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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十四章 真相の章

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新たな旅(ロスルー)

誤字報告ありがとうございました。


「と、ところでメモリークリスタルはどうなのだ?」


 イルアーナが平静を装いつつ話題を変える。


「アデル君のお父さんの仮説だと、ラーベル教は元から一個は持ってたんじゃないかってことだよね。確かに聞いた話だと反乱を起こした奴隷たちのリーダーは八人いたってことなのに、そのリーダーたちが作ったって国は七個しかないのは不思議だったんだよね」


 ラーゲンハルトは楽し気に語った。疑問が解決されたことで知的好奇心が満たされたのだろう。


「皇帝ジークムント……の中身が魔法文明に反乱を起こしたリーダーの一人の可能性があるということだな。その場合、元々所持していた物に加えカザラス帝国のメモリークリスタルも所持しているのは確実だ。エレンツィア王国、エターニア王国の物もジークムントの手に渡っている可能性も高いだろう」


 イルアーナが険しい表情で言った。


「イルヴァさんに確認してもらったんですけど、ラングール共和国のメモリークリスタルも無くなっていたそうです。たぶんカザラス帝国側に通じてた人たちが持ち去ったんじゃないかって……」


 アデルはイルヴァを通じてラングール共和国の王位継承の証「海の結晶」の行方を調べてもらっていた。しかし複数の公爵家によって共同管理されていた「海の結晶」はすでに持ち去られてしまっていた。すでに王制ではなくなっているラングール共和国では、王位継承の証である「海の結晶」は他の宝物と同程度の扱いでしかなく、特別強固な警備がとられているわけではなかったのだ。


「でもそんだけメモリークリスタルを持ってるのに、今のところ脅威なのは変異体とかだけだよね? メモリークリスタルってそこまですごい物じゃないのかな」


 ラーゲンハルトが首をかしげる。


「どうだろうな。知識だけ得られたところで魔法が使えるわけではない。実際に使いこなせるようになるまでは長い修練が必要となる」


「そっか。確かに魔法は練習必要だもんね」


 イルアーナに言われ、ラーゲンハルトは納得する。ラーゲンハルトも魔法を練習しており、簡単な魔法ならいくつか扱えるようになっていた。しかも持ち前の頭の柔らかさから、周りが驚くほど短期間で習得出来ている。ただ要領のいいラーゲンハルトからすれば魔法の習得は手こずったほうなのであろう。


「強力な魔法であれば魔力も必要となる。それに表には効果が分かりにくい魔法もあるだろう。いまのところ力が見えないとはいえ、メモリークリスタルを過小評価するのは危険だ」


「もしかすると解読するのも結構大変なのかもしれないですしね。ただ頑張って集めてたんだから、それに見合った力が得られる見込みなんでしょうけど」


 イルアーナの話を聞き、アデルが言った。


「うちもメモリークリスタルを使えないの?」


 ラーゲンハルトがふとアデルに尋ねる。


「う、う~ん、どうでしょう……」


「私は反対だ。秘術魔法など世の摂理に反する力に頼るべきではない」


 イルアーナは強い口調で反対した。


(そうなんだよなぁ……)


 アデルは二人のやり取りを聞き悩む。秘術魔法を毛嫌いする意見が多いため、なんとなくメモリークリスタルの力を使うことに忌避感があった。


「その……メモリークリスタルの力って、使ったらどうなると思います?」


 アデルはラーゲンハルトに尋ねる。


「そっか、使えるかどうかしか気にしてなかったけど、その先のことか」


 ラーゲンハルトははっとした様子で頭を巡らせ始める。


「……メモリークリスタルに入ってる魔法が強力であれば、もちろんそれに頼ることになる。そうなれば当然、魔法を使える者の発言権が増し、権力が強くなる。どんどんうちの国が魔法文明化していくかもね。アデル君がそれを嫌って、強力な魔法を使えてもそんなに優遇しないって話になれば、その人材はラーベル教会側に寝返っちゃうよね。アデル君だけがメモリークリスタルを利用するとか? でもアデル君って得意な魔法が偏ってるし、そもそもメモリークリスタルが特定の人間だけ知識を得られるようにできる物なのかどうかもわからないか……」


 ブツブツと呟きながら、ラーゲンハルトは考えをまとめる。


「うん、確かに不確定要素が多すぎて、デメリットの方が大きいかもしれない。そこまで考えてたんだ。さすがアデル君だね!」


「え?」


 ラーゲンハルトに言われ、アデルは呆気にとられる。アデルはただ自分の考えがまとまらなかったから質問しただけなのだが、違う受け取られ方をされてしまったようだ。


「当然だ。我々がアデルを王に担いでいるのは、アデルが強いからではない。広い視野と、先見性を併せ持っているからだ」


「そうだよねぇ。ドラゴンを神様にしようって話も最初はどうかと思ったけど、今はもう完全に定着したからね。しかも重要な場面のみで使うから、兵士たちもその力に頼り過ぎないし、神竜ちゃんたちの神秘性とありがたみが増してる。説明下手だから何も考えて無さそうに見えるけど、アデル君はむちゃくちゃ先のことまで考えてるんだよね」


「え? え?」


 勝手に自分の株が上がっていくのを目撃し、アデルはオロオロすることしか出来なかった。


「ひょーちゃんもお昼ごはん食べながら、夜ごはんのことまで考えてるの!」


 ひょーちゃんが目をキラキラさせながら先のことを見据えているアピールをする。


「ほお、すごいな。我もおやつのクッキーのことまでなら考えていたが」


 ピーコが感心したように頷いた。


「お腹が空いたときに食べれる物を食べればいいじゃん」


 ポチは全く関心がなさそうだった。


「はいはい、みんな偉いね!」


 ラーゲンハルトがそんな神竜たちをにこやかに褒める。


「しかし、我々が使わないからと言って奴らにメモリークリスタルを渡すわけには行かぬだろう」


 イルアーナがアデルを見つめる。


「は、はい。なので色々と計画してきました」


 アデルは意を決したように言う。


「……行きましょう、イズミに!」


 こうしてイズミへの旅の準備が始まった。

お読みいただきありがとうございました。

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