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積み荷

 翌朝、アデルたちは集合場所である、人気の少ない町はずれの一角に来ていた。この仕事のことは絶対に内密にとラーゲンハルトから言われている。直前に冒険者を雇ったのも情報が洩れる確率を減らすためだ。そこには馬が繋がれた五台の馬車と、男女が二十人弱。半分は商隊の人間らしく荷づくりなどをしている。もう半分は護衛の人間なのか、鎧姿でなにやら口論をしていた。


「とにかく必要ありません。私たちだけで十分です」


「し、しかし我々も任務ですので……」


「あなた方は兵士ですよね? 大本営からの指令は私たちと、無名の冒険者で商隊を護衛しろという者です。正規兵のあなたたちがついてくるのは命令違反ですよ。お帰りください」


 金の縁取りがされた、美しい白い鎧をまとった美少女が、数人の男たちに命令をしているようだ。金髪碧眼、ほっそりとしたいかにもなお嬢様フェイスにはまだ幼さが多分に残っていた。まだ十四、五歳といったところだ。しかし男たちは娘ほどの年齢の彼女に頭が上がらないようで、しぶしぶだが言われた通り帰って行った。アデルが見たところ男たちの所属はカザラス帝国となっており、武力も八十以上の精鋭だ。彼らがラーゲンハルトの言っていた護衛の兵士であろう。


 美少女はアデルたちに気付くと近づいてきた。後ろには女性を一人、騎士風の男を二人、商人風の男を一人、そして冒険者風の男を一人連れている。


(うわー……すごい美少女だ……)


 アデルの頭に能力値が表示される。


名前:ヒルデガルド・カザラス

所属:カザラス帝国

指揮 90

武力 88

智謀 72

内政 84

魔力 37


(……強いぞ、この子……それに……カザラス?)


 アデルは緊張とヒルデガルドの美しさの両方でドキドキしながら軽く会釈した。アデルの後ろにはイルアーナと人間の姿のピーコとポチがいる。ラーゲンハルトから仕事を受けた際に四人だったので色々と心配だがこの姿で連れていくことにしたのだ。ポチはアデルにおんぶしていくよう頼んだが、アデルは丁重にお断りした。


「本当に子ども連れなのですね……」


 ヒルデガルドはアデルたちを見てため息をついた。


「こんな者たちは足手まといです。置いていきましょう」


 ヒルデガルドの後ろについている女性がアデルたちを睨みながら言った。この世界では珍しく水晶製の眼鏡をかけている。黒髪のショートカットで年は二十歳くらいだろう。黒い服の上に白い鎧を着ている様は、どことなくメイド服を連想させる。


名前:エマ・エスキベル

所属:カザラス帝国

指揮 72

武力 64

智謀 75

内政 85

魔力 28


「はは、まあ良いではありませんか。子供もいたほうが、よりカモフラージュになるでしょう」


 ヒルデガルドの後ろについていた騎士風のうちの一人が言う。すでに髪の毛は白髪一色になっており、鼻の下に蓄えた髭も白くなっている。すでに高齢に見えるが、背筋は伸びており、体格も他の男たちに引けをとっていない。立派な鎧をまとい、腰には柄から鞘まで全体に高価な装飾が施された剣を差している。


名前:ルトガー・ウィンフィールド

所属:カザラス帝国

指揮 69

武力 95

智謀 86

内政 77

魔力 12


「ラーゲ……お兄様の話によれば、腕の立つ者なのですよね? それならば自分たちの身くらいは守れるのではないですか?」


 もう一人の騎士風の男――若い二十歳ほどの青年が口を開く。赤毛の髪を中分にしており、愛想の良い笑顔を浮かべていた。カザラス帝国の下級騎士に支給される標準の鎧をまとっている。剣だけはやや豪華なものを腰に帯びていた。


名前:ヴィレム・エルツベルガー

所属:カザラス帝国

指揮 63

武力 77

智謀 48

内政 79

魔力 23


「ど、どうかあまりお騒ぎになられませぬよう……」


 やや上等な衣服に身を包んだ中年の男が、こわばった表情で言った。不自然に目を見開き、脂汗を浮かべている。息も荒く、極度の緊張状態にあるようだった。


名前:イーノス

所属:イーノス商会

指揮 61

武力 33

智謀 63

内政 70

魔力 22


「落ち着けよ、イーノス。大船に乗ったつもりでいろよ」


 最後の冒険者風の壮年の男が言った。バンダナを鉢巻のように巻き、左目には眼帯を付けている。黒い服に皮の鎧、腰の両側には手斧を下げていた。普通の手斧とは違い、手を保護するために剣の柄のような金属の突起が付いていた。この手斧なら剣を受け止めることもできる。実戦用にカスタマイズされた特注品であった。


名前:リューディガー

所属:イーノス商会

指揮 56

武力 74

智謀 56

内政 43

魔力 17


「あなた方、お名前は?」


 ヒルデガルドがアデルたちに問う。口調は丁寧だが、目には人選への不満が表れてしまっている。


「え、えっと、僕はアデ……”黒騎士”デルガード、この女性は”不可視”のイルアーナ、あとイルアーナの妹のポチとピーコです」


「”黒騎士”……?」


 アデルの自己紹介に、ヒルデガルドはアデルを上から下まで眺めた。そして小さくため息をつく。


「いいでしょう。よろしくお願いします、デルガード殿。私はヒルデガルド・カザラス、皇帝ロデリックの娘です」


 ヒルデガルドは名前を名乗ると小さくお辞儀をした。


「ひ、姫様! それはお隠しになられたほうがいいのでは!?」


 眼鏡のメイド、エマが慌ててヒルデガルドの話を遮ろうとする。


「かまいません、エマ。お雇いする以上、この方たちは部外者ではありません。例え兄上の一存で決められたことだとしても」


 最後の一言にはやや棘があった。


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