聖剣
強くなるのはいいことだし、稼ぎ口であるダンジョンを独占できているのも最高だね。
あと冒険者をする上で必要なのは……武器とか?
私には魔法があるし、自動回復もあるけど、近接武器も欲しいところ。自動で治るとはいえ痛い目に遭うのは嫌だし。
『みゃ!』
ミャーが私のステータス画面を操作する。え? 他人というか他ドラゴンでも操作できるの?
私が驚いているとミャーは空間収納の収蔵物からお目当ての品を見つけたみたいだ。
見た目はよくある西洋の剣。ちょっと装飾過多な気もするけど実用品の範疇だと思う。
名前は――聖剣?
ステータス画面で詳細を見てみると――ほうほう? ドラゴンの尻尾から出てきた聖剣? 八岐大蛇みたいな?
「……聖剣なんて持ってても、勇者じゃないと使えないのでは?」
『みゃ』
ゴチャゴチャ言ってないで使ってみろよ、みたいなことを言われた気がしたので早速空間収納から取りだしてみる。
「おぉー!」
自ら光り輝いているかのような剣だった。いや聖剣なら実際に輝いているのかもしれないね。
剣身は一切曇りのない銀色。鍔には細やかな装飾が施され、逆に柄は実戦使用重視なのか滑りの悪そうな皮が巻かれている。
何とも綺麗で、何とも強そうな剣なのだけど……。
「いや、重っ!」
7歳児の細腕では支えきれず、剣身を下げてしまう私だった。
地面と剣身が接触する。地面とはいえ、洞窟の中なので固い岩盤だ。普通なら鉄を落としたような音がするだろうし、岩に負けて剣身が欠けてしまってもおかしくはない。
だというのに。
ぬる、っと。
音も立てずに聖剣は岩盤を切り裂き、鍔が岩盤に当たってやっと止まった。
「いや切れ味! 良すぎない!?」
『みゃ』
そりゃ聖剣だからな、みたいなため息をつかれてしまった。
とりあえず、身体強化を発動して剣を岩盤から抜き、目の前に掲げてみる。ちなみに身体強化はフィナさんが使っていて便利そうだったので習得積みだ。
岩を切り裂いたというのに、剣身には欠けどころか擦り傷すらもない。なるほど、聖剣の名に偽りはなさそうだ。
「というか聖剣抜いちゃったけど、いいのかなぁ?」
しかも空間収納と刺さっていた岩盤から抜くという二重取り(?)だ。むしろちゃんと『岩から引き抜く』というテンプレを守った自分を自分で褒めてあげたいよね。
『みゃ』
ミャーがステータス画面を弄ったので、視線を向けてみる。
表示されていたのは私のステータスだった。
名前:リーナ・ルクトベルク
年齢:7歳
レベル:999-
種族:邪竜
「邪竜!?」
『みゃ!?』
ビクッとするミャーだった。……どちらかというと私が『邪竜』になったことよりも、私の大声で驚いたような感じだけど。
「え? え!? 邪竜!? 邪竜なんで!? 私って人間だったよね!? 最初確認したとき人間だったよね!?」
『みゃ』
諦めろ、とばかりに私の肩を叩くミャーだった。へ? もしかして、ドラゴンを倒すとドラゴンになるとか? なんだその呪い?
大混乱に陥る私だけど、ミャーは相手をしてくれないので驚きも縮小してきた。あれ? もしかして大したことない……?
「え、えっと……とりあえず他の項目も見てみようかな」
HP(体力)とMP(魔力)のゲージは……体力が100万、魔力が1,000万を超えているね。なんかもう凄いのか凄くないのか分からないや。
職業 / 称号欄は『竜の支配者』に、『ドラゴンの名付け親』と、『竜殺し』、『転生者』、『勇者』、『悪役幼女』、『運命を変える者』か。
いやいや。
ドラゴンの名付け親と竜殺しが並んでるのってどうなん? 自分の子供を殺したみたいじゃん……。
あと、勇者と悪役幼女を並べるのも……。いや本当なら勇者になったことを驚くべきなのだろうけど、隣にある悪役幼女のインパクトがなぁ。相変わらず強いんだよなぁ。
最後にあるのは『運命を変える者』かぁ。もしかして、あそこでドラゴンにやられるのが『運命』だったとか? でもそれだとアリスも同じスキルを持っていたりとか?
「あ、そうだアリス」
ちゃんと帰って眠ったかな? と、気になってしまう私だった。