瑠美さん
「はぃ……ありがとうございます」
「ほらほら、さっさと済ませちゃおう!色々話したい事もあるから、ねっ!」
「そ、そうですね」
歯切れの悪い返事の俺とは対照的に、たまみさんは足取りも軽くポンポンと荷台から荷物を持っていく。
どうやら俺の部屋は玄関から一番近い部屋らしい、俺も荷物をどんどん運んでいく。
「やったぁ、これで終わりだね」
最後に残った冷蔵庫を二人で何とか部屋まで運び、トラックからの荷下ろしは午前中に終わらせることができた。
「すみません、手伝ってもらっちゃって」
「へーきへーき、一人じゃ大変でしょ」
「ここ全部で10部屋あるんだけどいま使ってるのは安成くんと私、もう一人は受付の瑠美ちゃん」
「会ったことあるでしょ?」
そう言われて、俺は面接の日の受付にいたちょっと怖いお姉さんを思い出していた。
「はい!面接の時に受付でお世話になりました」
「あの怖いお姉さんかぁ……」
俺はついボソリと声に出してしまう。
「ぁあ?怖くて悪かったなぁ〜?」
「誰が怖いお姉さんだって?ホラ言ってみろよ?」
部屋の入り口の方からガラの悪そうな声が俺に向かって浴びせられる。いつの間にか帰ってきていた瑠美さんに今の一言を聞かれてしまった様だ。
「親切に教えてやったっつ〜のにさぁ、二度とアタシにもの頼むなよ?」
「あと、先輩の言う事は絶対だからな覚えとけよ!」
物凄い勢いでドアを閉め、彼女は一番奥の部屋へ入っていった。
(参ったなぁ……)
殆ど声には出してないはずなんだけど、早速やらかしてしまったな。
しかし、部屋の入口で声を掛けられるまで足音一つしなかったし気配も全く感じなかった。廊下の床材から考えても足音一つ聞こえないのは明らかにおかしい……
「あらら、瑠美ちゃんご機嫌ななめ〜」
「大丈夫、仲良くなれるって。たまみお姉さんに任せなさいっ!」
そう言って自信満々の笑みを俺に向ける。
「はぁ……、ありがとうございます。」