闇魔法
「いや、だからいいんだって」
なんとかアリス襲撃を止めた私だけど、ミャーは不機嫌なままで。なぜか被害者である私がミャーを宥めるという訳の分からない状況になっているのだった。なるほどこれが人生か……。
『みゃ!』
お前は甘すぎる! ってなじられている。気がする。
「そんなこと言ってもさぁ。アリス、まだ7歳なんだよ? 私みたいに前世の記憶があるならとにかく」
前世で言えば小学一年生。まだまだ未熟で、『親のやっていることが正しい』と信じ込んでいる年頃だ。
つまり、あの父親と母親が私を虐めるから、そういう扱いをしていいんだと思っているだけ。これがそのまま訂正されず性格悪いままだったらどうしようもないけど……。まだまだ諦めたり見切りを付けるには早すぎる。
あの両親は手遅れだろうけど。
『みゃー……』
砂糖水より甘いぜ! と呆れられている。気がする。そんなこと言われてもなぁ。まさか本気で7歳の幼女相手に『ざまぁ』するわけにもいかないし……。
◇
アリス襲来から数日後。もはや習慣となった魔法の訓練をしていると――
「おっ、土魔法のレベルも10に上がった」
これで適性のある五大魔法と、聖魔法のレベルは全て10に上がったことになる。
≪――条件達成により、闇魔法が解放されました≫
おっとまた頭の中に声が。
闇魔法?
そんなの、魔法の教本に書いてなかったよね? 名前からするとヤバそうだけど……。
ステータス画面を呼び出して、所持魔法欄を開く。
五大魔法である火、水、風、土、雷。そして聖。ずらーっと並んだ魔法の一番最後に闇が追加されていた。
「どれどれー? っと」
闇魔法の文字を指先で触れると詳細が表示された。
「ふんふん? レベルを上げると呪いや重力操作、死霊魔術、精神支配とかができるようになるのか……。悪役が使うような魔法じゃん……悪役幼女……」
そりゃこんな魔法は教本に載せられないわ。禁術とかその辺じゃない? 物語の定番だと忌み嫌われて迫害されちゃう系……。
先日、アリスのステータスを『鑑定』したことを思い出す。あのときはHPやMPの他に、レベルや所持スキルも見えたんだよね。
「つまり、私が鑑定眼でステータスを見れたように、他の鑑定眼持ちに鑑定されたら闇魔法の所持者だとバレてしまうかもしれないのか」
定番だとステータスを隠せる隠匿スキルとかあるんだけど……何かそれっぽい魔法はないかな? 闇魔法はもちろんのこと、家名が明らかになると貴族だと分かってしまうし。貴族令嬢としての身分を捨て、ただの冒険者として生きていくのには必須のスキルじゃないだろうか?
(なんか、そんな感じのスキルくれません?)
天井を見上げ、天の声(?)に問いかけてみる。
反応はなし。さすがにそこまで都合良くはないか。
そもそもあの声って何なんだろうね? 定番だと私を転生させた神様とか女神様が転生特典をくれた、とかなんだけど。
ま、いいや。私にとって有利なんだから存分に活用させていただきましょう。
ちなみに。闇魔法と対をなす聖魔法も五大魔法とは完全に別枠で、回復魔法の完全上位互換。傷やケガの治療や、浄化、レベルが上がれば肉体欠損の修復までできるみたい。まぁそこまでできるのは『聖女』くらいのものらしいけど。