夕飯その9
瑠美さんがケラケラと笑いながら俺の首に腕をまわして、ぐいと引き寄せる。
俺もそこそこの体格でかなり力もあると思っているのだが、いくら身長が同じ位有るとは言えこの人のパワーは並はずれている、本当に女の人なのか?
必死に首に回された振り解こうとするのだ腕が首にガッチリ極まってる。
「いやっ、あのっ、猫島さん!あのっ……当たってます!当たってます!」
瑠美さんはTシャツとタイトなジーンズのラフな格好で、実はかなりスタイルが良い。そんなだからグイグイと首を引かれるたびに俺の肘がその大きな胸にボヨンボヨンと当たり困ってしまう。
「痛たたたたたっ!」
「胸がっ…… 、胸、胸っ!!」
余りの痛さに回された二〜三度腕をタップする。
「胸がどうしたって、ホントは嬉しいんだろ」
瑠美さんは面白がって更にグイグイ引き寄せてくる。
「瑠美ちゃん、もうその位にしてあげなよぉ……」
「きゃー安成くんの生命の炎があぁぁ……板ちゃん助けて〜!」
たまみさんは今にも泣き出しそうだ。
「先輩……参りました、マジで勘弁してくださいギブですギブ!」
(やばっ、視界に霧がかかり始めてきた……)
俺は更にタップし続け、ギブアップを求めたが解放されたのは落ちる寸前だった……
「まっ、今日はこん位にしてやっか!」
「今後もアタシの命令は絶対だぞ!分かったか?」
朦朧とする意識の中、空手部活の先輩達の悪夢が蘇えり、走馬灯が見える……意識が落ちかけた俺は、フラッと桜庭さんの方にもたれてしまった。
「キャーーッ!ちょ、ちょっと!何してんのよ!」
「どさくさに紛れて!この変態!もっとそっち行きなさいよ!」
桜庭さんが反射的に力一杯グーパンで押し返し、やっと意識を取り戻した。
そして俺がそんな目に遭っている間に、ご飯の準備は整っていたのであった。