ヤバいって
(あ、そうだ)
ふと思いついた私は、背中を向けて逃げ出したアリスを鑑定してみることにした。他の人の魔力がどんなものか気になっていたところだし、同い年の少女なら比較に最適だろうから。
「――鑑定眼」
無断で人のステータスを見るのもどうかと思ったけど、まぁ水をぶっかけられたから『おあいこ』ということで。玄関へと向かうアリスを凝視する。
「おっ」
ちょっと魔力(MP)だけ見られれば良かったのだけど、アリスのMPの他、レベルやHP、適性魔法や所持スキルまで露わになった。
アリス・ランテス。7歳。
私と同い年なのだから、あの父親は私の母親が生きていた頃から浮気していたことになる。〇ねばいいのに。
レベルは4。最初の私くらいのレベルか。ちなみに、私はミャーから経験値を分け与えられ続けているので現在レベル18になっている。
職業欄には――何か文字が書いてあるけど、霞んでしまっていて読むことができない。これはレベルが足りなくて読み取ることができないんだっけ?
おっ、スキル魅了を持っているね。……あー、アリスが妙に可愛がられていたのはスキルの効果もあるのかな?
私も魅了持ちなんだけど、可愛がられた覚えは――いや、スキルを獲得したのは別邸に軟禁されてからだっけ。
スキルのレベルは――あれ? レベルの表記がないね? 私の場合はスキル名の横にレベルが出るのだけど。他の人のレベルは見えないとか?
そんなアリスのHPは80。最初の私よりも低いね? もうちょっと運動したら? まぁ遠出するときは馬車移動だから仕方ないか。
そして……MPが、10?
しかも、初級の水魔法でもう4も消費してしまっていて、残り6しかない。
対する私は、2万5,000。
私が多すぎるのか、あるいはアリスが少なすぎるのかは分からないけど……下手に反撃しては消し炭にしてしまうかもしれない。いや反撃するつもりなんてないけどね。
『……みゃ?』
アリスが玄関から逃走したのと同じくらいのタイミングで。狩りから帰ってきたらしいミャーが窓から首を出した。
『みゃっ!? みゃっ!?』
慌てた様子でミャーが寄ってきた。あー、今の私、頭からびしょ濡れだものね。
「大丈夫だよ、すぐに乾くし」
『みゃ!』
ミャーが風魔法と火魔法を使って、私に温風を吹き付けてきた。ドライヤーみたいな感じ?
『みゃっ! みゃっ!?』
誰にやられたんだ、と問い詰められている。気がする。
「えーっと、アリスなんだけど……知らないよね? 私の異母妹で――」
『――みゃっ!』
ぶっ殺してやる! みたいな顔をしたミャーが翼を広げたので、慌ててミャーの胴体にしがみつく。
「だ、大丈夫だって! 水をぶっかけられただけだから! すぐ乾くよ! それに魔物を狩れるミャーが報復したら殺しちゃうって!」
『みゃーーーっ!』
結局。
なんとかミャーを止めた私は疲れ果て、その日は丸ごとお休みしたのだった。
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