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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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初対面(ロスルー)

更新めちゃくちゃ遅れて申し訳ありません。


誤字報告ありがとうございました。

「……んで、話は終わったのか?」


 しばらく黙っていたアデルたちの話を聞いていたラヒドが口を開いた。


「あ、す、すいません!」


 アデルは慌ててラヒドに頭を下げる。


「いや、いいんだ。あいつがいれば話が早いんだが……」


「あいつ?」


 残念そうな様子のラヒドの言葉にアデルは首をかしげた。


「ああ。だがあいつは今、ちょっと離れたところに……」


 ラヒドが何か言いかけた時、応接間の扉がノックされる。


「あ、どうぞ」


 アデルが声をかけると扉が開き、一人の兵士が顔をのぞかせた。


「アデル様、面会を求める蛮族の者が参っているのですが……」


「え? 蛮族?」


 兵士の言葉にアデルはキョトンとする。


「はい。ディオと名乗っております」


「おお、丁度いい! すぐ呼んでくれ!」


 ラヒドが笑顔で言った。兵士は困惑した様子でアデルを見る。アデルは苦笑いしながら頷いた。


 そしてすぐに応接間に若い蛮族の青年が入ってきた。青年は入ってくるなり、鋭い視線でアデルたちを観察する。


(あれ? どっかで見たような……)


 アデルはその青年の顔に妙な既視感を覚えた。


名前:サラディオ・パトリシャール

所属:ハーヴィル王国

指揮 76

武力 101

智謀 60

内政 57

魔力 36


(パトリシャール……ハーヴィル王国……)


 アデルの頭の中でそれぞれの情報が結びついて行く。しかし答えにたどり着く直前、ラヒドが口を開いた。


「こいつはサラディオ・パトリシャール。ハーヴィル王国の王様だ」


「な、なんだと!?」


 ウルリッシュが驚愕の表情で立ち上がり、マジマジとサラディオの顔を見つめる。


「おい、そんなに簡単に名前を……」


「いいだろ。こいつらに言わないで誰に言うんだよ。蜃気楼を疑ってばかりいたら水にありつけないぞ」


 サラディオはラヒドを睨むが、ラヒドはどこ吹く風だった。


「サラディオ・パトリシャール……消えたハーヴィルの王子か」


 ラーゲンハルトはそう言いながら興味深げにサラディオを見た。


「お兄ちゃん……ってこと?」


 クロディーヌは茫然と呟く。


「確かに王の面影はある……それにその腰の剣は”祓剣ふっけん”デファンドラ。騎士団長のやつめが持っていた剣だ。いったいなぜ蛮族のもとへ……」


 ウルリッシュがサラディオの腰に目をやる。そこには見事な装飾の施された剣が差してあった。


(ミスリルの剣か……)


 アデルはその剣を見て、それがミスリル製であることが分かった。


「俺はスターティアが陥落した時、騎士団長に連れられて砂漠へと逃れたらしい。もっとも、俺にその時の記憶はないがな。そしてその騎士団長も俺が幼いうちに病に倒れた。それからはこのラヒドが俺の面倒を見てくれていたんだ」


 サラディオがラヒドに目をやる。ラヒドは笑顔を浮かべ、頷きながらその話を聞いていた。


「そして俺はラヒドのもとで働くことになった。つい先日までは冒険者ギルドの頼みで帝国のノルデンハーツという町で戦っていた。妙な化け物を撃退して膠着状態になっていたところ、こっちが騒がしくなったおかげで講和が結ばれたんだ。聞いてみればダルフェニア軍がロスルーを落として、しかもハーヴィル王国再建を掲げているというじゃないか。それで急いでこっちに来たんだ」


 サラディオはそう話すと、ウルリッシュとクロディーヌのほうに顔を向けた。


「お前たちが”白獅子”ウルリッシュ、そして……”賢姫けんき”クロディーヌか」


 サラディオは困惑したような表情を浮かべている。


「お兄ちゃん……」


 クロディーヌは涙を浮かべて立ち上がると、サラディオに走り寄り抱きついた。みんな死んだと思っていた血縁者が生きていたのだ。サラディオも恐る恐るといった手つきでクロディーヌの頭を撫でた。


「本当に……サラディオ殿下なのですか?」


 ウルリッシュは信じられないといった様子で呟く。


「間違いありません。本人ですよ」


 アデルはウルリッシュを安心させるためにそう告げた。


「……なぜわかるのです?」


「え?」


 ウルリッシュに尋ねられ、アデルは固まった。アデルが相手のステータスを見れることはウルリッシュやクロディーヌには伝えていなかったのだ。


「アデルさんはこう見えても鋭いんだよ。ボクは偽名を使ってたんだけど、ハーヴィルの王女ってことに気付いたし」


 クロディーヌがサラディオの顔を見上げて言う。サラディオが日に焼けているため分かりにくいが、二人の顔立ちは確かに似ていた。


「そうなのか……見た目と違って評判通り有能な王なのだな」


 サラディオは納得した様子で頷いた。


(「こう見えても」とか「見た目と違って」とか……)


 アデルはそんな二人を引きつった笑顔を浮かべて見つめていた。

お読みいただきありがとうございました。

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