たまみさん
「いいの!いいの!これから一緒に暮らすんだからこの位全然平気だよ。こちらこそよろしくね」
「え…… 、どう言う事ですか一緒に暮らすって?」
「言葉のまんまだよぉ、私達はここに一緒に生活するのだよ!」
そう言うと、ニコニコしながら建物の方へ両手を大きく広げ、ウンウンと大きく頷いて俺を見た。
「えっ、そうなんですか?寮が男女共同だとは聞いていなかったので、俺も確認しなかったのはよくなかったと思います
が、何というか年頃の男女が同じ建物に一緒に住むと言うのは……」
正直な話、俺は女性が苦手である。幼い頃に母親を亡くしているのもあるが、実家は神社で空手の道場を開いている親父に育てられた上、高校は男子高で女性と接する機会は殆ど無かった。
「へぇ〜、安成くんは私と同じ建物で生活すると、何がどうなってしまうと言うのだね?」
「お姉さんにはさっぱりなんだけど、どうなっちゃうのか是非詳しく教えてくれないかなぁ。」
そう言うと、たまみさんはニヤニヤしながら俺の顔を下から覗き込んできた。
たまみさんは面接の時からとても距離感が近く、私の事は下の名前で呼ぶ様にと言われた。
苗字で呼ぶ事を許してくれなかったので、仕方なく下の名前で呼んでいるのだが、女性が苦手な俺にはとても収まりが悪い。
「その……たまみさんの他にも何人か住んでる人いるんですよね?」
「うん!今は出掛けてるよ、そのうち帰ってくるんじゃ無いかな」
たまみさんはそう言いながら一度大きく伸びをしてからトラックを覗き込んだ。
「えぇー、荷物これしか無いの?随分と少ないんだね」
「心配?大丈夫だよ!安成くんもきっと馴染めるから安心してお姉さんに任せなさいっ!」
と、言いながら胸をバンバン叩くのだが、たまみさんの胸はかなり大きいので目のやり場にとても困る……。
そして自信満々の彼女を見ると不安と期待の入り混じった何とも言えない気持ちになり、俺はたまみさんには聞こえない様に小さく溜め息をついたのだった。
「はぃ……ありがとうございます。」