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ドラゴン・ブレス


 探知魔法で知ることのできた方角に顔を向けると――


「げっ」


 デカい――カンガルー? いやなんか大きさはホッキョクグマくらいありそうだけど、見た目は頭に角の生えたカンガルーだ。


 しかも一匹や二匹じゃない。団子状になっているので正確な数は分からないけど、十匹や二十匹はいるはずだ。


 そんなカンガルーっぽい獲物がいかにも冷静さを失った様子でこちらに向かってきていた。


「なんで!? わたし脂肪ないから食べても美味しくないよ!?」


 反射的に飛翔(ボラーレ)を発動。もちろんまだ飛べるほどにレベルは上がっていないけど、飛ぶように走る(・・・・・・・)ことはできるのだ。


 加速。7歳の幼女とは信じられないほどの速度で。しかし魔物の足も速いのか、引き離すことはできない。


 そして、実戦で使ってみて判明した問題が一つ。


「これ! 曲がれないんですけどぉ!?」


 魔物とほぼ互角の速度。もう足を前に進めるので精一杯。つまり足を踏ん張っての減速や曲がることができないのだ。


「筋肉! 筋肉が欲しい! あぁでもマッチョは嫌だからそこそこの! カモノハシのような筋肉が欲しい!」


『みゃっ』


 それを言うならカモシカだろ、みたいな声を上げるミャーだった。いやミャーがカモシカを知っているはずがないんだけどね。……いや異世界にカモシカがいる可能性も? いやいや今はそんな考察をしている場合じゃなくて。


「なにこれ教本にあった魔物の津波(スタンピード)ってやつ!?」


 もしくはダンジョンボス(仮)の咆吼にビックリして逃げ出しただけとか? ……いやまぁどっちでもいいんだけど、このまま逃げ続けるのも……。


『みゃっ!』


 任せろというように尻尾を振るミャー。そのままデカいカンガルーの集団に首を向け、『がこん』と(あぎと)を開いた。


 ミャーの口から尋常じゃない量の魔力があふれ出している。


 嫌な予感。


「みゃ、ミャー。ちょっとくらい手加減してね――」


 私のお願いが聞こえていたのかいないのか。ミャーの口からレーザービームというかレーザーキャノンのような光の柱が発射されたのだった。


「にゃあぁああぁあ!?」


 たぶんドラゴン・ブレス。

 ドラゴン・ブレスの余波で数メートル吹っ飛ばされてしまう私だった。まぁ止まれたのが不幸中の幸いか。

 直撃範囲じゃないのにこの威力とか、狙われたカンガルーは――


 じゅっ、と。


 断末魔すら上げられずに消滅するデカいカンガルーの集団。……強ぇええぇえ。ドラゴン、強ぇええぇえ……。まだ0歳児なのに……。


 ぴろんぴろんぴろん♪ っと、経験値が共有される音が鳴り響く。なんか凄い勢いでレベルアップしていく。もしかしてあのカンガルー、強いモンスターだった? ……いや、私のレベルが低いから少しの経験値でもレベルアップしやすいだけかな。


「と、とりあえず、魔石魔石~っと」


 カンガルーのいたところから魔石を回収していく。魔石って舐めただけで溶ける割には頑丈らしく、攻撃魔法で本体が蒸発したのにちゃんと残っていた。


「む、数が多いような?」


 あのカンガルーの集団は20匹くらいだったはずなのに、魔石は40個ほどあった。


「カンガルーだからお腹の袋の中に子供がいたのかな?」


 ちょっと微妙な心境になってしまう私だった。まぁでも今さらか。対処しなければこっちが轢かれていたし。


「……魔石が40個かぁ」


 コウモリの魔石を大量に食べたばかりなのでお腹いっぱいだ。これ以上の摂取は中々に厳しい。


 でも、せっかく得た魔石を捨てていくのもなぁ。天井ぶら下がり(ハングマン)みたいに、同じ魔石を食べればスキルが進化するかもしれないし。


「くっ、こんなことなら空間収納(ストレージ)の魔法を先に習得しておくんだった! 攻撃魔法をぶっ放すのが楽しすぎてついつい後回しにしちゃったんだよね! どうせまだ使わないからって!」


『みゃー……』


 仕方のねぇやつだなぁ、みたいな顔をするミャーだった。最近ミャーからの好感度というか名付け親への尊敬度が急降下しているような?


「……と、とりあえず、一つ食べてみようかな!」


 ミャーからの視線から逃れるように魔石を口に含む。舐め舐め以下略。


≪スキル・空間収納(ストレージ)を獲得しました≫


 お?

 おお?

 まさかの空間収納(ストレージ)? 欲しがったときに欲しかったスキルが手に入るとか――私、神に愛されているのでは?


『みゃー……』


 可哀想な者を見るような目を向けられてしまった。い、いいじゃん少しくらい調子に乗ったって!


 ま、まぁでも念願の空間収納(ストレージ)スキルゲットだ! さっそく魔石を収納して――あれ? あんまり入らないな? 山盛りの魔石を入れ終えたらもうパンパンだ。


 空間収納(ストレージ)の魔法は保持魔力によって収納力が変わってくるって話じゃなかったっけ? もしかして魔力10万は大したことがないとか?


 ……あ、そうか。魔法とスキルの違いという可能性もあるかな? そういえば魔法発動に必要な呪文詠唱もしてなかったし。となるとスキルのレベリングか……。


「結局魔石は食べなきゃダメな感じかな?」


 空間収納(ストレージ)に何か物を入れておくだけでレベリングできれば楽だけど……。


 おっ、そうだ。同じ魔法とスキルでどう違うのか確かめるチャンスかも?


 そうと決まれば地下室に戻って確かめてみよう。まずは魔法の方の空間収納(ストレージ)を習得しなくちゃね。




※お読みいただきありがとうございます。面白い、もっと先を読みたいなど感じられましたら、ブックマーク・☆評価などで応援していただけると作者の励みになります! よろしくお願いします!

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