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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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鳥(ロスルー)

誤字報告ありがとうございました。

「アデル様方のお乗りになる船だ! 細部まで気を抜くな!」


 プニャタが声を張り上げる。ロスルーでは急ピッチで砂漠を渡るための船、砂船の制作がすすめられていた。


 その中心となっているのはオークたちだ。戦闘時は非常に頼りになる彼らだが、非戦闘時は優秀な職人へと早変わりする。アデルのアイデアは見事に実現されていった。


 しかしアデルに細かい船の知識があるわけではない。アデルが大雑把に思い描いたものをダークエルフたちが論理的に解釈し、それをオークたちが形にするという流れだった。


「おい、なんだあれは!?」


 そんな中、ロスルーの住民がにわかに騒がしくなる。彼らは一様に空を見上げていた。空からはいくつもの影がロスルーに接近している。それはミドルンからやってきた、ハチアリたちとコカトリスたちだった。アデルが砂漠への旅に同行するためにやってきたのだ。


(……こう見ると、やっぱりちょっと怖いな)


 ロスルー城の前の広場でアデルは近づいてくるハチアリたちを眺めながら思った。虫の大軍が羽音を轟かせながら飛んでくるのを見るのはどうしても生理的に忌避感が生まれる。 


 そしてハチアリ、コカトリスたちはロスルー城前の広場に着地した。遠巻きに見ている住民たちもアデルと同じ気持ちなのか、ハチアリの大軍を見て思わず後ずさる。


 もっとも、ハチアリたちは非常に統制のとれた種族であり、個々の判断で相手に襲い掛かったりはしない。気性の荒い異種族の多い中、一番安全な種族でもあった。


「カシラ! お待たせいたしやした!」


 コカトリスの長、シャモンがアデルの元に駆け寄り頭を下げる。2メートルもある鶏のような姿のコカトリスが少年のようなアデルに頭を下げているのは奇妙な光景だった。


 コカトリスの大きな体はそれだけでも脅威だが、一番の武器は得意としている土魔法だ。速くはないものの空を飛ぶこともでき、性格の凶暴さも相まってヴィーケン王国時代は恐れられている魔物でもあった。


「お勤めご苦労様です!」


 他のコカトリスたちも頭を下げる。今回は十人のコカトリスがアデルに同行することになっていた。


(その口調で「お勤め」って言われると違うものを想像しちゃうな……)


 アデルは苦笑いを浮かべながらコカトリスたちに頭を下げた。


「ごきげんよう、アデルさん」


 ハチアリたちとともにやってきたハニー・アントホーネットが上品にお辞儀をする。アリに近いハチアリたちとは違いハニーの見た目はハチに近く、黄色と黒の身体は相当派手に見えた。首の周りにはモコモコの毛が生え、襟巻をしているようにも見える。


「どうもハニーさん。砂漠越え大丈夫そうですか?」


 アデルはハニーにも頭を下げながら尋ねた。


「どうでしょうね。わたくしたちとしても初めての経験です。ですけれども、我々は寒さには弱いですが暑さには強いのできっと大丈夫でしょう」


「さすがハニーの姉さん。頼もしい限りや」


「オホホホ、お上手ですのね」


 シャモンの言葉にハニーは品を作って笑みを浮かべる。シャモンたちとハニーたちはしばらく行動を共にしており、だいぶ仲も良くなったようだった。


(鳥なのに土魔法が得意なのとアリなのに風魔法が得意なところのチグハグさとかも似てるよな……)


 アデルは談笑する二人を見てそんなことを思った。


「ホッホーッ! お待ちください!」


 そこに新たな影が空から現れる。大きさは人間より一回り小さく、ミミズクのような姿をしている。丸みのあるモフモフの身体にはタキシードのような服をまとっていた。


「あ、セバスチャンさん」


 アデルは顔を輝かせる。それはジェントアウルの族長、セバスチャンであった。古の森に住むジェントアウルは戦闘力が低い。その代わりに他の動物と意思疎通する力があり、森の生き物たちから得た情報で生活を守っている。古の森でアデルたちと出会い、アデルたちの保護を得る約束となっていた。


「聞きましたぞ。ぜひセバスチャンもお供させてください。きっとお役に立って見せますぞ」


 セバスチャンはアデルの近くに着地すると、胸に手(翼)を当てて恭しく頭を下げた。ジェントアウルは耳が良く、かなり先の音まで聞き分けることが出来る。


「なんやワレ。新入りの鳥のくせに挨拶もなしかい!」


 シャモンがセバスチャンに凄んで見せる。


「これは失礼いたしました。わたくしめはセバスチャン、紳士淑女の皆様にお仕えすることを喜びとしております」


 セバスチャンはシャモンにも丁寧にお辞儀をした。


(鳥の社会は縦社会なんだろうか……)


 その様子を見ながらアデルは疑問に思った。


「セバスチャンさんは僕に同行するためにわざわざいらしてくださったんですか?」


 アデルは尋ねる。アデルたちが砂漠に向かうことはジェントアウルたちやエルフにも伝えていないことだった。


「もちろんですとも。こう見えても鳥の端くれ、風の噂には敏感でございます」


 セバスチャンが体を揺らして微笑む。実際は住む場所の下見にやって来て、たまたま話をききつけただけだった。


(まあポチがいれば大丈夫そうだけど、セバスチャンさんがいてもいいか……)


 今回の旅には神竜娘たちも同行することになっていた。砂船に必要な風魔法を使えるピーコ、植物や動物に詳しいポチ、暑さ対策で氷を操ることが出来るひょーちゃんは必須であろうという話になっており、それならばと残ったしーちゃんも連れて行くこととなっている。


 そして日は進み、砂漠へと出発する日となった。

お読みいただきありがとうございました。

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