王(金麗城)
誤字報告ありがとうございました。
市ケ谷家の当主とその母親、カオリとマイコは着物とドレスの中間のような服を着ていた。カオリは幼さの残る端正な顔立ちで、勝気そうな表情をしていた。マイコのほうは上品な顔立ちでおっとりとした印象を受ける。
カオリは腕組をして、近付いてくるアデルを睨んでいた。
「ど、どうも、アデルです」
アデルは頭を下げながらカオリたちに近付く。
「……わたくしの前に膝まづきなさい」
「え?」
カオリに言われ、アデルは戸惑う。しかし言われた通り、地面に膝をついた。
「オーホッホッホッ! 素直でよろしくてよ!」
そのアデルを見てカオリは満足げに高笑いをする。
(……ここに来て「高笑いお嬢さまキャラ」か。なかなかいいな)
なかなか現実では見ないタイプのカオリを見て、アデルは噛み締めるようにうなずいた。
「いけませんよ、カオリ。アデル殿はお客人なのですから」
マイコがそんなカオリを止める。
「あら、そうですわね。失礼いたしましたわ。わたくしが第二十七代市ケ谷家当主、市ケ谷香織です。そしてこちらは先代当主、市ケ谷舞子ですわ」
カオリは自分とマイコの紹介をした。
名前:市ケ谷香織
所属:市ケ谷家
指揮 70
武力 38
智謀 65
内政 110
魔力 44
名前:市ケ谷舞子
所属:市ケ谷家
指揮 81
武力 29
智謀 77
内政 83
魔力 26
(新田家と違ってこっちは内政系なんだな……)
アデルは二人のステータスを見て思う。
「よ、よろしくお願いします」
立ち上がりながら、アデルは頭を下げた。
「お久しぶりです、カオリ様。マイコ様」
近付いてきたイルヴァが優雅にお辞儀をする。
「イルヴァ殿。遠路はるばるよくお越しくださいましたわ。それに異国の王を客人としてお迎え出来て、嬉しい限りです」
カオリは笑顔でイルヴァに会釈をした。
(意外と好意的に受け入れてもらえてるのかな……)
アデルは少し意外だった。外部との接触に積極的な新田家よりも、閉鎖的な市ケ谷家のほうが歓迎されないと思っていたからだ。
「他の方々も紹介していただけるかしら?」
カオリはアデルに向き直ると、優雅な笑みを浮かべた。
「あぁ、ええっと……」
アデルは後ろを振り返る。さすがにシーパラディンやジェントアウルなどは連れてこなかったが、格好はバラバラでとても家臣団には見えない。
「ひょーちゃんなの!」
真っ先にとてとてと前に出てきたひょーちゃんが元気よく自己紹介する。
「あら、そうですの? 素敵なレディですこと」
カオリは笑顔でひょーちゃんを見つめた。
「あははは、そ、そうなんですよ」
アデルはぎこちない笑みを浮かべながら、慌ててひょーちゃんを背後に隠す。
「イルアーナだ。アデルの補佐をしている」
アデルの横に進み出たイルアーナが油断なくカオリを見据えながら言った。
「あたしはフレデリカ。傭兵部隊を任されてる」
フレデリカが不敵な笑みを浮かべながら言う。
「……私は神竜騎士団の団長、エレイーズです」
周囲の様子を見ながら、エレイーズがやや遅れて進み出た。
そのほかの者たちは互いに様子を窺いながら、名乗り出るべきか迷っていた。さずがに全員が自己紹介をする必要はないと思っているのだ。リオは名乗り出ようとしていたが、周囲の者に止められていた。
「なるほど。よくわかりましたわ」
カオリは満足げに頷く。
(ちゃんと男としての立場をわきまえているようね……)
アデルが最初にカオリらに対し敬意を表している。さらに女性陣が要職を占めていることで、神竜王国ダルフェニアも女性上位の国だと確信していた。
(「王」と聞いていましたが、さきほどからの態度を見てもそんな様子は全くありませんわ。恐らく役人たちを束ねる立場の人間を「王」と呼んでいるのでしょうね。となると……)
カオリはアデルの同行者たちに目線を走らせる。
(本当の「王」の立場にあるのは……あの子たちかしら)
カオリが目をつけたのは、興味なさそうにボーッとしているポチと、退屈そうに腕を組んでいるピーコの二人だった。
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