ナイスアイデア
翌日。
日中は爆睡して、夜になったら地下室へ移動して魔法の特訓。完全に昼夜逆転生活になってしまっている私だった。
いやしかし、こんな生活も今だけ。攻撃魔法と防御魔法を習得したら冒険者としての生活が始まるのだから、そうなってから生活リズムを整えれば問題ないはずだ。若さ。肉体的な若さは全てを解決する。
というわけで。今日はいよいよ攻撃魔法の訓練開始。まずは地下室全体に結界魔法を張り、壁や家具などに被害が出ないようにする。
昨日試してみた感じだと、結界とは展開しているだけで魔力を消費するっぽい。でもまぁ、自動魔力回復でカバーできる程度なので問題はないと思う。
「よし、まずは一番相性が良さそうな雷魔法から訓練しようかな!」
『みゃっ!』
ミャーを教官(?)にしつつ、訓練開始。屋敷に放置されていたペンキで壁に大きな丸を描き、的にする。
「――雷よ、轟け!」
初級の呪文を唱えると、私の指先から雷が走り、壁に当たって消えた。
パチッパチッという何かが跳ねるような音が地下室に反響し……消えていく。
「お……おぉ! 面白ーい!」
自分の手から雷が飛んでいくのって、なんかこう、凄く楽しい!
「……あれ?」
興奮していたので最初は気づかなかったけど、壁にはちょっとした焦げ痕が残っている。あれ? ちゃんと結界は張られたはずなんだけど?
『みゃ』
しょうがないヤツだな、みたいな鳴き声を出してからミャーが自分の目の前に結界を展開した。四角じゃなくて、薄板一枚みたいな感じに。
まずは薄板状の結界の右側から尻尾で結界を叩いてみるミャー。カンカン、と甲高い音がするね。うん、普通の結界だ。
続けてミャーが左側から結界を叩いてみると――ぬる、みたいな感じで尻尾が結界を突き抜けてしまった。
えーっと、つまり?
「結界の外側からなら色々と防げるけど、内側からだと突き抜けちゃう感じ?」
『みゃ』
やっと分かったかとばかりに何度か頷くミャーだった。先に教えてくれてもいいじゃーん。
まぁ、結界の内側も硬かったら外に出られないし、攻撃もできないものね。そういう仕様なのだと思う。
「えーっと、じゃあ、結界をひっくり返せばいいのかな?」
『みゃ!』
ミャーが肯定してくれたので、試しにやってみる。……うん、気持ち結界の色が違う気がするね。
試しに初級の雷魔法をぶつけてみると――今回は、ちゃんと結界に弾かれた。もちろん壁には傷一つ付いていない。
というわけで練習再開。雷を発生させて、撃つ。発生させて、撃つ。
おぉ、これ、やっぱり楽しい! 男の子がエアガンを撃つのってこんな感じなのかな!?
「あははははっ!」
初めての感覚が楽しすぎて、調子に乗って魔法を連発する私だった。
『みゃあ!?』
おっとしまった。あまりに連発しすぎたせいか流れ弾ならぬ流れ雷がミャーの足元に。
『みゃっ! みゃっ!』
「あ、はい。ごめんなさい」
その場で正座をしてミャーにお説教(?)される私だった。
◇
「う~ん。流れ弾かぁ。地下室で訓練するなら対策を考えなきゃね」
でも壁に当たると不規則に跳ね返るからなぁ。なにかクッションでも置く? ……燃えたり裂けたりする未来しか見えないね。
威力を調整して魔法を放つ? でもそれじゃあ中級とか上級の攻撃魔法は練習できないし……。
あとは、結界で的の四方を囲んで、飛び散らないようにするとか?
「……あ、そうだ」
きゅぴーんときた私だった。
思い出したのは天井付近に灯火を発動させたミャーの姿。
灯火を自分から離れた場所に展開できるなら、攻撃魔法もできるのでは?
まず、結界で透明な四角を作る。穴や隙間のない、完全に密閉された四角だ。
で、その中に攻撃魔法を発生させれば、魔法が飛び散ることはないはずだ。
『みゃー……?』
理解できないとばかりに首をかしげるミャー。ふふふ、ならば実践してみせましょう!
「――雷よ、轟け!」
四角い結界の中に魔法を発生させるイメージ。
しかし、雷は私の指先から発生し、四角い結界へと向かっていって……途中で消えた。
「……ふっ、最初から上手く行くとは思ってないよ。しかし私は――諦めない!」
ドヤ顔で宣言すると、なぜかミャーに『みゃー……』と呆れられてしまった。あれこういうときって『みゃーっ!(カッコイイ!)』って感じの反応するんじゃないの?
しかし私は知っている。
こういうのは――結果を出して黙らせればいいのだ!
「雷よ、轟け! 雷よ、轟け! 雷よ、轟け! 雷よ、轟け! 雷よ、轟け! 雷よ、轟け!」
ドッカンドッカンと雷魔法を連発していると、魔法の発動地点が段々と手元から離れていって――ついに、四角い結界の中で発動したのだった!
「わぁい! どうよミャーこれが努力の力――きゅう」
調子に乗って魔力を使いすぎたのか、立ちくらみを起こしてそのまま倒れてしまう私だった。
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