怪鳥(ラパイソ)
誤字報告ありがとうございました。
「じ、実力ってどう示せば……」
アデルはオロオロしながら言う。
「そうだな……」
ガントは少し考え込んだ。
「ドラゴンを従えているのならドラゴンの一匹でも見せてみろ」
意地の悪い笑みを浮かべながらガントが言う。ラヒドの言葉をまったく信用していない様子だった。
「ドラゴンって……」
アデルは困惑しながら神竜たちのほうを見る。
「ひょーちゃんなの!」
ひょーちゃんは元気よく挨拶したが、ガントは眉をひそめただけだった。
「なんじゃ、もうとっくに見ているじゃろうに。変なことを言うやつじゃのう」
ピーコが首をひねる。
(……駄目だ。もし変身したところで、この子たちの大きさじゃ信用してもらえない!)
アデルは焦って考えるが、妙案は出なかった。
(ワイバーンさんに来てもらうか? だけど見せるためだけに呼ぶのもなぁ……)
悩み始めるアデル。
その時、外がにわかに騒がしくなった。
住民の悲鳴や叫び声が屋敷の中に聞こえてくる。
「た、大変です!」
そこに衛兵の一人が慌てて飛び込んできた。
「やっとご飯の時間かい?」
「何事だ!?」
イャルナを無視してガントは衛兵に尋ねた。
「ロック鳥が現れました! しかも多数!」
「何だと!?」
衛兵の報告にガントの表情が強張る。
「ロック鳥……?」
聞き覚えのある名にアデルの表情が曇る。ゲームなどではお馴染みのモンスターだった。
「ロック鳥か。厄介じゃな」
ピーコが眉をひそめる。
「ロック鳥……やっぱり石化能力とかあるの?」
アデルはピーコに尋ねた。ロック鳥は大きさが10メートルほどもある猛禽類のような怪鳥として描かれることが多い。さらに名前にその影響されてか、ゲームによっては相手を石化する能力を持っていることもあった。
「石化? そんな能力あるわけないじゃろ」
呆れたようにピーコが言う。
「うるさいだけ」
ポチがボソッと呟く。
「うるさい?」
「ロック鳥は凄まじい鳴き声で周囲の生物を麻痺させるのじゃ。食おうとしたらピーピーうるさかったのう」
ポチの代わりにピーコが答えた。
「そ、それやばくない?」
アデルが不安げに尋ねる。ガントは青ざめた顔で衛兵たちに指示を飛ばしていた。
「ふむ。まあ人間レベルではヤバいかもしれないのう。我らやワイバーンたちともなればその程度の攻撃は効かぬがな」
「力も相当強いんでしょ?」
「力だけならワイバーンたちと同レベルかのう。ただスピードや雷の力がある分、ワイバーンが圧勝じゃがな」
ピーコがドヤ顔で言う。
「シマちゃんもつよつよなの!」
ひょーちゃんが笑顔で言った。シマエナーガもロック鳥より強いと言いたいのだろう。
「ワイバーン並みか。手強いな」
イルアーナが外の様子を窺いながら呟く。
「アデル様、急いで避難を!」
神竜騎士団のクライフがアデルに進言した。いつのまにかイャルナの姿は消えている。蛮族の衛兵たちがどこかへ避難させたのだろう。
「良かったな。実力を示せるぞ」
サラディオが皮肉っぽく言う。ラヒドはすでに部下を従えて表へと出て行っていた。
「なぜ我らがお前たちを守ってやらねばならんのだ。まだ正式に手を組んだわけでもないのだぞ」
イルアーナがサラディオを睨んだ。
「と、とにかくいったん表に出て様子を見ましょう! どうにもできなそうだったら逃げます!」
アデルは弓を手にしながら指示を出した。そしてアデル一行は屋敷の外へと出る。
「あれか……」
空を見上げたアデルは険しい顔になった。
空には確かに巨大な鳥が複数飛んでいた。住民たちを威嚇しているのか、町の上空を旋回している。その身体は薄茶色の羽で覆われていた。
「こ、こっちに来るな、化け物め!」
蛮族の兵士たちが槍や弓を構えて叫ぶ。しかし巨大な怪鳥の前ではいかにも頼りなかった。弓を構えた兵士が矢を放つが、ロック鳥の巨大さに目測を見誤っており、ほとんどが届くことなく地面に落ちている。
「うわぁっ……」
アデルもロック鳥を見て絶句する。その時、空を飛ぶロック鳥と目があった気がした。
「へ?」
ロック鳥たちは大きくひと羽ばたきして空中で制止すると、アデルのほう目掛けて急降下してくる。
「に、逃げてください!」
アデルは弓を構えながらそう叫んだ。
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