夕飯その2
色々わかった事がある。ここは宿泊をして人間ドックや健康診断を受けて貰う施設で、そこに献血センターとホスピスも併設し、献血者は無料・格安で一部のサービスを利用できる為、毎日かなりの人が来ているらしい。
元々温泉施設な事もあり入浴やレストラン等、様々なサービスも充実している。
そして、たまみさんはホスピス所属のカウンセラー、板場先生は健診施設の管理を任されているらしい。
桜庭さんは元々地元観光バスのガイドだったのだが利用客からの評判がとても良く、それならと起業した観光バスで成功し、古くからの友人である二人を誘い今の事業を立ち上げ、軌道に乗った後もバスガイドを続けているらしい。
この建物は地上五階地下一階で最上階が事務所、四階はホスピス、三階は宿泊施設になっており一階と二階は健診施設と献血ルーム、そして地下は入浴施設とレストランなどのサービス施設が入っている。
土曜日は献血センターのみ稼働しているが、もう夕方なので利用者は殆ど居ない。俺はエレベーターで五階へ上がり、事務所のドアをノックして入る。
一礼して部屋に入るとデスクに向かう板場先生、来客用のソファーに仰向けで寝転がりスマホを眺める桜庭さんが見えた。
「失礼します、お仕事中にすみません」
「今、たまみさんが夕飯の支度をしてくれてるんですがお二人も是非にって……」
板場先生はこちらを向いてくれたが、桜庭さんは俺の方を向きもせずスマホを見たまま間の抜けた声で『ほぁ〜い。たまちゃんが何〜?』欠伸が混ざった酷過ぎる返事だ……
「折角ですから一緒に食べませんか?」