閑話 合流
地下室の中央には謎の魔法陣が描かれており、その真ん中にはまた階段が続いているようだった。
そして、フィナが地下室に到着するのとほぼ同時にその階段を降りて行ってしまうアリス。
「アリス様ってこんなに行動力ありましたっけ!?」
もはや嘆くしかないフィナだが、よく考えれば両親から『近づくな』と厳命されていたリーナと頻繁に会っていたし、リーナが軟禁されている別邸にも足を運んでいたし……どちらかと言えば行動力の固まりなのかもしれない。
「おっと、嘆いている暇はないっすね」
フィナもすぐに後を追うと――階段の先は、洞窟になっていた。
「王都の下水道……じゃ、なさそうっすね」
下水道であれば汚水が流れているはずだが、床にはびっちりと石畳が敷き詰められている。
天井と壁は剥き出しの岩肌で、高さと横幅はそれぞれ3メートルくらいだろうか?
(まさか、ダンジョン? 王都の地下にダンジョンがあるという噂は聞いたことがあるっすけど……まさか)
フィナがその可能性に思い至ったところで――
『――ぎゃあ! ぎゃあ!』
「ふみゃあ!?」
天井から何かの吼える声が響き渡り、その声に驚いたアリスが転んだ。
あの、コウモリのような魔物は――
「キラー・バット!? ランクCの魔物が何でこんなところに!?」
アリスが驚いて転んだことが幸いだった。もしあのまま立っていればキラー・バットの牙によって噛まれ、全身の血を吸い取られていただろう。
「アリス様!」
フィナが最大出力の灯火を天井付近で発動。キラー・バットたちが眩しさで目が眩んでいるうちにフィナはアリスに駆け寄り、防御結界を発動した。
とはいえ、フィナもそこまで強力な結界を展開できるわけではない。新人冒険者殺しと恐れられ、『一人での戦いは絶対避けろ』と冒険者ギルドで習うキラー・バット相手にどれだけ結界が耐えられるだろうか……。
フィナがアリスを抱え上げ、もう一度灯火で目くらましをして、急いで地下室に繋がる階段に向けて走り出そうとしたところで――
「――雷よ、轟け!」
閃光が、洞窟の天井に走った。
フィナが使った目くらましではない、本物の攻撃魔法だ。
『ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!?』
キラー・バットが、ランクCの強力な魔物が、まるで羽虫のようにあっさりと退治され、天井から落ちてくる。
「こ、攻撃魔法!? しかも短縮詠唱で!?」
冒険者として活動していたからこそ、その異常さが理解できるフィナだ。ここまでの腕があればまず冒険者としては流れてこず、国が魔導師団に囲い込むはずだ。
(そんな腕前の魔術師が、なぜこんなところに?)
敵か。
味方か。
フィナが警戒しながらアリスを抱きしめる力を強めていると――この場には相応しくない、どこかのんびりとした声が響いてきた。
「――あれー? フィナさん? それに、アリス? なんでこんなところに?」
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