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編成(ロスルー)

更新遅れて申し訳ありません

「嘘だろ? いったいどうなってるんだ!?」


「これがダルフェニアの国力か……!」


 ラヒドとサラディオはアデルたちの準備が整うまでロスルーに滞在することとなった。そして他の蛮族たちと同様、食堂で二品定食を見て凍り付いていた。


 一方、アデルたちは砂漠を超えて蛮族たちの女王の元へと向かうメンバーの人選に入っていた。


「砂漠を超えるとなれば、やはり空を飛べる者たちが良いだろうな」


 イルアーナが発言する。その発言に多くのものが賛同して頷いた。


「それが一番手っ取り早いけどね。ただその後のことを考えると、陸路だけで向かえるようにしたいところだ」


 だがラーゲンハルトが異なる意見を言う。


「もちろん陸路でも行ければいいが、まだ交易をするかどうかも決まっておらぬのだろう? 最初に話をするだけであれば空を飛べる者たち中心で編成を行い、運んでもらうのが一番効率が良いのではないか?」


 イルアーナがラーゲンハルトに目を向けた。


「最初に話し合うからこそだよ。さっきの話し合いで感じたけど、蛮族たちは砂漠という壁に絶対の信頼を置いている。よそ者が砂漠を超えれるわけがない、てね。だから僕らがそれを超えられるところを見せることに意味がある。舐められたら、今までみたいに蛮族がうちの村を襲ったりすることもあるだろうしね」


 ラーゲンハルトはニヤニヤと笑いながら話す。


「なるほど。だがもし失敗すれば、それこそ舐められるのではないか?」


「あはは、その時は『さすがですねー!』とか笑って下手に出ればいいんじゃない? まあアデル君の発想とうちの異種族ちゃんたちの力を合わせれば、失敗することはないと思ってるけど」


「確かにアデルであれば杞憂は不要か」


 ラーゲンハルトとイルアーナの会話を聞いた一同の視線がアデルに集まる。アデルは居心地が悪そうに身じろぎした。


「え、えっと……空を飛べる方たちを多く連れて行くのは必要だと思います。連絡や偵察は必須ですし、広い砂漠では現在位置の把握が難しいでしょうから……」


 アデルは話しながら頭をフル回転させた。


(……どうしよう。砂漠なんて知らないぞ? 砂漠戦用の機体とか防塵以外に何かしてあるのかな……)


 アデルには砂漠と言えばラクダに乗った人が歩いているイメージしかない。ゲーム知識でもロボット物で砂漠戦用機が登場するくらいしか知らなかった。


「ただラーゲンハルトさんのおっしゃる通り陸路の開拓もなるべく早く行いたいです。案内人の方がついてくださる今回が一番安全だと思うので、そこで試したいなと」


「わかった。しかしどうやって砂漠を超えるつもりだ?」


「そ、そこをこれから考えたいなと……」


 イルアーナに問われ、アデルはしどろもどろになる。


「あそこは砂の海だよ。照りつける太陽と、足を絡めとる砂の地面が延々と続く。なかなか難しいよね」


 ラーゲンハルトが呟く。


(砂の……海?)


 それを聞き、アデルはハッとなった。


「そ、それですよ、ラーゲンハルトさん!」


「おっ、何か思いついた?」


 嬉々として声を上げるアデルをラーゲンハルトは楽しげに見つめた。


「簡単な話です! 海を渡るなら船を使えばいいんですよ!」


「船?」


 アデルの発言を聞き、一同はポカンとなる。


「その通りです。船と言っても底の平たいソリみたいなやつを作って帆を張り、風の力で砂漠を渡りましょう。風魔法の得意な方々は結構いますし」


「なるほど……確かにそれなら足場の悪さは克服できるけど……」


 アデルの言葉にラーゲンハルトは考え込む。


「だけどさすがに砂と水じゃ全然違くない? 砂との摩擦で、すぐに船の底がボロボロになっちゃいそうだけど」


 ラーゲンハルトは頭の中ですぐに試行して問題になりそうな点を指摘した。


「何かの毛皮でも貼ればいいのではないか? 色々倒してきたのだ。何か使える物があるだろう」


 イルアーナがアデルのフォローに回る。


「あっ、サンドワームがいいんじゃないですか? あれなら土の中を進んでるわけですから摩擦にも強いでしょうし」


「あったね、そんなの」


 アデルのセリフに今度はラーゲンハルトはハッとする。


 ダルフェニア領内にいたサンドワームは家畜を食べ人を襲うこともあったため、保護地域に指定された場所を除き多数が駆除された。その皮は何かに利用できないかと保存されていたのだった。しかし頑丈ではあるものの見た目や手触りがあまり良くなく、利用されないまま倉庫に眠っていた。


「では船はオークたちに作ってもらうとして……あとは風魔法を使う者の人選だな。やはり我々ダークエルフが中心となるか」


 イルアーナが腕組みをしながら言う。


「ハチアリさんたちがいいんじゃないですか? 空を飛べるし頑丈だし」


 ハチアリは1メートルほどの羽アリのような姿をした種族だった。ハニー・アントホーネットという名のハチのような姿の女王に率いられている。空を飛べるうえに、六本足の彼らであれば砂漠の上でもなんなく行動できるだろう。さらに風魔法と植物魔法を操ることもできた。


「いいね。あとはやっぱり土魔法も使える人たちがいるといいけど。慣れない砂漠で何があるかわかんないし」


「じゃあ……コカトリスさんたちですかね。空も飛べますし」


「いいんじゃない? 見た目も凄みがあるし」


 ラーゲンハルトとアデルが意見を出し合い、話はまとまっていく。


 こうして砂漠への遠征の準備は着々と整っていった。

お読みいただきありがとうございました。

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