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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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黒蛇(神山)

 消えたユキヒコを探し、神山城から松明を持った兵士たちが歩き回る。そんな中、アデルたちは彼らに先行して森の中へと入っていた。


「……この辺りですよね」


 アデルはキョロキョロと辺りを見回す。森の中に届く月明りは限られており、手にした松明が無ければほぼ真っ暗闇だ。


「ねぇ。なんでこんな一直線に進んでんの?」


 フウカが不思議そうに尋ねる。


 アデルたちにはフウカとヒミコも同行していた。アデルたちはまるでどこにユキヒコがいるのか知っているかのように一直線に進んでいる。


「頼んだんですよ」


「頼んだ? さっきから何言ってんの?」


 アデルの言葉の意味が全く分からず、フウカは苛立った。


「アデル様、あそこに馬が!」


 神竜騎士のエレイーズが声を上げ、前方を指さす。そこには確かに乗り手のいない馬がおり、地面に生えた草を食んでいた。


 それを見てエレイーズは駆け出す。


「待て」


 そのエレイーズをイルアーナが引き止めた。


「なぜです?」


「罠かもしれぬ。迂闊に近づくな」


 イルアーナは上の方を見ながら警告する。


「罠? 何かいるのですか?」


 エレイーズは剣に手をかけ、イルアーナの見ている木の上を見上げた。


「……罠とは失礼だな」


 すると木の上から声が響いてきた。そして黒い影がすっと上から落ちて来る。それは黒装束に身を包んだ者だった。


「黒蛇!?」


 フウカが刀を抜き放ちながら声を上げる。


「ま、待ってください! 敵ではない……と思います」


 慌ててアデルがフウカの行動を制した。


「敵じゃないって……どういうこと? ここに来た時も、アンタ襲われたじゃん」


「そ、それはそうなんですけど……どうなんでしょう?」


 アデル自身も不安そうに、その黒装束の人物に目を向ける。


「あぁ、あれはすまなかった。そんな異様な気配を放たれては、こちらとしても牽制せずにはいられなかった」


 黒装束の人物は苦笑した。


「その埋め合わせはしてれたのだろうな?」


 イルアーナが尋ねる。


「お前たちのことを信用したわけではないが……ひとまず荷物は渡そう」


 黒装束の人物が後ろを振り返る。すると別の黒装束たちが縛られたユキヒコを連れて現れた。


「んー、んー!」


 口を布で封じられたユキヒコが何かを訴えるが、それは言葉になっていない。黒装束がユキヒコの背中を突き飛ばすと、ユキヒコはアデルたちの前に倒れた。


「ありがとうございます……」


 アデルは礼をする。だがその注意はユキヒコではなく、ユキヒコを突き飛ばした黒装束に向けられていた。 


「あの……もしかして、何か大きい宝石の付いた物をお持ちですか?」


「あぁ、あれか」


 黒装束たちは互いに視線をかわし、何か意思疎通をする。そして一人の黒装束が懐から「鳳凰章」を取り出した。


「わぁ、それです! それも渡していただきたくて……」


 アデルは顔を輝かせ、黒装束にお願いをする。


「まずはあれが何なのか、説明してもらってからだ」


 黒装束に言われ、アデルはことの事情を説明した。もっともその説明はたどたどしく、ほとんどは隣にいたイルアーナが説明することとなった。


「ほう、そんなことになっていたとは……」


 黒装束は興味深げに小さく頷く。


「マジで? 本当にそんなことが?」


 一方で一緒に話を聞いていたフウカは信じられない様子だった。


「私の知らないことも多いですが、本当の事でしょう」


 ヒミコがそんなフウカに声をかける。


「っていうか、コイツらにそんな話していいの? けっこう大事なことなんでしょ? ヒミツは守らないと!」


 フウカが少し声を荒げる。自分がカズハの秘密を漏らしたことはすっかり忘れているようだ。


「大丈夫ですよ、この方たちのことは信頼してますから」


 アデルは笑顔でそう言った。


「なぜ信頼されるのかはわからんが……余程、同胞たちの行いが良かったのか」


 そう言いながら黒装束が頭巾を脱ぐ。


 その下から現れた顔は……ダークエルフのものだった。

お読みいただきありがとうございました。

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