職するか、冒険者をしながらお嬢様を待つってのもありですかね」
「再就職、ですか?」
「あ゛っ」
「どういうことです?」
「……えーっとですね、ルクトベルク公が怒り心頭らしくてですね、たぶん伯爵家もお取り潰しになるんじゃないかなー、っとですね」
「じゃあ、アリスはどうなるんです? セバスさんやサラさんや、調理場のみなさんは?」
いや私を虐めていた連中はどうなってもいいけど、私の味方になってくれた人が不幸になるのは……。
「アリス様は、まぁ通例なら親戚の家に預けられるとか、教会に預けられるとか……。セバスさんはお嬢様のことが解決したら隠居すると言ってましたし、サラさんは魔法が使えるので引く手あまたでしょう。調理師の皆も、伯爵家で働いていたとなれば就職には困らないはずです」
「…………」
まぁ大人のみんなはどうにかできるのだろうけど……。問題はアリスだ。
親戚……。預けられた先で私みたいな目に遭ったら大変だ。人によっては『因果応報』だと笑うのだろうけど、お姉ちゃんは許しません。
教会……。アリスは『聖女』になったのだから悪い扱いはされないと思う。でも、聖女としての力を利用されたり一生涯教会に閉じ込められたりするかも……。お姉ちゃんは許しません。
どうしようかな。
悩んでいるうちにフィナさんの子守歌が聞こえてきて。私は、いつの間にか眠りについていたのだった。