自動防御
「……ほーお?」
ぐわん、とした感覚のあと。目を開くとそこには草木が一本も生えていない荒野が広がっていた。なんかこう、西部劇でも始まりそうな感じ?
『みゃ?』
西部劇が分からないであろうミャーが首をかしげていた。
「えーっとねぇ、こう、銃でパーンっと決闘するんだよ」
『みゃー?』
ますます首をかしげるミャー。うんゴメン。これは私の説明が悪かった。
こういうのは映像を見せるとか、絵を描いてみるとか、実物を見せるのが一番なのだけど……この世界には西部劇映画なんてないだろうし、絵を描けるような紙やペンもない。あとは、実物? 魔法がある世界に銃火器なんてあるのかな?
なぁんて私が悩んでいると、
――乾いた音が鳴り響いた。
「あぁうん、そうそうこんな感じの発砲音――痛い!? なんか当たった!?」
私の額に何かがクリーンヒット。メッチャ痛い。というか血! 血が出てない!?
『みゃーーーーーあ……………………』
サッと目を逸らしたミャーの反応からして、今の私の額や頭ってかなりの惨状になっている可能性がある。
ふ、しかし甘いぜよ。
今の私には自動回復があるのだ! 多少血が流れたって――痛い!? まさかの二発目!?
《――スキル・自動防御を獲得しました》
わぁいやったぁ念願の自動防御スキルだー。それを得るためにはこんな痛い目に遭わなきゃいけないんですか!? 二回も!? たぶん普通の人間だったら死んでるよ!? ――わぁ!?
三回目の発砲音の後、私の目の前に何かが飛来して……ぶつかる直前、結界が展開した。おぉ、すごい! ほんとに自動で結界が展開した!
いきなり効果がなくなったことにムキになったのか。連続して発射される弾丸(?)たち。しかし! 今の私は無敵! そんな攻撃は効かないのだよ! ふははははっ!
『みゃー……』
おっと調子に乗りすぎた。ミャーから呆れ果てた目を向けられてしまった。身体はノーダメでも心が死にそうだ。
≪スキル・自動防御のレベルが上昇しました≫
「お? もう上昇? 特に何もやっていないんだけど?」
攻撃を受ければ受けるほどレベルが上がり、さらに硬くなると? なんだそれ無敵じゃん? 無敵幼女リーナちゃんじゃん?
これはいいや。ドンドン攻撃してきたまえよ謎の敵。というわけで私が仁王立ちをして攻撃を受け続けていると――パキィン、っと。結界が割れた。
「あ痛ぁ!?」
謎の弾丸と結界の破片。ダブルで突き刺さって大惨事な私だった。まぁ自動回復があるから以下略。
あー、そうかぁ、結界にも限界値みたいなものがあるのかぁ。完全無敵になれたと思ったのに、そんな簡単にはいかないかぁ。
まぁでも結界が壊れたなら張り直せばいいだけのこと。
まずは飛来する弾丸を避けて、地面に伏せる。
そうしてからステータス画面で確認してみたところ……自動防御には耐久力があるらしく、小さくHPみたいなものが表示されていた。で、一度壊れた状態で再度自動展開されると、HPも初期状態にリセットされると。
ちなみに結界の展開や張り直しには魔力が必要となるみたい。普通の結界展開よりは消費が多めだけど、今の私の保有魔力からすれば微々たる差でしかない。