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成り行き英雄建国記 ~辺境から成り上がる異種族国家~  作者: てぬてぬ丸
第十三章 跋扈の章

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集結(古の森)

誤字報告ありがとうございました。

 アデルの力を知り、エルフたちのアデルに対する態度も変わった。またアデルとデスドラゴンという強力な仲間を得た安心感から、不安と緊張で休むこともままならなかったエルフたちにも安心感が生まれ、ゆっくりと休息をとることが出来始めた。これによりエルフたちの間に漂っていた悲壮感が薄まり、グールと戦い続ける気力が戻り始めていた。


「この分ならどうにかなりそうですね」


「何事もなければいいけどね」


 アデルは小屋の外に置かれたテーブルで、ラーゲンハルトと竜戯王をしながら話していた。他のメンバーも周囲で暇そうにアデルらの対戦を眺めている。


 アデルたちが来てから三日ほどが経過していた。度々来る襲撃も簡単に撃退し、すでに十体ほどのグールを倒している。


「いっぺんに来られたら厄介ですけど……」


「でも逆に早く来てくれないと、いつまでここにいることになるかわからないよ」


 手持ちのカードとにらめっこをしながら二人は話す。


(さすがにアデル君は強いな)


 ラーゲンハルトは竜戯王の盤面を見ながら笑みを浮かべた。大抵の相手には楽勝のラーゲンハルトだが、アデルとは一進一退の攻防を繰り広げている。実際の戦争とは違い単純化、ルール化されたゲーム内ではアデルはさすがの強さを誇っていた。


「ん?」


 アデルは周囲を見回す。エルフの里がにわかに慌ただしくなっていた。兵士たちが何やら言葉を交わしながら走っている。だがグールが現れた時とは様子が違っていた。


「何かあったんですかね?」


 アデルが首をかしげる。そこに一人のエルフの兵士が走ってきた。


「アデル殿!」


 エルフの兵士がアデルに呼びかける。


「はい?」


「オークにゴブリン、オーガが大軍で押し寄せて来ています」


「あー、はいはい」


 エルフの兵士の言葉にアデルは宅配便でも来たようなテンションで立ち上がる。そして一同とともにエルフの里の北防壁へと向かった。


「ホッホー! アデル様!」


 防壁へと向かうアデルの頭上から声がかけられる。ジェントアウルのセバスチャンだ。


「ご用命通り、オークたちに話をしましたぞ」


 セバスチャンは空中で器用にお辞儀をした。


「ありがとうございます。よくすんなり来てもらえましたね」


「ええ。彼らの元へも化け物がやってきたそうで、ゴブリンなどは太刀打ちできず集落を放棄せねばならなかったとか。おかげで探すのに苦労しました」


「そうなんですか……」


 アデルは深刻な表情で頷く。


 そうしているうちにアデルたちは防壁へと到着した。防壁の上ではエルフたちが苦々し気な表情で外を見ている。


「アデル殿。お友達が参られたようですよ」


 防壁に上がったアデルをロレンファーゼが咎めるような目で見ながら皮肉を言った。


「うわぁ……」


 防壁の外を見てアデルは声を漏らす。防壁の外にはオーク、ゴブリン、オーガと大勢の異種族たちが集まっていた。


 彼らは防壁から少し距離を置き、手には武器を構え警戒した様子でエルフたちを見ている。百名ほどのオークに二百名ほどのゴブリン、それにオーガが十五名ほど見えた。その中には傷ついてるものもいた。その頭上では数名のジェントアウルが旋回している。


「オーガが他種族とともに行動するとは……」


 プニャタがその光景を見て呟いた。


「道中はケンカが絶えませんでした。我々が説得して事なきを得ましたが」


 セバスチャンが胸を張って言う。


「ちなみに言葉は通じるんですか?」


「ホッホーッ! 彼らが喋れるのはそれぞれの言語だけです。しかしながら我々ジェントアウルは、森の交渉人として様々な言語を習得しております。通訳もお任せあれ」


 セバスチャンはモフモフの体を揺らして笑った。


「オグ! オグオグオグ!」


「オガーッ!」


「ゴブゴブ!」


 防壁の外でオークやゴブリンがそれぞれの言葉で何やら叫んでいる。


「『来てやったぞ! 罠ではないだろうな!』『森の支配権をかけて素手で勝負しろ!』『本当に助けてくれるんだろうな!』などと言っております」


 セバスチャンがそれぞれの言葉を通訳してアデルに伝える。


「う、う~ん……どう話せば……」


 その内容にアデルは困惑する。


「キャーッ!」


 そのアデルの脇を、歓声を上げながら黒い影が通り過ぎた。デスドラゴンだ。デスドラゴンは防壁から飛び降りるとオークに向かって突進する。


「あっ……」


 言葉を失うアデルをよそに、デスドラゴンはオークへと抱きついた。抱きつかれたオークはその勢いで押し倒され、バタバタともがいている。他のオークたちがデスドラゴンを引き離そうとするが、幸せそうな顔のデスドラゴンはビクとも動かなかった。


「デスドラゴンさんはオークが好きだなぁ」


 アデルが呆れたように呟く。


「オークは原初の姿に近い。新しく生まれた種族が嫌いなデスドラゴンからすれば、一番愛すべき存在なんでしょ」


 ポチが無表情に呟いた。


「そ、そういう理由なんだ」


 アデルは少し納得した。だが力でデスドラゴンを引き剥がせないと悟ったオークたちが武器を構えたのを見て血相が変わる。


「ま、待って!」


 アデルは弾かれたように走り出す。そして防壁から飛び降り、デスドラゴンの元へと向かった。


「オガーッ!」


 その進路上に体格の良いオーガが立ち塞がる。さきほど叫び声をあげていたオーガだ。その身の丈は3メートルに近い。


「どいてください!」


 しかし急いでいたアデルはそのオーガを突き飛ばした。


「オガッ!?」


 オーガは驚きの声を上げて後ろに倒れる。ズシンという重い音が響き、デスドラゴンに斧を振り下ろそうとしていたオークたちも驚いて動きを止めた。


「デ、デスドラゴンさん! オークさんたちが困ってますから!」


「何よ、アンタは関係ないでしょ。オーク三昧プニプニパラダイス」


 デスドラゴンはオークに頬ずりしながら、引き剥がそうとするアデルに文句を言う。だが周囲の者は動きを止め、その様子を茫然と眺めていた。


お読みいただきありがとうございました。

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