再生
無邪気にナマズを調理する龍平
それを眺めるあさこ
そして驚いたことに真横を向くと
木片やトタンでつくられた小屋が建っていた
干し肉
焼けたヒキガエル
干された洗濯物
積まれた干草
放し飼いされたブタとヤギ
生活感がそこには漂っていたーーーーー
なんと
一日の撮影現場ではなかったのだ
ナマズは慣れた手捌きで
なされるがまま調理されていくーーー
思わず声をかけた
水を欲しがりビチビチとうねる大量のナマズ
を警戒しながら龍平のもとへ近寄る
「何やってんの、、、」
「?、、、あさこか、、、?
何故わかった?」
いそいで撮影を止めた
「本当に龍平?」
言葉を交えてしまったという顔をする龍平
「ちがう…昔の俺はもう思い出すな…」
煙たい顔をする
「俺は、、、、」
ー回想ー
俺は土手川 龍平
いつも通りの日常を過ごしていた
都内屈指の大手予備校へ通い
国際教養、スポーツ
日本文化、哲学、株、資産運用の勉強など
マイナスなんてない、
不満こそ贅沢
充分な生活だった
だが俺は感じていたーーーーー
自分の中に
蟠りがあることを
そして俺はある日、全てを投げ出した
クレジットカードや資産
習い事の全て
ありとあらゆる決まり事を捨てた
そして家を出てここに来たーーーー
俺は人としては真面目だが
大きくはないことを悟ったのだ
「俺はもう学校を辞めて全てを忘れる」
「何があったのーーーー」
「ーーーーーっっそんな目で見るな、そして近寄るな」
「この小屋は自分で作ったの?」
「ーーーーーっッチ、 早く去れ、、、そして俺のことは全て忘れろーーーーー」
まるで先住民族のようだ
彼に一体何があったのか、これ以上は何も聞かなかった
私はその場から去ろうとした
「冷やかすつもりじゃないけどとにかく元気そうでよかった、んじゃ」
「待てーーーーーー」
「?」
「コレをやる」
串刺しにされ見事に焼けたナマズを手渡された
うへぁ、、、
引き顔で串を持った
「・・・お前は今、何か気がかりか?」
!
龍平は真っ直ぐな目でコチラを見ている
「心に揺らぎがある、、、落ち着きのない鼓動、、、、、」
・・・
「、、、、龍平は恋をしたことがある?」
「俺は女遊びに興味はないーーー」
「そんなんじゃなくて、恋に落ちて付き合うみたいな」
「、、、、知らぬ、俺は俺だ」
この男の一生が
今後どうなっていくのか見届けてやりたいところだ
「命短し、恋せよ乙女、、、、、
お前は乙女か、、、、、?」
「何言ってんの」
「恋はわからない、、、が、お前のその激しく揺れる鼓動の波が凪のように美しくあらんことを、、、」
応援されている、、、のかな、、?
彼の言葉に後押しされ嬉しかったのか
手に持ったナマズの串焼きを口にした
おいしい、、、、
加賀見くんのところへ行こう
「ありがとう、龍平」
「、、、、今度からドラゴンピースと呼べ」
そして、ドラゴンピースの元を去った