閑話 王太子
――王宮。
この国の王太子、フリードは『影』からの報告を受けていた。
「ルクトベルク公が、ランテス伯爵家を調べさせている?」
「はっ。なんでも、孫娘の扱いが悪い可能性があるとかで」
「孫娘?」
未来の国王として、この国の主要な貴族については学び始めたフリードだが、さすがに中位貴族の娘までは記憶していなかった。
それを察した『影』が簡潔に説明する。
「ルクトベルク公には娘がいたのですが、ランテス伯爵と駆け落ちに近い状態で結婚しまして。二人の間にできた娘がルクトベルク公の孫娘に当たる、リーナ嬢でございます」
「ふぅん」
親が子供を虐待する。庶民はどうか知らないが、貴族であればよく聞く話だ。わざわざ王太子であるフリードに報告するようなものであるとは思えない。が、こうして上がってきたのだから何らかの理由があるのだろう。
「そのリーナ嬢、今何歳なんだい?」
「先日7歳になったそうで」
「7歳か」
現在12歳であるフリードとは5歳差。ならば婚約者候補かもしれないと考えるフリードだ。貴族としてはまぁまぁ普通の年齢差だし、ルクトベルク家の孫であれば血筋としても問題ない。
とはいえ、中位貴族の娘なので『弟』の方が可能性は高そうだが……。
「なら、一応注目しておいてくれ」
「ははっ」
「それと、弟の様子はどうかな?」
「はっ、病状は小康状態ですが、部屋から出られるほどではないとのこと」
「相変わらずということか……。やれやれ、聖女様でも出現してくれれば治癒してくださるのだろうけどね」
「……期待いたしましょう」
「うん、期待して待っていようかな。とりあえず、リーナ嬢のことはよろしくね」
「承知いたしました」
一度頭を下げてから、『影』の男は煙のように消え去った。いつものことながら腕がいいことだ。
しかし、しょせんは国王陛下の紐付きでしかない。
(私の方からも、調べておくか)
なぜだか妙に気になってしまったフリードは、そう決めたのだった。
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